<トランプ関税のインパクトとトヨタの方針>
自動車にかかる関税率は、乗用車の場合、現状の2.5%に追加で25%が課されると、合計で27.5%になります。トヨタの見通しでは、この27.5%の関税が5月までかかる前提で影響を試算しています。
トランプ氏の姿勢を見ていると、この関税が5月で終わるとは考えにくい印象です。トヨタ自身も先が見通せないため、とりあえず5月までの暫定で業績見通しを作成しているようです。
注目すべきは、トヨタが関税による値上げはしない、サプライヤーへの費用負担もあまり行わないという方針を出している点です。もしこの方針を貫くと、関税で上がった分のコスト(約30%弱)をトヨタ自身が飲み込むことになります。
トヨタの自動車セグメントの粗利率は約20%程度です。関税が30%弱かかる状況で値上げをしなければ、そのままでは利益を出すのが厳しくなります。
<関税継続の影響と販売への懸念>
関税が続いた場合、いくらトヨタといえども、無策で損失を飲み込み続けることはないでしょう。明確な値上げはせずとも、インセンティブを下げたり、モデルチェンジで実質的に値上げするといった形は十分に考えられます。これはトヨタだけでなく、海外で生産しているアメリカの自動車会社も同様のコストを負うことになります。
その結果、どのメーカーから買っても車の価格が上がることになり、消費者としては車が買いにくくなる可能性があります。つまり、関税によるコスト増だけでなく、車そのものが買われなくなる可能性があるのです。
現状の業績予想には、関税による販売台数への影響は見込まれていません。決算資料によると、北米の販売台数はむしろ若干増加する見通しとなっています。しかし、実際に高関税がかかり続ければ、他の会社よりよほど安くない限り、この見通し通りに増加するかは難しいところかもしれません。
また、自動車に限らず関税全体が続けば、アメリカ経済自体が悪化する可能性があり、景気悪化時は車の販売にダイレクトに響きます。目先の話だけをすると、明るい材料は少ないように感じられます。
こうした状況は持続可能な政策とは思えず、トヨタが5月までの影響しか織り込んでいないのは、そのあたりを見越している側面もあるのかもしれません。
米国での生産・販売状況
トヨタの北米(メキシコ、カナダを含む)での販売台数は、全体の約3割、生産台数は約2割を占めています。
米国のみに絞ると、販売台数は約233万台に対し、米国内での生産台数は約127万台とされています。これは、米国で販売されている台数のうち約6割弱を米国内で生産している計算になります。他の米国の自動車メーカー(フォードなど)も似たような生産比率だと言われており、関税の影響は他社にも同様に及びそうです。
<例外的な存在?テスラについて>
自動車業界全体にネガティブな影響がありそうですが、例外的な会社としてテスラが挙げられます。
テスラは米国内での生産比率が高いため、関税の影響をあまり受けないと言われています。部品の一部は中国からの輸入がありますが、他の米国の自動車メーカーと比べると関税影響は低いと見られています。
ただし、テスラは電気自動車、トヨタはガソリン車やハイブリッド車が主体であり、世界観が異なります。広大な米国で、現状EVだけで全てを賄うのは難しい状況があります。
Next: 長期投資家は買いか?トヨタの長期的な強みとリスク