2026年3月6日に発表された、株式会社True Data2026年3月期第3四半期決算および新中期経営計画説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
Agenda
米倉裕之氏(以下、米倉):株式会社True Data代表取締役社長の米倉です。本日はお忙しい中、当社の2026年3月期第3四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
本日は、みなさまに当社の現在と未来をより深くご理解いただくために、2部構成でお話しします。
1つ目は2029年3月期を最終年度とする新中期経営計画の詳細、2つ目は2026年3月期第3四半期の決算概況および通期計画の修正報告です。限られた時間の中で一部詳細を割愛しながら進めますが、説明終了後に質疑応答の時間を設けていますので、どうぞよろしくお願いします。
エグゼクティブ・サマリー

エグゼクティブ・サマリーからご説明します。本日のポイントは、中長期の成長軌道と足元の進捗の2点です。
まず、新中期経営計画の全体像です。キーワードは、ここに記載されている「リテールデータ×AIインサイト」です。当社の支援範囲を従来のデータ分析から意思決定そのものへと広げ、最終年度には売上高30億円以上、営業利益率10パーセント以上を目指します。
これは単なる規模の拡大ではなく、AIのレバレッジを活用した筋肉質な組織への転換を意味しています。
一方、スライド下部に記載のとおり、今期の通期計画については下方修正を公表しました。大型案件において、クライアント側の運用最適化を優先した結果、リソースが先行したことが主因です。しかし、これは将来のストック収益を最大化するための不可欠な投資であり、一時的な産みの苦しみであると捉えています。
この反転攻勢の鍵を握るのが、第3四半期に締結した株式会社あらたとの提携です。
これにより、食品、医薬品、日用品という主要3領域をカバーする国内トップクラスの卸ネットワークが完成しました。この強固なチャネルを武器に、来期以降の成長を確実なものにしていきます。
代表メッセージ

スライドを用いて、中期経営計画の背景と進むべき道についてお話しします。
冒頭にも記載していますが、新しい中期経営計画は「限られたリソースをどこに投じれば、最大のリターンを生み出せるのか」という問いから始まっています。
当社はこれまで「マーケティングSaaS企業」として歩んできました。
今後は、SaaSを単なる機能提供、つまり機能をストック型で提供するものではなく、意思決定を組み込むための器として再定義します。
True Data が進む道

私たちの強みの源泉は、6,000万人規模、5兆5,000億円におよぶ圧倒的なリテールデータです。これにAIを掛け合わせ、オフラインからオンラインまでを横断する意思決定基盤(OS)を目指します。
消費財・小売業の環境変化

現在、当社の主要なお客さまである消費財メーカーや小売業界は、インフレの常態化や3rdパーティクッキーの終焉など、マーケティングの観点で歴史的な転換点を迎えています。
従来の「売るノウハウ」が形骸化する中で、1stパーティのリテールデータを核とした評価指標の再構築が急務となっており、当社の役割はこれまで以上に重要になっています。
前中期経営計画の成果と課題

成果と課題、そしてコンセプトについてお話しします。前中期経営計画では、スライド左上に記載の楽天やHakuhodo DY ONEとのデジタル広告連携、さらにスライド右側に記載の販促AIのようなAIソリューションの上市など、着実に手札を広げてきました。
スライド下部に示しているように、エンタープライズのお客さまにもご加入いただきました。
一方で、エンタープライズのお客さまからカスタマイズ性を求められることがあり、成長パターンが多角化している状況にあります。この多角化に対応するため、リソース配分の優先順位をより精査する必要が生じました。私たちはこれをポジティブな成長痛と呼んでいます。
新中期経営計画のコンセプト

このような現状認識のもと、新中期経営計画のコンセプトを策定しました。この「パートナー連携×パターン化」の徹底が重要であると考えています。
スライド右側では、事業をどのようにスケールさせていくかという話とともに、組織である私たち自身の中も変えていかなければならないという内容が示されています。型をスケールさせる組織と、新たな型を作る組織、すなわち新しいAIソリューションを生み出してさらにスケールを目指す組織のように、事業と組織の両方を2本立てで推進していくというイメージを持っています。
内製化するコア・バリューと外製を活用する機能領域

当社は自社ですべてを抱え込まず、エコシステムを活用します。
スライド中央の円の中に示されているのが内製化領域です。評価指標の標準化やAIインサイトの導出といったコア・プロセスについては内製化します。
一方で、お客さまの獲得、広告運用、システム運用などの機能については、内製化にこだわらず、外部との連携を通じて柔軟にスケールさせるスピードが重要であると考えています。
パターンを作る|大手顧客向けカスタム対応で知見蓄積

