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ナレルグループ、中計初年度は先行投資で建設DXの実装を加速 FY2030の売上500億円・営業利益50億円を目指す

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ナレルグループ(9163)26/10期1Q:原価・販管費の管理が奏功し、計画比で大幅増益となった。採用投資の強化で前期比では-19.6%となったが、DX領域の提携加速によって中長期の成長基盤を拡大した。【書き起こし】

目次

柴田直樹氏(以下、柴田):株式会社ナレルグループ代表取締役の柴田です。本日はお忙しい中、ナレルグループの2026年10月期第1四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

本日のご説明は、スライドの構成に基づいて進めます。ポイントは大きく3点です。1つ目は、需給調整の影響で売上は計画比でやや弱めの進捗である一方、利益は計画を上回る進捗となっています。

2つ目は、採用投資を継続して、中長期の成長基盤を拡大していることです。3つ目は、建設DXの実装モデルが本格始動したことです。

FY2026 1Qの位置づけ

まず、2026年10月期第1四半期の位置づけについてです。当期は、中期経営計画「Change and Growth 2030」の実行初年度にあたります。この第1四半期は、中期経営計画で掲げた成長戦略を実行フェーズに移行した最初の四半期と位置づけています。

当社はこれまで、建設人材派遣を中心としたビジネスモデルで成長を遂げてきました。今後は、建設人材派遣を基盤としながらも、建設DX、BPO、職人紹介といった領域を組み合わせ、より付加価値の高いビジネスモデルへ進化させていく方針です。

短期的には投資が先行する局面となりますが、これは将来の収益拡大を見据えた基盤構築フェーズと位置づけています。

成長戦略実行フェーズへの体制移行

経営体制についてです。創業者である小林が取締役会長として中長期戦略および対外関係を担い、私、柴田が実行責任者として経営をリードします。この体制により、中長期戦略と実行スピードの両立を図りつつ、中期経営計画を推進していきます。

市場環境と成長機会

市場環境についてです。建設市場は建設投資の回復を背景に、底堅い需要環境が続いています。

建設投資額は、2026年度には80兆円規模まで回復すると見込まれています。一方で、建設業界では深刻な人手不足やDXツールの導入遅れといった構造的な課題を抱えています。建設技能工は最大で87万人不足していると言われています。

また、DXについても全社的に推進している企業は1割程度にとどまっています。つまり、人材不足とDXツールの導入、運用の遅れが同時に存在するマーケットとなっています。当社はこの課題に対し、「人材×DX」というかたちでソリューションを提供できるポジションにあります。

業界トップクラスの成長性・収益性

業界内での当社のポジションについてです。技術者派遣企業と比較すると、当社は売上成長率と営業利益率の両面で業界トップクラスの水準を維持しています。直近3年間の売上成長率は15.9パーセント、営業利益率は13.3パーセントです。

これらは、当社の採用力と営業力が成長の基盤となっていることによるものです。

成長戦略を構成する4つの重点領域

先ほどご説明した市場環境と成長機会、業界内でのポジションを踏まえ、中期経営計画では4つの重点領域を設定しています。

1つ目は、コア事業である建設人材派遣事業の競争力強化です。2つ目は建設DXの推進、3つ目は職人紹介事業の拡大、4つ目は生産性の向上です。トップラインの拡大と並行して業務効率化を進めることで、規模拡大に販売管理費が比例しない収益構造を目指していきます。

将来的には、人材派遣や人材紹介、建設DXを融合し、統合させた上で、建設に特化した人材プラットフォーム型企業への進化を目指していきたいと思います。

売上・営業利益の成長イメージ

中期経営計画では、5年後のFY2030に売上収益500億円、営業利益50億円を目標としています。この実現に向け、コア事業の強化と先ほどお話しした新規事業の拡張を進めていきます。

