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イーロン・マスクが進めるIRSとFRBの解体で何が起きるのか?トランプ政権の“1913年以前”回帰計画とは=高島康司

「FRB」の全面的な改革または廃止

では、イーロン・マスク率いる「DOGE」は「FRB」をどのように改革しようとしているのだろうか?

実は「DOGE」は「FRB」の閉鎖を示唆しながらも、改革の具合案は出していない。しかし、トランプの実施している改革の基本骨子となっている「ヘリテージ財団」の「プロジェクト2025」には、改革の方向性が明確に示されている。「DOGE」はこれに沿って改革する可能性は大きい。

以前の記事でも紹介したが、再度見て見よう。

「プロジェクト2025」は、「連邦準備制度(FRB)」と金融政策の将来に関する政策処方箋を提示している。最低限でも連邦準備制度の権限は大幅に縮小され、最大限の改革だと、「FRB」は完全に廃止される。この結果、大統領と議会の金融政策に対する権限が増大し、「FRB」の権限は大幅に縮小または廃止されることになる。

「プロジェクト2025」の金融政策提案には以下が含まれる。

  1. 米国を金本位制(商品担保通貨)に戻す。
  2. 「FRB」の最大雇用と物価安定という二重の使命を廃止し、物価安定のみに重点を置く。
  3. 連邦債務や住宅ローン担保証券を含む金融資産の連邦準備制度による購入を削減し、制限する。
  4. 破綻寸前の銀行に融資を提供する連邦準備制度の最後の貸し手としての機能を制限する。
  5. 連邦準備制度の廃止や「フリーバンキング」の実施など、連邦準備制度に代わる選択肢を模索する。

「プロジェクト2025」は、金融政策と規制政策に関する「FRB」の裁量権の拡大が、運用上の非効率性と政治的圧力に基づく政策決定の可能性を生み出していると主張している。

金本位制の復帰とインフレ対策

これらのどの改革も凄まじいが、中でも過激なのが金本位制への復帰である。

ちなみにアメリカは、1879年から1933年まで金本位制だった。米国を含むほとんどの主要国は、自国の通貨を金で裏付けていた。金本位制とは、国の通貨の供給量とその価値が、国が保有する一定量の金に基づいている通貨制度である。言い換えれば、国の通貨の供給量は国が保有する金の量によって決まり、金に対する通貨の価値は固定されている制度だ。中央銀行が自らの裁量で自由に紙幣を印刷することはできない。そのため理論上は、中央銀行が通貨を過剰に発行して通貨価値が下落するインフレは起こらないのだ。

要するに「プロジェクト2025」は、金本位制の導入で通貨の増刷を制限して、インフレリスクを軽減する。そして、中央銀行が財政難に陥った金融機関を救済する能力を制限することで、景気の循環を自由な市場の回復機能にゆだねる。そうして、景気の正常な循環を取り戻すべきだと主張する。

たしかにこれで、現在の米経済を悩ませているインフレは抑制できるかもしれない。だが、反論も多いことも事実だ。歴史は、金本位制がインフレや景気後退への対処にまったく効果がなかったことを示している。金本位制は、大恐慌を防ぐことも、国がそこから立ち直るのを助けることもなかった。

Next: 嵐の前の静けさか?ここから激動の世界が待っているかも…

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