止まった連続増収・増益記録……海外進出に本腰を入れるきっかけに?
今回、連続増収・増益が途絶えたということは、1つの契機になるのではないかと思っています。
元々、連続増収・増益を目指していたわけではないと言っていましたが、記録が続いている以上はそう簡単に途切れさせるわけにはいかず、コストをかけてチャレンジすることはなかなかできなかったと思います。
しかし、記録が途切れてしまったのなら、もし2025年3月期にまた減益になったとしてもインパクトは小さくなります。
つまり、ここでは損を出してでも将来の成長のために思い切って海外に進出する良いタイミングになったと言えると思います。
だからこそこれほど急に海外の店舗を増やしたという見方ができます。
投資家としては、海外進出がうまくいくかは分からず、心配な面もあります。
海外進出していく中でなかなか利益が出ない局面が続いてもおかしくないかと思われます。
<時間はかかるか>
ユニクロも最初から海外進出がうまくいったわけではなく、失敗を繰り返しながら試行錯誤を重ねて、ようやく利益が出始めたという状況です。
ユニクロの欧米への進出は2004年頃でしたが利益が出ない期間が続いて、20年経った今、ようやく勝ち筋が見えてきて利益が出てきたというところです。
ニトリも同様で、すぐに利益が出せるかというとそう簡単ではないと思われます。
一方で、ユニクロがしぶとくチャレンジを繰り返した結果が今のファーストリテイリングの成長の原動力となっていることも確かです。
ファーストリテイリングの株価はアップダウンを繰り返しながら結果的には右肩上がりとなっています。
ニトリも当面はダウンの局面となることも十分に考えられます。
ただ、長期投資で大事なことはそこから先を見据えることで、リスクを取って、それがうまくいった時には報われて株価も伸びていくことになります。
これが長期投資の本質です。
ニトリは、これまでニトリの事業会社の社長を20年務めていた武田氏を解任し海外に集中させたり、社長の後任にファーストリテイリング出身の永井氏を見据えているなど、海外進出への本気度と先を見据えた経営を行っていることがうかがえます。
<ニトリのチャレンジを見守れるなら>
足元の話をすると、今の円安が落ち着いてもう一度円高の流れになるとしたら、一時的には業績も回復する可能性もあります。
一方でやはり海外進出のためのコストで利益が減ってしまう可能性も考えておく必要があると思います。
PERは円安の今で22倍ということで、円高になるとしたらもっと利益が出て実質的なPERは低くなり、少なくとも割高ではないという数字にはなるでしょう。
ただし、為替がどうなるかは分かりませんし、海外への進出コストがどうなるかも分からないので、不安定要素もあります。
ニトリが、リスクを取って成長を目指している企業であることは確かなので、長い目線でじっくりと見ていきたいという方は、良いと思えるタイミングで仕込むといった状況にあるかと思います。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
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』(2024年5月28日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。