FY2026-FY2027:先行投資フェーズ

なお、FY2026からFY2027の2年間は、投資フェーズと位置づけています。短期的には、採用投資やDX投資により営業利益率が一時的に低下する可能性がありますが、FY2028以降は単価の向上、建設DXの収益、BPO収益、新たな事業の創出により、利益成長フェーズへ移行する計画です。

付加価値型ソリューション企業への進化

当社が目指す付加価値型ソリューション企業への進化についてご説明します。従来、当社のビジネスモデルは労働集約型モデルでしたが、今後は伴走型建設DX人材サービスや受託機能を組み合わせることで、付加価値型ソリューション企業へと進化していきます。

これは、人数の拡大だけに依存するのではなく、技術者の付加価値を高めることで成長するモデルを目指しています。つまり、規模を追求した成長ではなく、事業構造そのものを進化させることで競争力を高めていく戦い方にチェンジしていくことを意味しています。

建設DX領域における戦略提携の推進と収益力の強化

当社の成長戦略の柱の1つである建設DXについてご説明します。建設業界ではDXツールの導入が進み始めていますが、現場で使いこなせていないという課題があります。

当社は、建設DXのプロダクト企業ではなく、DXを現場で実装できる人材会社を目指しています。現場に配属する技術者を通じて、DXツールの導入、運用、そして定着までを支援するモデルです。

人材派遣モデルを起点とした付加価値収益モデルの拡張

収益モデルとしては、人材派遣を起点に、DX人材派遣、DX伴走支援、さらにBPOへと拡張していきます。つまり、人材派遣からDX、そしてDXからBPOへと付加価値を積み上げることで、収益構造の質を高めていく計画です。

建設DXを収益化するBPO収益比率の段階的引上げ

一方で、建設現場では建設DXツールの導入が進み始めているものの、現場では十分に活用されていないケースも多いのが現状です。そこで当社は、施工管理人材、建設DXチーム、DX専属のソリューション営業を組み合わせ、業務プロセスまで受託できるモデルを構築しています。

株主還元方針

株主還元についてです。当社は安定配当を基本方針としており、2026年10月期の配当予想は年間115円です。また、中期経営計画の期間中は減配を行わない方針としています。

1Q連結業績ハイライト

ここから第1四半期の連結業績についてご説明します。まず、第1四半期の連結業績ハイライトです。売上収益は62億7,600万円で、前年同期比プラス6.5パーセントの増収となりました。一方、営業利益は7億2,400万円で、前年同期比マイナス19.6パーセントとなりました。

この結果は、採用投資および営業体制の強化によるものであり、将来の売上成長に向けた投資と位置づけています。

1Q連結業績ハイライト

通期の計画との関係についてです。中核事業である建設人材派遣は、現在需給調整の過程にあり、売上収益はやや弱含みとなりました。

一方で、この需給調整の進捗を鑑みた結果、稼働率の適正化に加え、原価および販管費のコントロールが功を奏し、現状、利益は計画を上回る進捗となっています。

四半期連結業績推移

スライドは四半期ごとの連結業績推移を示しています。売上高は概ね成長トレンドを維持しており、営業利益は投資のタイミングによって四半期ごとに変動しています。

セグメント別業績推移

セグメント別業績推移です。建設ソリューション事業は売上収益が前年同期比7.2パーセント増と成長しています。在籍人数は3,650名まで増加しました。ITソリューション事業は、引き続きグループシナジーの創出を進めています。

なお、構成比は建設ソリューション事業が9割、ITソリューション事業が1割です。

営業利益減少の要因と位置づけ(前年1Q実績比)

前期の第1四半期実績と比較した際に営業利益が減少している要因についてご説明します。主な要因は、先ほどお話しした採用投資と営業体制の強化です。

これは将来の売上成長に向け、単価向上やDX事業の強化、さらにBPO事業への展開を見据えた戦略的な投資となります。そのため、構造的な収益力の低下ではなく、中長期的な売上成長基盤を構築するものであり、今後は投資効果の顕在化を見込んでいます。

営業利益増減分析(対当期1Q計画比)

