狙いは楽天の買収?
ここから株価の上昇を見込もうとするなら、もっと大きな投資をする必要がありますが、一つ可能性があるとするならば、楽天との関係です。
楽天はモバイル事業で赤字を垂れ流していて、目もあてられないような業績となっています。
そのせいで、楽天銀行や楽天証券など、自社で持っている株や子会社を切り売りしている状況です。
楽天は、自社の強みであった楽天経済圏のものを外に出しています。
KDDIやソフトバンク、ドコモは様々なものを自社の経済圏に入れようとしている中で、楽天はモバイル事業をやることによって本来お金を稼いでいたはずの金融事業などを外に出しているという、逆行した形となっています。
KDDIからすると楽天の経済圏は理想的で、喉から手が出るほど欲しいものです。
楽天モバイルにKDDIが回線を貸しているのは、ローミング収入を得られることもありますが、それ以上に、もし楽天がギブアップしてどこかが買収しないとやっていけないという状況になったとすると、KDDIが楽天を買収するという思惑があるからだと考えられます。
現時点で楽天モバイルのユーザーはKDDIの回線を使っている状態なので、仮にKDDIが楽天を買収したとすると、おそらく技術的な手続きはほとんどすることなく楽天モバイルの契約者を中に取り込むことができます。
KDDIが欲しいのは楽天モバイルの契約者ではなく、むしろその周辺に広がる楽天市場や楽天銀行、楽天証券というところで、それが手に入るとしたらKDDIとしては悲願となります。
もちろんそう簡単にいくものではないと思いますが、もしそれができた時にはKDDIが飛躍するポイントになるでしょう。
ただ、もちろんリスクもあります。
楽天の時価総額は約1.8兆円で、それほどの資金を投じて本当に上手く経営できるのかと疑問を持たれる可能性もあり、もし1.8兆円で買収ということになれば、瞬間的には株価は下がるかもしれません。
しかし、長期を見据えるならば打って出るべき戦略ではないかと思います。
ちなみに、楽天はモバイルを除くと営業利益が2,000億円くらいなので、楽天を買収することになれば少なくとも20%くらい利益が増えることになりますし、シナジーはかなり大きいと考えられます。
楽天モバイルをそのまま使えるようにするとなると、それができるのは既存の携帯電話会社しかないと思われ、KDDIがそこに最も近い主体になるかと思います。
資本政策
KDDIは、世の中の流れもあってモバイル事業がうまくいきすぎて、フリーキャッシュフロー(最終的に手元に残るお金)がどんどん貯まっていく状況です。
ぜいたくな悩みですが、この貯まったお金をどう使うのかというのが考えどころです。
楽天のような大きなところを買うのであれば面白いかと思いますが、そうでないなら配当にまわしたらどうかと個人的には思います。
携帯キャリア事業は簡単にキャッシュフローが少なくなる可能性は低く、こういう会社は自己資本比率などはあまり気にせずにどんどん配当して、買収などのためにお金が必要になれば銀行から借りればよいと思います。
KDDIのように安定した企業は、自己資本を減らしてでも株主還元したり、借り入れしてそれを使った方が株の価値を上げることになるということもあります。
そういった戦略ができれば株価水準ももっと上がるのではないかと思います。
KDDIは少なくとも配当に消極的ということはなく、配当性向40%を掲げて、業績と同じように配当も右肩上がりに伸びています。
今回減益となりましたが、増配という話になっていますし、その次も増配が見込まれます。
現時点においても利回りが3.3%あり、かなりおいしいかと思います。