もう少し詳細をお話しします。パターンを作って横に展開していくという話ですが、成長のサイクルを考えた時に、やはり起点は大手企業と一緒に行うカスタム化からスタートすると考えています。
このカスタム対応については、「ユースケース(Use Case)」とも言いますが、大手のお客さまと取り組むことで得た現場の知見を、単なる受託業務で終わらせるのではなく、例えば値上げの影響予測AIや需給管理の高度化AIなど、汎用的な「型」に昇華させることを目指しています。
パターンを横展開する|プロダクトを複層化しパートナーと拡販

この「型」を国内主要卸のネットワークを通じて一斉に横展開していきます。スライドの図に示しているように、食品領域では伊藤忠商事の取引基盤である1万社、ヘルスケア領域ではアルフレッサ ヘルスケアの取引基盤である680社、日用品・化粧品領域ではあらたの取引基盤である1,100社といった潜在市場1万3,000社に対して、低コストかつ圧倒的なスピードで面の拡大と単価の向上を同時に実現することが基本的な方針です。
パターン活用を支える|組織体系と人的資本戦略をアップデート

ここから先は、組織と人的資本、そして市場のポテンシャルという観点でお話しします。
戦略を実行に移すために、スライド左側に示されている日本の企業で一般的な機能別組織から、社内カンパニー制へと移行します。年齢を問わず、現場の部門長クラスやビジネスリーダーに大幅に権限を委譲し、意思決定のスピードを上げることを目指します。
もう1つ、株主のみなさまと同じ視点を持つための第3の報酬として、有償ストックオプションやエンゲージメントストック(ファントムストック)の導入を検討し、数値と実行にコミットする組織文化を醸成する方針です。
エンゲージメントストックとは、当社が目指しているKPIや社内のゴールを設定し、それを達成するとポイントが付与される仕組みです。この仕組みは全従業員を対象としており、付与されたポイントは将来的に株価に連動した金額を現金としてお支払いすることを想定しています。
コア・バリューを補強する|業態×チャネル横断的なインサイトを提供

リテールメディアの可能性についてご説明します。この中期経営計画における最大の成長エンジンと位置づけているのが、リテールメディア領域です。
現在、Cookie規制によりリテールデータの価値が急騰していますが、現場では評価指標の分断という課題があります。
当社は、あらゆるチャネルを同一の物差しで計測できる横断的な評価指標を実装し、この領域でOSポジションを確立します。
我々は大型案件について言及していますが、これもまさしく成功事例として捉えており、この領域を全力で狙っていく考えです。
コア・バリューを収益化する|リテールメディア領域のポテンシャル

2028年には1兆1,000億円を超える巨大市場が見込まれる中で、当社のターゲット市場(SAM)は約360億円に達すると試算しています。足元の当社の売上高約18億5,000万円と比較して、その大きな成長可能性をご理解いただけると思います。
我々の存在意義、この市場で果たす役割についてですが、当社は広告の販売や制作、運用で貢献する立ち位置ではありません。あくまでOSとして、事前の分析により、「どんな方に対してターゲティングしたらいいか」を示し、その後の効果検証を組み合わせることで全体の市場に貢献します。
財務目標(1/2)

財務目標とロードマップについてです。2029年3月期の財務目標は、売上高30億円以上、営業利益3億円から4億円です。この売上高の増分である11億7,000万円の内訳ですが、コア事業、AIソリューション、リテールメディアを基盤に明確に積み上げています。さらに、10億円以上のM&A投資枠を加えて、さらなる上積みを目指します。
財務目標(2/2)

スライド左側の「投資」に関する事項ですが、2月12日に社内CVCを立ち上げました。また、シード期のAIスタートアップに投資するファンドへのLP出資を実行することを発表しています。
一方、スライド右側には「株主さまへの還元」というテーマが記載されています。中期経営計画期間内において早期の利益剰余金のプラス転換を目指しています。利益剰余金がプラスにならない限り株主還元が実施できないため、この実現を目指し、準備が整い次第、速やかに株主還元を開始したいと強く考えています。
行動計画

3年間のロードマップは明確です。
1年目は構造転換と勝てる型を作ることを目指します。卸売業者との連携が本格的に稼働し、待ちに待った大型案件も本格的に稼働すると考えています。一方で、先ほど述べたAIソリューションをエコシステムとしてつなげていくための投資も、この時点で行います。
2年目は型の横展開と収益の複層化を進める段階です。SaaSがさらに広がる中で、1年目に構築したAIソリューションをそれに組み込んでいくことを予定しています。
3年目はオーガニック目標の必達と、M&Aによる飛躍を目指します。M&Aは3年目に限定して行うのではなく、常に機会を狙い続けています。ただし、これは縁に左右される部分もあり、プラスアルファの取り組みとなります。少なくとも1回、仮に良いご縁が連続して生まれるようであれば、連続して進めたいと考えています。
四半期業績|サマリー