第1四半期と当期計画との比較です。稼働率の適正化を意識した需給調整の進捗に合わせ、原価および販管費のコントロールを行った結果、計画比で大幅な増益となりました。

主要KPI:在籍人数・稼働人数・稼働率

主要KPIについてご説明します。

建設ソリューション事業における2026年1月の在籍人数は3,650名、稼働人数は3,334名、第1四半期の稼働率は平均91.3パーセントとなりました。需給調整を行いながら稼働状況のコントロールを進めていますが、足元では改善方向に推移しています。

ITソリューション事業における2026年1月の在籍人数は426名、稼働人数は376名、第1四半期の稼働率は平均90パーセントです。

主要KPI:採用人数・退職人数・退職率

需給調整の影響を受けているものの、建設ソリューション事業では、第1四半期の採用人数は429名、退職人数は428名、退職率は32.8パーセントでした。

ITソリューション事業では、採用人数は21名、退職人数は28名、退職率は22.2パーセントとなっています。当社の派遣ビジネスモデルにおいては、高い稼働率と人材定着率の向上が最優先課題です。この点について、後ほど具体的な取り組みをご説明します。

主要KPI:契約単価

スライドでは契約単価の推移についてご説明しています。両事業ともFY2024からFY2026第1四半期にかけて、概ね51万円台から52万円台で推移しています。

今後の重点強化領域

成長加速に向けた重点施策についてご説明します。スライドには、今後の重点強化領域と施策を記載しています。まず、中期経営計画の成長戦略に掲げる4つの領域について、各施策を中心に着実に実行し、事業成長の実現を図っていきます。

稼働率向上への取り組み

稼働率向上への取り組みについてご説明します。稼働率は前期第3四半期以降、低下傾向にありましたが、当第1四半期では営業活動の強化や施策の投下、さらに需給調整により、徐々に改善傾向に転じ始めています。下期には、稼働率92パーセント台までの回復を見込んでいます。

定着率向上への取り組み

定着率向上への取り組みについてです。当社では、稼働率の安定化とともに、技術者の定着率改善を重要な経営課題として位置づけています。

現在は、営業体制の強化に伴う需給調整の過程にあるため、退職率は一時的にやや高い水準で推移しています。当社のビジネスモデルでは、技術者の稼働人数が売上成長の基盤となるため、定着率の改善は中長期的な成長を支える非常に重要なKPIの1つと認識しています。

このため、当社では技術者の成長機会の提供と現場でのサポート体制の強化、この両面から定着率の改善に取り組んでいます。稼働率の安定化と定着率の改善を両輪で進めることで、技術者数の持続的な拡大と収益基盤の強化につなげていく考えです。

成長を支える人材定着・エンゲージメント強化策

人材定着とエンゲージメントの強化策についてご説明します。

当社では、人材の定着を利益成長の前提条件と位置づけています。従業員との接点を増やす施策として、具体的には福利厚生制度「giftee Benefit」の導入、社内コミュニティの活性化などを通じて、エンゲージメントの向上を図り、定着率の改善につなげるべく取り組んでいます。

具体的には、会社からの経営情報の発信や、経営幹部が積極的に登場して技術部門の方々に会社のビジョンや今後のキャリアパスをご説明する機会を設けています。

また、社内でのサークル活動も今年1月から開始し、現在、約400名が参加しています。技術部や営業部といった組織や部署の枠を超えて交流できる場を設ける体制を会社として整え始めたところです。

建設DX収益化ロードマップ

建設DXの収益化に向けたロードマップをご説明します。建設DXは現在、業界全体としてまだ初期導入フェーズにあり、今後大きな成長余地がある領域と考えています。

当社では、すでに建設DX人材の配属や導入支援を開始しています。今後は現場での実装、運用、支援を通じて、着実に事業化を強化して進めていきます。

FY2030には、DXやBPO関連の売上を連結売上目標500億円のうち20パーセント以上を占める事業規模に拡大することを目指しています。

なお、この領域は当社にとって新しい取り組みであり、現時点では予測が非常に困難であるため、保守的な目標設定としています。しかし、今後の事業推進状況やマーケットの動向および変化に応じて、戦略の見直しを柔軟に行っていく考えです。

