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米国経済「景気後退」は本当に回避されたのか?日本では報道されない、実際に起こっていること=高島康司

消費の減退

「サーム・ルール・リセッション・インジケーター」もそうだが、少し調べれる米経済の悪化を示すデータや事実が多いことに気づく。その一つは、アメリカの消費者が急速に購買力を失いつつある事実だ。

クレジットカードの負債が膨らみ、パンデミックで蓄積された貯蓄を使い果たしたアメリカの消費者は、食料や燃料など、必要不可欠な購入以外には財布の紐を固くし始めている。住宅、自動車、大型家電製品などの高額商品の購入に前向きな意向を示しているアメリカ人の割合は、5月以来大幅に減少している。高額商品であるほど、減少幅が大きい。例えば、最近実施されたある市場調査では、住宅購入の意向を示した回答者の割合は、ロックダウン解除後の時代で最低水準にまで落ち込んでいる。

これは、インフレと、それを抑制するための金利上昇が原因のひとつである。食料品、エネルギー、住居費が3年前から20%以上も上昇している一方で、実質賃金は伸び悩んでいるため、アメリカ人は難しい選択を迫られている。住宅ローンが4%ほど上昇し、住宅在庫はかつてないほど高騰しているため、多くの人々にとって新築住宅の購入はもはや問題外だ。

しかし、苦境はさらに広がっている。消費者が購買力の低下を実感しているため、ほとんどの消費支出のカテゴリーが横ばいか減少傾向にある。この傾向は、アメリカの小売チェーンの業績に顕著に表れている。

小売大手の縮小と倒産の拡大

大型小売業者にとっては、この傾向はしばらく前から明らかであった。ホームセンターの「ホーム・デポ」や「ロウズ」などのホームセンター大手の場合、少なくとも1年以上営業している店舗の売上を前期と比較する全社ベースの既存店売上高は、6四半期連続で減少している。

家電業界でも同様の傾向が見られ、「ベスト・バイ」では10四半期連続で2桁のマイナス成長を記録している。中流消費者層に長年愛されてきた老舗の「ベスト・バイ」だが、1年間にわたって既存店売上高はマイナスとなっている。

ディスカウントストアの業績は、ややマシな程度だ。低所得者層の家庭を支える柱となっている「ドル・ジェネラル」は、売上高が横ばいとなっており、苦戦を強いられている。一方、「ウォルマート」の既存店売上高は、直近の四半期では4%未満にまで落ち込んでいる。「コストコ」も同様の傾向を示している。消費者を惹きつけるために大幅な値引きを余儀なくされているため、利益率が圧縮されている。

小売業の第2層、特に家庭用品を扱う企業にとっては、そのプレッシャーはあまりにも大きい。家具チェーンの「コンズ」は、134年の歴史を経て、70以上の店舗を清算し、破産を申請した。ディスカウントの家庭用品小売業者である「ビッグ・ロッツ」は、150店舗を閉鎖し、破産を回避するための救済資金を調達しようとしている。

「コンズ」と「ビッグ・ロッツ」だけではない。この1年で、企業倒産の申請件数は40.3%増加し、現在ではロックダウンがピークに達した2020年第2四半期以来の件数に達している。アメリカの家庭もこれに追随しており、この1年で自己破産の申請件数は16.2%増加し、2024年第2四半期だけでも132,710件の新規申請があった。

世界的な象徴的なブランドも、消費者の景気後退の影響を受けている。「スターバックス」は、既存店売上高、注文数、収益、営業利益の減少を発表したばかりだ。「スターバックス」の株価は過去12か月で25%下落しており、株主は変化を強く求めている。新たに就任したCEOは、事業の大幅な再編を命じられ、「複雑としか言いようのない消費者環境において、我々がコントロールできることに焦点を当てている」と述べた。複雑な状況だ。

この環境下では、「マクドナルド」のような定番の商品を提供する企業でさえも安全ではない。「マクドナルド」が、第2四半期の収益を発表した。同社は、既存店売上高が1%減少し、収益も減少した。これは、ロックダウン以来初の収益減少となった。「マクドナルド」のCEOは、消費者が「市場から離れ、自宅で食事をし、他の節約方法を見つけ、外出を控えている」とコメントしている。また、新たに導入した5ドルのバリューミールについては、「低所得層消費者に見られる圧力を相殺するには不十分だ」とも指摘した。

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