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高配当&割安株「ホンダ」は買い?全力EVシフトも失速…二輪車頼みの業績を長期投資家はどう判断すべきか=佐々木悠

EV失速が大きな問題?

しかし、現状を見るとEVに対する見方が変わってきています。アメリカのテスラや中国のBYDなどのEVメーカーの販売が失速し、これまで破竹の勢いで販売台数を伸ばしてきたテスラは「24年の販売については前年を顕著に下回る可能性がある」と述べています。

EV失速の背景には以下のような要因があります。

  • 世界最大市場である中国において、既存メーカーと新興メーカーが入り乱れ、激しい値下げ合戦が展開されていることから競争環境が厳しくなったこと
  • 欧米では、最新技術や環境問題への関心が高い高所得者層のEV購入が一服したこと
  • EVは冬になるとバッテリーの性能が下がり走行距離が短くなる、など使い勝手の悪さが露呈したこと
  • そもそもEVを使うための電気を発電する際に、CO2が排出されることから環境に優しくないこと(代わりにハイブリッド車やプラグインハイブリッド車が好調です)

足元の状況は、EVに対する見直しの潮流が高まっていますが、ホンダ執行役で最高財務責任者(CFO)の藤村英司氏は、「戦略を変えずに推進していく」と述べています。なぜならば「EV黎明期である現在、EVの普及スピードに波があることは織り込み済み。直近2,3年の動向にとらわれず、20年代後半以降に訪れるEV普及期に向けた確実な仕込みを行う」としているためです。
(参考:2024ビジネスアップデート

この方向性、戦略が正解かどうかは現時点ではわかりません。長期的な目線でホンダを見る必要があるでしょう。

投資するべきか?

最後に配当金の推移も見てみましょう。

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出典:マネックス証券

連結配当性向を30%とする方針を掲げ、これまでは安定的に配当を行ってきました。今期の予想配当性向も約32%です。とはいえ、景気変動のリスクや上記のEV失速のリスクなどを考えると、今後減配がないとは言い切れません。この辺りは注意が必要です。なお、24年5月10日に発行済み株式数(自己株式を除く)の3.7%にあたる1億8000万株、3,000億円を上限とする自社株買いを発表しました。(翌日の株価は約7%上昇)

これは資本コストの改善や株価に対する投資家の期待に応えるための経営判断と言えます。以前までは配当が主な還元策でしたが、近年は自己株取得額も増えています。24年7月現在のPBRは0.65倍ですから、ここを改善するための動きと言えるでしょう。

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出典:マネックス証券

24年7月現在のPERは8.2倍です。根本的に、自動車やバイク市場の世界的な成長性が必ずしも高くないことは影響していると思いますが、今後の動向を考える上では、目先のEV市場の失速とホンダの長期的なEV戦略が、どう業績に反映されるかがポイントになりそうです。EV戦略の時間軸を考えると、5年〜10年単位の長期的な目線が必要だと考えます。これらの情報をもとに投資判断をされてください。


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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年7月10日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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