人材基盤を活かした「実装型建設DXモデル」始動 -スカイマティクス社との戦略的業務提携-

実装モデルについてご説明します。昨年9月に戦略的業務提携を締結したスカイマティクス社との取り組みを通じて、当社が進める建設DX領域の具体的な展開についてご紹介します。

スカイマティクス社は、累計5万現場での活用実績を有する空間データ統合プラットフォーム「くみき」を提供しており、当社はその導入支援を担っています。

当社の強みである人材基盤と顧客基盤を活かし、「くみき」の導入から運用定着、さらには横展開までを支援する実装型DXモデルの構築を進めています。

具体的には、当社がこれまで構築してきた建設会社との強固な顧客基盤を活かし、専属の営業部隊が「くみき」の導入提案を全国で推進しており、見込みも着実に上がってきています。

その上で、当社の中核子会社であるワールドコーポレーションが保有する建設DX人材を現場へ派遣し、DXツールの実装から運用、定着までを一体的に支援していきたいと思います。

このように、営業と人材の両面からサービスを提供することで、従来の人材派遣モデルにとどまらず、建設現場に建設DXを実装し、定着させるという新たな実装型建設DXモデルを当社が確立したいと考えています。

Arent社との戦略的業務提携 -実装型建設DXモデルの戦略的拡張-

先週金曜日に戦略的業務提携について公表したArent社との取り組みについてご説明します。

Arent社との提携では、同社が提供するAIの工程管理システム「PROCOLLA」について、当社の中核子会社であるワールドコーポレーションの伴走型建設DX人材が、現場での導入支援および定着支援を担います。

具体的には、従来の施工管理人材に加え、オンボーディングを専属とする伴走型建設DX人材を現場に派遣することで、建設現場の生産性向上に向けたDX活用のコンサルティングが可能となります。

それによってお客さまに対して新たな価値提供が可能となるよう取り組んでいきたいと考えています。さらに、実装現場で得られた知見をArent社の開発チームにフィードバックすることで、現場を起点にプロダクトが進化していく実装型DXの循環モデルの構築を目指しています。

今回の業務提携に加え、現在進行形で検討している他の取り組みも含め、当社としては、実装型建設DXモデルの戦略的拡張を着実に進めていく考えです。

建設業界向けIT業務支援領域への拡張によるグループシナジー創出

建設DXの取り組みとしてグループ会社のATJCに、建設領域に特化したIT部門を新設しました。当社が有する建設分野の顧客基盤と業務知見を活かし、IT人材を提供することで、建設会社のDX推進を支援するモデルとなります。

既存のお客さまへの提案を中心に営業効率を高めながら、サービスの拡大を進めていきたいと考えています。

職人紹介事業の強化

最後に、重要な事業戦略のポイントとして、職人紹介事業の強化に向けた取り組みについてご説明します。

当社グループでは、建設業務有料職業紹介事業の許可を保有しています。これは、グループ会社である全国建設人材協会(以下、全建)が全国でわずか3団体のみに許可しているものになります。

この職人紹介事業は、建設業界のピラミッド構造の中で最大のボリュームゾーンである専門工事会社を主なターゲットとして展開しています。職人、いわゆる技能労働者は全国で約340万人規模と言われていますが、高齢化が進み、平均年齢は47歳から48歳とされています。

現在、業界全体として職人の分野において深刻な人手不足が課題となっています。また、当社のグループ会社である全建は、設立以来、1,800社を超える会員企業のご賛同をいただき、顧客基盤を固めてきました。

