リスクはある?
栫井:良いことばかりに見えますが、リスクはあるのでしょうか?
元村:やはりリスクもあります。
長期潮流もある中で、需給のリスクもあると思います。主にGAFAMなどがデータセンターに投資していますが、ここが設備投資を鈍化させたりすると、AI半導体やGPUとそれに付随する特殊メモリなどの需要が落ちてしまう可能性があります。そういう傾向が見えてくると、半導体メーカーやOSATも設備投資を足踏みすることも考えられます。特定の市場に依存している感じはあります。
栫井:短・中期的には急に需要が無くなるリスクを抱えているということですね。
元村:本当にこのまま右肩上がりの需要が続くのかという懸念はやはりありますね。
もう一つはチャイナリスクですね。もちろん中国の現地企業以外の企業もありますが、中国が地政学リスクを元に半導体のサプライチェーンを中国で完結させていくという潮流があることは間違いないので、習近平政権の出方が変わってくると一気にストップさせてしまうという可能性もあります。
中国は家電や産業ロボットも世界中に輸出していて、そこにはそこまで先端品ではない半導体が使われていて、そのためのダイサやグラインダの需要も高まっているという側面もあります。それが中国の売上の中のどのくらいを占めているかは分からないですね。
栫井:最先端品に比べると利益率は低いでしょうけど、売上は出ている可能性はあって、利益がどのくらいかは分からないということですね。
元村:そうですね。
栫井:あと考えられるリスクとして為替があるかと思います。円高に振れると一時的に利益が減ってしまうということはあるかと思います。売上が伸びてきたのも円安によって嵩増しされている部分もあるかと。
元村:そうですね。ディスコにもそういったリスクが内在しているということです。
今は割安なのか?
栫井:ではこれらを踏まえて株価を見てみましょう。

ディスコ<6146>週足(SBI証券提供)
2023年から株価が大きく上がってきて、1万円くらいのところから一時は7万円近くまでいった中で今は36,000円となっていますが、業績が悪化してきたということではないですよね。
元村:どちらかというと盛り込みすぎていた期待値が通常に戻ってきたと見るのが自然だと思います。
栫井:半導体銘柄はディスコに限らず同じような下落の仕方をしていますよね。さすがに今年前半の半導体ブームで一時的に上がりすぎていた部分はあったのかなと。とはいえ事業として悪くなってきたわけではなくて、結局はAI半導体ブームが一旦どこまで続くのかというところが目先の観点で、長期的にはおそらく需要はあるだろうというところですね。
元村:そうですね。
栫井:業績予想を出していないのでPERも出されていませんが、実質的にPERはどのくらいになるでしょうか。
元村:昨年度の着地をベースに算出するとおよそ40倍くらいだと思います。
栫井:ディスコの強さや成長性を考えると必ずしも高いとは言えない数字で、成長する企業に付けられる適正なPERといったところですね。
元村:以前の過熱ぶりからすると割安感がありますね。
栫井:高い時には80倍くらいあったということですよね。
元村:そうなりますね。
半導体関連では日本企業にも優秀で高いシェアを持った企業が多くあって、それぞれが今後も成長していくんだろうなという印象があります。株価の変動が激しいところもあるので意識する必要はありますが、成長する企業にはどこかのタイミングで投資したいと考えます。
株価の動きではなく、事業の中身で判断し、できれば長期で持ってその企業の成長を見守ってほしいと思います。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年9月27日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。