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トランプ大統領が繰り出す「ドル安カード」のタイミングを捉えよ=田口美一

レーガノミクスとの類似点を把握する

そして、その流れを見ていくうえで試金石となるのが、米国10年国債の金利水準だと思います。米国10年国債の金利は今2.5%まで上がってきています。2000年頃からの20年間を見ると、日本とよく似ていてほぼ下がり続けています。もちろんアップダウンはありますが、ひたすら下がり続けていたものが、今、トランプ大統領が出てきてどんと上昇したのです。ボトムラインにはもちろん景気が良いことがあるわけですが、金利が上昇し、今2.5%まで来ているのです。

ただし、この10年間ぐらいを拡大してみると、金利は3%まではいっていないのです。リーマンショックで金利が大きく下がり、そこからの戻りも3%手前までで、そこからまた下がったりしているのです。長年日本の10年債も、2000年頃は2%が壁となっていました。大きく下がった後2%までは戻るのですが、それでも2%より上にはなかなかいかなかったのです。

私もこれまでに何度も、2%を超えていくなら日本もステージが変わりますとお伝えしてきました。そして今回アメリカは、その水準が3%だと思うのです。ですから、もし3%を超えてさらに、一瞬だけではなく3.5%に向かうような展開になれば、先ほど言っていたトランプ大統領の怖いシナリオとなり、最後はドル安政策に結びつくようなことになるでしょう。

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これは実際に、レーガン元大統領がやったことです。彼は1980年の頃からの1期目は、強いドルを主張していました。ドル高を容認し、むしろ減税等で景気を刺激し、レーガノミクスを行っていたわけです。しかし効果が出なかったので、1985年に、ニューヨークのプラザホテルに先進国を集め、集まった各国に対し、明日からドル安にしてくださいと要請したのです。これがプラザ合意です。それにより1ドル235円台だったものが、最初は200円を割り込み、そして180円、150円へと、未曽有のドル安となりました。そこからドル安が本格化したのです。

今回皆さんが心配しているのは、「米国政権とっておきの手であるドル安政策が出て来るのか否か」という問題ですが、その一つのシグナルは10年物のアメリカ国債が3%を超えていくかどうかということだと思います。これを超えていくような事態になっていけば、要警戒だと言えると思います。

今は2.5%で止まっていますが、さらに超えてしまいそうな可能性も出て来ています。それが本格的に2.5%を上回っても、引き続き雇用が20万人を超え、車も売れ、住宅価格も続伸等々、そうした状態が続く中で、トランプ大統領が調子に乗り、いよいよ本格的に内需を刺激するために国債を増発、インフラ投資をするというような展開が考えられるわけです。

こうしたことは、FRBがブレーキをかけるシグナルとなり、どちらかと言うとハト派と言われているイエレン議長も、若干タカ派にならざるを得ないわけです。やはり物価が不安になり、少しブレーキをかけるようなことになってくるかもしれません。それがおそらく日本でいうゴールデンウィークのあたり、4月から6月にかけてが最初の山場だと思います。

今後の利上げについてですが、アメリカは年末のクリスマス商戦が12月にスタートしますが、実際には基本的に11月から仕入れを始めるので、今年最後に強くアクセルを踏むとすれば、11月です。そして、その前にあるとすれば、夏休み前、サマーバケーションの前でしょう。どちらに向かうのか見極める時期なので、その辺りで景気の実態が悪くなく、不動産や車のデータも悪くないということになると、金利はもう一段上がってくる可能性があると思います。

ただし、意外と車の売れ行きが落ち着き、不動産も長期的には良いものの、金利の上昇で一旦ペースダウンする可能性もあります。その場合、FRBもそれほどインフレを警戒しなくても済むので、場合によると、5月、6月あたりにはマーケットの見方ももう一回くらいの利上げで終わるか、あるいは今年はもう見送るかもしれないとなり、金利は落ち着いてくるでしょう。その辺をこれから見極めていく段階に差し掛かってきたと思います。ただ、一足飛びにドル安ではなく、順を追っていくのだろうと思っているので、そのステップを見ていくことが重要です。

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グローバルマネー・ジャーナル』(2017年3月22日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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