会員企業からの人材採用に対するニーズは非常に強く、このマーケットは規模的にも今後さらに大きな成長余地がある市場だと強く認識しています。

このような環境を踏まえて、当社グループでは昨年11月より、現状の人材紹介に加え、建設業界に特化したダイレクトリクルーティング(DR)サービス事業と、専門工事会社向けの技術者派遣事業をスタートしました。

今後、お客さまからの多様な採用ニーズにしっかり応えていくため、新たなマーケットの開拓に取り組んでいきます。

将来的には、これらの事業で構築する人材基盤や顧客基盤、そして建設業界のピラミッドを点ではなく面で網羅しているという強みを有機的にすべて連携させ、建設業向けの総合人材プラットフォームの構築を目指していきます。

本日の私からのご説明は以上です。ご清聴いただき、ありがとうございました。

質疑応答:新たな事業領域の収益モデルについて

司会者:「御社の成長戦略では、建設DXや職人領域など、新たな事業領域への展開が示されていますが、これらの事業が将来的にどのような収益モデルになるのか教えてください。特にストック型収益の比率をどのように高めていくのかについて、お考えをおうかがいできればと思います」というご質問です。

柴田:先ほどもお伝えしたとおり、当社としては、中長期的に建設DX、BPO、職人領域といった新しい事業領域をしっかりと拡張させていくことが重要だと考えています。これにより、当社が目指すのは、建設業界において極めて高収益でニッチな企業となることです。

現在の中核事業である人材派遣は、技術者の人数に比例して売上が拡大する側面があり、労働集約型ビジネスだと考えています。

今後は、人材基盤を伸ばしながらも活かすことが重要だと考えており、さらに高い付加価値をつけた高付加価値型サービスを展開するという、会社として重要な時期に差し掛かっていると認識しています。

具体的には、建設DXやBPOといった領域では、単に人材を提供して増やしていくのではなく、お客さまが現在抱えている業務プロセスそのものを一体的に支援するサービスへと拡張していきます。

これにより、付加価値の高い収益モデルを構築できるだけでなく、高単価を適切に労務単価へ反映できるような目標設定が可能になると考えています。

あくまで将来的な収益基盤となる目標としては、先ほど最後にお伝えした職人向けのダイレクトリクルーティングサービス「職人スカウト」を昨年11月からローンチしており、このようなものがストック型収益の1つになると考えています。

また、重要な要素として職人のプラットフォームがあります。当社のオウンドメディアである「ジョブケンワーク」や、ジョブマッチングの「請負市場」など、当社が保有しているシステムを統合していくことが大事だと考えています。

さらに、建設DX企業との協業から生まれるSaaSのレベニューといった手数料収入なども、ストック型収益としてしっかりと確保できるのではないかと見込んでおり、このようなストック型収益モデルを徐々に拡大していきたいと考えています。

このようにストック型収益が高まることについては、既存の売上収益が拡大するだけではなく、ROE20パーセントを目指す観点からも、販管費の効率化や収益性の向上につながると考えています。

したがって、今後は当社の強みである人材派遣をしっかりと強化し、基盤としながらも、建設DXと職人領域を組み合わせることで、事業規模の拡大ではなく構造そのものを進化させて成長していくモデルを構築していきたいと考えています。

質疑応答:建設DXのモデルについて

司会者:「建設業界のDX支援による付加価値型のモデルについて、もう少し詳細を教えてください。先週のリリースも拝見し、中期経営計画の成長戦略の1つである建設DXで御社が何を目指しているのか理解が進みました。

一方で、従来の労働集約型モデルと何が異なり、御社は優位性を発揮できるのでしょうか?」というご質問です。

柴田:繰り返しになりますが、当社の目指す建設DXのモデルは、いわゆる建設DXのプロダクト開発企業になることでは決してありません。建設DXを人材によって現場で実装し、定着させるという人材サービスのモデルが起点となる点が当社の特徴だと思います。

建設業界ではさまざまなDXツールの導入が進んでいるものの、お客さまの声をうかがうと、現場で十分に活用されていないというケースが多く見受けられます。ツールの導入と実際の業務運用の間に大きなギャップが生じており、これが課題だと考えています。

