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日本市場の「歪み」に投資妙味?インフレと日銀の対応遅れが個人投資家にとってチャンスといえる理由=斎藤満

金融当局のバイブルとされる「テーラー・ルール」では、潜在成長率を達成する自然利子率(実質の中立金利)をベースに、物価目標と現実のインフレの差、GDPギャップでこれを調整します。米国では潜在成長率1.8%に対して自然利子率も1.8%と見られています。日本では潜在成長率0.5%(内閣府)に対して自然利子率はゼロか小幅マイナスと見られています。

自然利子率をゼロとすると、22年4-6月にはCPIが2.5%と、目標の2%を0.5%上回り、GDPギャップはマイナス0.7%でした。物価ギャップとGDPギャップにかかるパラメーターを0.5ずつにとると、望ましい実質政策金利はゼロプラス0.25%マイナス0.35%で、マイナス0.1%となります。これにインフレ率2.5%を加えると、望ましい名目の政策金利は2.4%となります。

この時点で物価の番人たる日銀は、物価対応で明らかに後手に回りました。

安倍政権のリフレ策の前に自由が効かなかった黒田総裁だけの責任とは言えませんが、アベノミクスから解放された植田日銀総裁が就任する直前23年1-3月のCPIは3.6%、GDPギャップは0.3%でしたから、植田日銀の望ましい政策金利は3.6%プラス0.8%プラス0.15%で、4.5%程度と計算されます。

実際に植田総裁が動いたのは今年3月で、ようやくマイナス金利を解除し、7月に0.25%に引き上げましたが、望ましい金利水準からは大きく乖離しています。植田総裁は名目自然利子率の水準を1から2.5%の間と言い、一部の学者、エコノミストは1%(実質マイナス1%)程度と言います。

しかし、物価が2%程度で安定し、GDPギャップがない世界で、潜在成長率0.5%に対応する中立金利が1%というのは低すぎます。

日銀は最低1%と言いますが、実際には1.5から2%を見ているのではないかと思います。

現在0.25%の政策金利はあと1%以上引き上げられる可能性があります。植田総裁は、「今見通し期間(24年度から26年度)の後半には中立金利に到達している」との見方を示しています。見通し期間の後半とは、25年度下期以降となります。

来年の今頃には政策金利は1%を超えている可能性を示唆しています。

最大のゆがみ相場は国債

市場は日銀ほど政策金利が上がることはないとみていますが、その結果、最もゆがみの大きい相場が国債市場です。

日本のインフレ率は欧米と比べてあまり差がないのですが、長期金利に関しては異常に大きなギャップがあります。

例えば、米国のCPIも日本のCPIも2%台の上昇率ですが、米国の10年国債利回りが4.2%台に対して、日本は1%強です。欧州のインフレ率も日本とあまり変わりませんが、フランスの10年国債は2.9%、ドイツで2.1%台です。欧米の長期金利は実質でプラスですが、日本は1%以上のマイナスとなっています。

Next: 日本市場の歪みは個人投資家にとって勝機か。金融株には朗報も

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