こっそりと負担は増やされていく
特別減税は本来国民が払った税金を、物価高対応のために少し返してもらうだけですが、あたかも政府の金を国民に「おごってあげる」かのように恩着せがましく宣伝する一方で、国民の知らないところで、こっそりと、それもしっかりと負担増が始まっています。6月・7月にはこれがさらに増えます。
まず5月の東京都区部のCPI統計によると、5月の電気代が突然前年比13.1%上昇しています。この電気代、再生エネルギー特別賦課金が5月支払い分から乗ってきたもので、この電気代の負担だけで5月の物価を0.4%押し上げ、それだけ国民の負担が高まっています。こちらは十分な説明がないまま負担増となっています。
そして6月からはさらに負担が増えます。まず電気ガスの政府補助が6月は半分になり、これで物価全体を0.23%押し上げます。さらに6月から森林環境税として1人当たり年1000円が住民税に上乗せされます。これもほとんどの国民は知りません。
それだけではありません。6月1日より診療報酬が引き上げられ、これに伴って患者の負担が色々増えます。まず初診料は30円増えて2,910円に、再診料は20円増えて750円に。また入院基本料は1日当たり50円から1,040円増えます。
こういう国民の負担増については、ほとんどの国民が知らないうちに決められ、知らないうちに負担が増えます。
CPI上昇率再拡大
この他、帝国データバンクによると、6月は614品目の食料品が値上げを予定しています。このうちの約3割が円安によるコスト増分の価格転嫁値上げと言います。
減税によって物価上昇の痛みを緩和するといいますが、政府自らエネルギー価格上昇抑制策を停止し、医療費の上昇、円安放置のコスト高を演出しています。
4月の名目賃金は大幅賃上げの一部実施で増加率が2.1%に高まりましたが、物価が2.9%上昇して、実質賃金はついに25か月連続下落となりました。4月の物価は最近の中では最も低い上昇となりましたが、それでも実質賃金は前年を0.7%下回っています。
そして5月からは再エネ賦課金による電気代の上昇、6月・7月は政府の電気ガス代の激変緩和措置の終了で0.45%物価が高まります。
そして円安によるコスト高から、企業はまた価格転嫁を進め、さらに賃上げによる人件費コスト増を政府の後押しによって価格転嫁するので、間もなくサービス価格中心に賃金インフレも進みます。
1人4万円、総額4兆円余りの減税は年間可処分所得の0.8%程度になりますが、これも物価上昇によってあっという間に消えてしまいます。
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