また、当社は施工監理技術者の派遣や先ほどご説明した職人紹介を通じて、上流から下流まで幅広く対応しています。具体的には、ゼネコンからサブコン、地場のゼネコンや専門工事会社、さらには職長や経験者の職人、一人親方もいます。

このように、ピラミッド型の一体構造を包括的に押さえているという特長を活かして、今後、建設現場の業務プロセスを理解した人材をしっかりと提供し活用につなげることができる点が当社の強みになると考えています。

このDXツールの導入支援は、先ほどご説明した当社の伴走型建設DX人材が、その後の運用や業務プロセスの改善まで支援するという実装型のDXモデルをイメージしていただければと思います。今後、着実に展開していく方針です。

これにより、従来の人材派遣モデルに加え、BPO型のサービスやDX支援業務など、より付加価値の高いサービス領域へ拡張することで、戦い方を変えていきたいと考えています。

質疑応答:M&Aの基本方針、中期経営計画への影響について

司会者:「M&Aにおいて、どのような業態、規模感の会社を候補に考えていらっしゃるのか、可能な範囲で教えてください。まずは、同じ建設業界の人材を補完するかたちになるのでしょうか? 

あるいは異業種の会社を検討される方向感でしょうか? また、中期経営計画の目標にはM&Aの数字も含まれているのでしょうか?」というご質問です。

三井規彰氏(以下、三井):取締役の三井です。こちらのご質問には私から回答します。基本的にM&Aの方針としては、建設業界を軸とし、既存事業とのシナジーが見込める領域を中心に検討していく考え方です。

中核事業である建設人材派遣についても、いわゆるインオーガニックによる規模拡大の可能性を必ずしも否定するものではありません。案件内容によっては人材基盤の強化につながるM&Aも選択肢の1つとして検討していく考えです。

一方で、当社としては単に人材派遣事業の規模拡大を目的としたM&Aよりも、本日のご説明でも度々触れている建設DXやBPO、専門職人領域といったサービス領域を拡張し、さらに付加価値を高めることにつながるような案件を優先的に検討していく方針です。

規模感は個別案件ごとの判断になると思いますが、当社の財務規模や統合のしやすさを踏まえ、段階的に取り組んでいく考えです。最後に、中期経営計画の数値目標については、現時点ではオーガニック成長をベースに設定しており、M&Aによる上乗せを前提としたものではありません。

そのため、今後良い案件があり、実際に当社グループに取り込むということになれば、それがアップサイド要因として見ていただくことになると考えています。

質疑応答:中期経営計画の目標・資本政策について

司会者:「FY2030の営業利益率の目標が10パーセント程度と現在と同水準とされている一方で、ROEの目標は20パーセント以上という目標を掲げていらっしゃいます。

今後、有利子負債の削減も進めていかれるであろう中で、先行投資による減益基調をカバーしながらこの目標を達成するためには、自己資本をある程度スリムにする必要があると思います。

時期は明確でなくとも、資本構成の最適化に向け、今後は自己株式買いや配当の強化なども見据えていらっしゃるとの理解でよいでしょうか? キャピタルアロケーションの優先順位をあらためておうかがいできればと思います」というご質問です。

三井:まず、営業利益率は、中期的に現在と同水準の10パーセント程度を維持しながら成長していくことを想定しています。その前提として、事業面ではFY2030に売上収益500億円、営業利益50億円という事業規模の拡大を中期的な目標として掲げています。

一方でROEについては、事業成長に加え、資本効率の向上を同時に意識した経営を行うというメッセージとして、20パーセント以上を目標に設定しています。今後も利益成長に加え、配当や自己株取得などの資本政策を含めて、資本効率をさらに高める余地は十分にあると考えています。

