fbpx

中国の切り札が消える日。重希土類が5〜10年で枯渇、レアアース覇権は日本へ=勝又壽良

腰だめ試算の危険性

日本は、28年以降に南鳥島レアアースの商業生産が始まる。早くも、コスト試算が報道されるようになった。それによると、「1トン1,100万円」で、中国の20倍もする高コストとしている。メディアの記事であるから、これは意外と「一般常識」になる懸念が強い。だが、肝心のレアアースの種類と品位を棚上げした「盲目予測」である。

南鳥島レアアースは、高価な重希土類が豊富とされている。その上、品位が中国の10~20倍とされる。また、精錬は中国の物理的精錬法と違った、日本独自の化学的精錬法である。常温常圧で作業が行われ環境との親和性が高い理想的精錬法である。AI(人工知能)によって、レアアース泥は元素物に分けられて精錬される。労働コストも極めて低いのだ。こういう最新式の精錬法の採用によって、深海6,000メートルの悪条件下の採掘としても、これを相殺するいくつかの好条件が揃っている。

南鳥島レアアースは、泥状態で賦存している。中国のイオン吸着型鉱床は、柔らかい粘土の表面に薄く張り付いている状態だ。まったく賦存状態が異なっている。南鳥島は、深海の泥を船上から下ろしたパイプで軽く掬い上げるシステムである。中国のように、地層を破壊する酸性溶液を使う必要もないのだ。こういう、環境親和性の高い採掘方法の違いを無視したコスト試算が、独り歩きして定着することは危険この上ないであろう。

むろん、コスト計算は重要である。だが、それと同時に見落としてならないのは、日本が経済安全保障で不可欠な戦略物資を自前で調達できることだ。日本が、中国から経済威圧を受けて、レアアースの輸入規制を受けるという屈辱を考えれば、南鳥島レアアースは日本外交推進の上でも大きな力を発揮する。日本が、外交でも誇りを取戻すことになる。

日本が世界の40%

中国は、南鳥島のレアアースが最低1,600万トンの埋蔵量で、しかも重希土類の多いという実態も把握している。中国外交部の記者会見で、この質問が出ると素っ気ない返事をして無関心を装った。「その種の話は、これまでも何回か出てきた」と噂話の類いにして煙に巻いたのである。これを聞いた中国ネット民は、大喜びで「噂」と片付けている。中国が、世界一のレアアース産出国として安堵しているのだ。

このように、レアアースは中国国民の誇りの種になっているほどだが、中国当局は危機感を募らせている。中国工業情報化部は数年前から、重希土類の埋蔵量が急速に減少していると発表している。当時、「重希土類の可採年数は5~15年」としていた。現状では、5~10年後に、重希土類の命脈が尽きるのである。南鳥島レアアースは、偶然にもこの時期に本格的商業生産を始めるので世界の「主役交代」になる。

中国政府は、南鳥島レアアース泥について何らの動きもしていない。公式声明、外交的抗議、国際機関への問題提起などを一切行っていないのだ。南鳥島が、日本の排他的経済水域(EEZ)内であり、中国が口を出す法的根拠がないからだ。尖閣のように争える余地がないため、中国は正面から反対できない立場である。

Next: 主役交代はすぐそこ。日本が「材料覇権国」に躍り出る日

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー