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中国の切り札が消える日。重希土類が5〜10年で枯渇、レアアース覇権は日本へ=勝又壽良

中国南部のイオン吸着型鉱床の特徴は、すでに指摘したように、粘土の表面にレアアースが薄く吸着しているだけだ。この結果、平均品位が0.05~0.2%と極めて低い。こうして、低品位ゆえに「乱獲」せざるを得なかったのだ。

要約すれば、低品位×脆弱な鉱床が乱獲を招いた。これが同時に、鉱床(地層)の破壊を押し広げた。乱獲が、加速度的は地層破壊を進行させたのである。この裏には、地方政府がGDPのために採掘を煽った面もある。地方政府が、土地売却益を増やすべく不動産バブルを煽ったと同じ構造である。

こうみてくると、レアアース・バブルも不動産バブルも地方政府が深く関わっていたことに注意すべきである。地方政府は、レアアースの採掘量を過少報告し、違法採掘は統計未報告で、中央が実態の深刻さを把握できなかったのだ。こうして、中国工業情報化部(MIIT)が気付いた時はすでに赤信号が灯っており、手遅れ状態になっていた。

ここに貴重なデータがある。グローバル・トレード・アトラスによると、中国のレアアースの輸出価格は2020~24年の間、1キログラムあたり22ドル。ベトナム(60ドル)やタイ(88ドル)に比べ3~4倍も価格競争力がある、とされている。これは、一口にレアアースといっても、高価な重希土類と安価な軽希土類に分けられ、中国は安価な軽希土類の輸出に力点を置いているからだ。ベトナムやタイには、高価な重希土類も含まれているので、平均輸出価格が中国を上回っている。

中国は、重希土類が戦略品であるので、できる限り輸出せずに温存する姿勢をみせている。自国のミサイル・宇宙などの軍事装備に回す方針であろうが、既述の通り国内資源はあと5~10年で枯渇と最悪事態に直面している。東南アジアでは今後、ミャンマー・ベトナム・タイが有力鉱山国となる。ただ、ベトナムやタイは日本の「重点資源国25カ国」に名前を連ねている。日本のレアアース製錬技術(化学的精錬法)を採用して、レアアース製品まで手がける。こうなると、中国は、ミャンマーへと接近するしかないであろう。

歴史的「一手逆転」

現在の中国は、重希土類で日本への輸出規制で圧力を掛けている。だが、これは「噴火口のダンス」である。間もなく始まる中国の重希土類の資源枯渇によって、この構図はまったく意味をなさなくなるからだ。それどころか、日本は南鳥島レアアースという重希土類が豊富な「鉱脈」を確保している。日本のレアアース戦略については後述するとして、これからの中国はどうするのか、だ。

将棋の世界では、「一手逆転」という言葉がある。たった一手で、それまでの流れが完全に変わって、逆転の決め手になることだ。中国が、日本をレアアースで「虐めていたら」、一瞬のうちに「主客」が入れ替わるという、歴史上でも滅多に起こらない現象がこれから始まる。中国のレアアース戦略が限界に達しても、近隣国のベトナム・タイはレアアースで日米側に入っている。レアアース地政学が、2030年代に大きく変わることは今や確実である。こういう状況で、中国は遅ればせながら近隣国対策に乗り出している。

中国とベトナムの両政府は3月16日、ベトナムのハノイで外交・国防・公安当局による閣僚会合「3プラス3」を初めて開催した。国境防衛での協力強化のほか、エネルギーなどを巡る国家安全保障について協議した。中国が、この時点でベトナムへ急接近している裏には、レアアース(重希土類)獲得という「野望」が秘められていることは疑いない。だが、ベトナムは歴史的にみても中国と軍事的対立の歴史を織りなしており、根強い「反中意識」に燃えている。その警戒心が、日本への親近感となった。中国は手遅れなのだ。

中国の重希土類独占が、間もなく崩れる。これと軌を一にして、「日米欧+資源国ブロック」の重要鉱物特恵市場(8月稼働)が機能する。何か、ドラマのように主役が交代することになる。日米は、重希土類の使用を節約する技術(粒界拡散)でも主導権を握っている。中国は、手も足も出ない状況へ追い込まれるであろう。

これは将棋で言えば、中国の攻めが切れて、日本の反撃が一気に通る瞬間が迫っていることだ。まさに、一手逆転の世界がこれから始まるであろう。

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