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これで良いのか日本の医療体制。診療報酬・薬価の改定が招く薬不足と医療崩壊=斎藤満

まずは必要な薬の確保

こうしたリスクに対応するため、原薬も国産化が進められていますが、なんといっても国内で作るとコストが何倍にもなります。合理化を進めてコストダウンを図るにも時間がかかります。

その間、国民が必要な薬を手に入れられないとなれば、医療体制が崩壊します。

ここにも国の政策が大きく関与しています。国の医療費を抑えるために薬価を低く抑えすぎて、メーカーが生産できなくなり、しかも円安を放置したために輸入原薬コストも上がり、これも採算悪化で薬の生産を困難にしています。

抑えすぎた薬価の見直しと、円安是正、原薬の安定供給を図る必要があります。当面はメーカーが増産できる適切な価格でいったん政府が買い取ることも検討すべきです。

有効な新薬の未承認対策

これとは別に、ガンやコロナなどの感染症に有効とされる薬が海外では承認され、利用されているのに、日本では承認されないために使えないケースが少なくありません。

海外の薬品が保険適用されなかったり、国内で開発した薬がなかなか承認されなかったりという事案がコロナ禍でも見せつけられました。海外の有力医薬品メーカーの圧力かもしれませんが、国民の命が優先されてしかるべきです。

セルフメディケーション推進と税の矛盾

国の医療費負担を抑えるのに、予防医学の重要性が指摘され、セルフメディケーションの推奨もなされています。

コロナ禍を経験したこともありますが、国民もサプリメントの活用など、健康管理にお金をかけるようになっています。国民が自らの努力で健康を維持し、病気の予防ができれば、国の医療費も軽減され、医療機関も楽になります。

ところが、その一方で政府は口で言うことと裏腹に、税制面ではこれに逆行する動きをしています。

例えば、医療費控除です。少し前から医療費控除は医療機関利用分と、セルフメディケーションを分けるようになりました。つまり、医療機関利用の医療費を医療控除で申告する場合は、セルフメディケーションでかかった費用は控除してもらえません。

逆にセルフメディケーションの費用を医療費控除に使うと、医療機関で使った医療費は控除されなくなります。医療費は諸控除前の所得金額の5%と10万円の少ない方を差し引いた分が医療費控除となります。

医療機関利用分とセルフメディケーションとを分けたことにより、結果として医療費控除が小さくなり、国は税収の減少を抑制できます。

Next: 助かる命が助からない状況も…。国ができることはまたある

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