したがって、ROE20パーセントという数値は、中期経営計画で掲げている、FY2030に営業利益50億円達成を目指すために営業利益を積み上げた計算値ではなく、事業成長と資本政策を組み合わせた結果として目指すべき水準とご理解いただければと思います。

また、キャッシュアロケーションの優先順位は、中期経営計画の中で掲げている成長戦略に沿って、しっかりと成長投資を行うことが第一優先であると考えています。その上で、M&Aについても成長機会を捉えるために慎重に検討し、財務の健全性を維持しつつ進めていく方針です。

さらにその上で、株主還元という順番で考えています。事業成長とのバランスを踏まえながら、自己株式の取得や配当の強化について柔軟に検討していくことになります。

最後に付け加えたい点として、中期経営計画期間である2030年までの期間において、特に前半には、大きな成長投資により費用が先行する局面もあると考えています。

そのため、この5年間は配当の下限をしっかり設定させていただき、先にお伝えしたような成長投資を着実に進め、さらに財務健全性を維持した状態で、プラスアルファの株主還元を検討していきたいという考えです。

質疑応答:退職率が上がった背景とその改善策について

司会者:「第1四半期で退職率が大きく上がった背景と改善へ向けた施策の内容を教えてください。また、この水準を業界内で比較して、どのような水準にあるものと見ていらっしゃるでしょうか?」というご質問です。

柴田:退職率に関しては、第1四半期に一時的に上昇したものと捉えています。これは主に営業体制の強化に伴う需給調整の過程で影響が出ているという認識です。

当社の派遣ビジネスにおいては、稼働率と退職率の2つが非常に重要なKPIとなります。技術者の安定稼働を実現するためにも、この2つをバランス良く改善していくことが重要だと考えています。

退職の構造を分析すると、一定割合が入社初期の段階での離職となっています。このケースは未経験者が施工管理職としてキャリアをスタートする場合や、文系出身者や異業種から挑戦する方々に多いです。

実際に現場での業務を経験した際に感じるギャップや、「将来、これでやっていけるか?」といったキャリアに対する不安が退職に至る大きな要因です。

一方で、一定の経験を積んだ技術者の定着率は安定的になる傾向があります。そのため、初期段階のサポート体制を強化することがまずは最も重要であると考えています。

具体的な取り組みとして、資格取得支援などによる成長機会の提供や、社内でのメンター制度を通じた現場フォローの体制強化といった施策を進めています。また、極めてシンプルではありますが最も重要なこととして、配属時のミスマッチを低減させる取り組みも行っています。

定着率の改善に向けては、これらの施策を通じてしっかりと対応していくしかないと考えています。また、ご質問にあった退職率の水準は、経験者と未経験者の在籍割合によって大きく左右される部分があります。

当社は創業当初から未経験者人材の採用を積極的に進めてきたという事業モデルの特性もあり、業界平均との単純な比較が難しい一面があります。当社としては、継続的に退職率の低下に取り組み、地道に社内で一丸となって改善を進めていくことが必要であると考えています。

質疑応答:経営体制変更の背景、建設業界の人員動向・DX戦略に関する見解について

質問者:小林前代表取締役から柴田代表取締役への交代により、2人体制となったことを踏まえ、お聞きします。ゼネコンを含め、建設業界全体として人手不足と言われる一方で、人員は増加している状況が見受けられます。

御社の体制が変わったことも踏まえてお聞きしたいのですが、事業環境に対して想定するシナリオに何か変更があったのでしょうか? 

将来的には人員が減少に転じるタイミングがあるだろうと考えていますが、業界全体として人員が減る時期に対するシナリオや見立てが変化し、「2人体制で取り組んでいこう」と判断されたのでしょうか?

また、建設業界は協力業者を含めて成り立っている業界という印象を持っています。御社の場合は、職人の方々をつなぐといった内容になるかと思いますが、DXの位置づけは、AIの登場により、御社の従来の考えとは異なる使われ方や位置づけになっているということはありますか?

従来の考えとは異なっているために御社が狙うゾーンは変わっているのか、あるいは以前から狙っている領域をさらに深掘りする展開なのか、シナリオの変化があったのか、なかったのかを踏まえ、環境変化に対する現在の想定について教えてください。

柴田:前代表取締役の小林とは、私が2011年にワールドコーポレーションに入社して以来、約15年にわたり、二人三脚で会社の成長を支えてきました。多くの時間を共有し、会社に対する思いや将来目指す姿、業界構造の課題に対してどう乗り越えるかなど、さまざまなことを一緒に進めてきました。

当初、会社が小さい時期にはリソース不足で、会社の成長に人の成長や人数が追いつかず、投資に資金を回せないような状況が続いていました。しかし、2013年頃から未経験者採用が軌道に乗り始め、おかげさまで株式上場も実現しました。

現在では、社内に優秀なメンバーが加わるようになり、また、コアとして採用した人材が育ってきており、社内体制も非常に強化されてきている状況です。

一方で、外部環境を見た私の見解をお伝えすると、ご質問の中で業界は人手不足でありながら人材は入ってきているという話がありましたが、おそらく監督層は増えていると思います。しかし、作業を行う職人層は不足しているため、工事を受注したくても受注できない状況が続いています。

これまでは発注者が強く、次にゼネコン、サブコンが強く、職人が一番弱いという構造でしたが、現在はその構図が逆転していると考えています。作り手がいないため発注もできず、ゼネコン側が工事を受注しても、人がいなければ工程遅延や赤字につながるという状況です。

そのため、当社としてはこれまでの20年、30年で顕在化した業界の職人不足という課題に対し、当社1社のみでは解決できませんが、社会や建設業に貢献するために新しい担い手となる技能労働者をできる限り多く配属していきたいと考えています。

一方で、人口減少という構造的課題はあるため、建設DXの活用によって生産性を向上させる必要があります。現場監督や施工管理の業務は、職人に比べるとDXやAI導入が進めやすい分野かもしれません。

しかし職人に関しては、5年、10年かけても一人前、または半人前と言われるような職業であり、このような職人を増やす取り組みが重要だと考えています。

そのような意味で建設業の派遣領域における当社の成長として、オーガニックな成長で5,000人、6,000人規模を目指すことはまだ十分可能だと見込んでいます。

しかし、採用単価や労務単価が年々上昇しており、それに伴う派遣料への価格転嫁が課題となってきています。これは当社に限らず、競合他社を含めた業界全体の課題ではないかと考えています。

したがって、単純に人員の数で勝負するのではなく、質や構造を変えていくためには、現在の業界の動向を正確に把握し、それに適応することが求められます。この点でDXを活用することは、国の生産性を向上させるという観点からも整合性が取れていると思います。

さらに職人が不足している現状を踏まえ、ゼネコンから現場監督、職人までといった、上から下までのピラミッド構造を当社がしっかり押さえ、その上でジョブマッチングや人材マッチングを実現できる仕組みを構築したいと考えています。

このことで当社の社員がわくわくして「しっかり会社を伸ばしていこう」という夢や目標を持てるようになったらいいという話を小林ともしています。小林から託された次の目標を引き継ぎ、業界や社会に貢献できる会社を目指すべく今後も取り組んでいきたいと思います。

まとまりきらない部分もあり恐縮ですが、こちらで回答とします。

柴田氏からのご挨拶

柴田:本日はお忙しい中、この場にお集まりいただき、またオンラインでご視聴いただきありがとうございました。

昨年12月に中期経営計画を策定し、新しい経営体制の下、当社は新たな成長の1期目をスタートさせています。当然ながら新しい領域への挑戦であり、課題も多くありますが、結果をきちんと出していきたいと考えています。

また、社員が課題に向き合い、一体感をもって、良い意味で上場企業でありながらベンチャースピリッツを持っているような、勢いのある事業や会社を目指して成長していきたいと私自身考えています。

これからもみなさまの応援をいただければ幸いです。本日は誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

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