足元の業績についてです。第3四半期の売上高は前年同期比25.1パーセント増の4億5,600万円となり、堅調なトップライン成長を維持しています。特に「ショッピングスキャン等」が前四半期比43.4パーセント増と大きく伸びました。一方、営業利益は700万円となりました。
四半期業績|売上高

売上高についてです。「イーグルアイ」の契約社数は増加しており、また「ショッピングスキャン等」も前四半期比で43.4パーセント増と伸びています。
一方で、棒グラフの薄いグレーのスポット収益については反動減がありました。第1四半期、第2四半期では大型開発案件のスポットがありましたが、第3四半期のタイミングでの計上はありませんでした。
四半期業績|売上総利益・売上原価

売上総利益と売上原価についてです。大型案件のストック収益の立ち上がりが遅れていることとリンクして運営費用が先行している部分は、その他原価に含まれます。
四半期業績|営業利益・販管費

販管費についてです。次期中期経営計画を見据えた経営および営業体制の強化のための採用によって、1,800万円増加しています。
これらはすべて、将来の収益を見込んだ戦略的な先行投資です。
四半期業績|増減分析

増減分析です。スライド左側が売上高、スライド右側が営業利益です。
IRニュース|一覧

IRニュースです。これまで取り組んできた内容を発表しています。
IRニュース|トピックス

株式会社あらたとの戦略的業務提携についてです。昨年12月に提携を発表しました。
通期計画|サマリー(2026/2/12修正)

今期通期計画の修正についてです。前スライドでご説明したタイミングのずれを考慮し、売上高は18億3,000万円、営業利益は6,000万円へと修正しました。期初計画比では減額となっていますが、前年比では増収増益のトレンドを維持しています。
現在はコスト先行から収益の刈り取りへと転換する段階にあります。すでにお客さまと緊密に連携しており、来期以降の収益期を確信しています。
AIエコシステムへの進化に伴う成長投資については、短期的な取り組みではありますが、コントロールしつつ進めていきます。そして、新中期経営計画の目標達成に向けて邁進していきます。
以上で私からの説明を終わります。ありがとうございました。
質疑応答:AI時代における競争優位性について

司会者:「AIの台頭による『SaaSの死』という言葉が語られる中、御社の競争優位性をどのように考えていますか?」というご質問です。
米倉:近年「SaaSの死」という言葉が語られる背景には、生成AIの進展によりソフトウェアの機能そのものが急速にコモディティ化している現実があります。
みなさまも実感されていると思いますが、この非常に早いAIの普及速度を鑑みると、機能性に競争力を求める事業戦略は今後容易ではなくなると考えています。
こうした環境において競争力の源泉となるのは、ツールの機能以上に、そのAIが学習し活用するデータであると考えています。特に、お客さま企業の意思決定の結果が実際に市場でどのような成果を生んだのかを示す実測データは、AIにとって極めて価値の高い学習基盤になると考えています。
当社は20年以上にわたり、全国の小売店のリテールデータを精製し、「誰に、何が、いつ、どこで、どれだけ売れたのか」という実購買データを蓄積してきました。これは、企業のマーケティング施策や商品戦略の結果を市場の実データとして捉えた、まさに消費行動の実測データです。
こうして精製されたデータ基盤は、短期間で構築できるものではありません。当社の成長戦略の中核をなす資産であると考えています。
当社は、今後ツールの機能を進化させ、マーケティングSaaS企業から、企業の意思決定を支える意思決定支援会社へと成長を図ります。希少性の高いリテールデータを核として、AIインサイトを組み合わせることで提供価値と単価を同時に引き上げる独自の成長モデルを構築していきます。
「SaaSの死」に関してですが、生成AIの技術革新を私たちは脅威とせず、提供価値を飛躍させるための武器として捉えています。
リテールデータという基盤をさらに盤石にしつつ、お客さまの意思決定を支える不可欠なパートナーとして、圧倒的な市場優位性を維持していきます。
質疑応答:生成AIを活用したサービス展開戦略について
司会者:「生成AIの活用について教えてください。横展開する際に、生成AIをどのように活用されますか?」というご質問です。
米倉:あくまでもSaaSは横展開していく器であり、その器はどんどん横に広がっていきます。そして、そこに載せていくものとして生成AIがあると考えています。
一口にAIと言っても、すでに生成AIに限らずさまざまな種類のAIが登場しており、それぞれのスタートアップが独自のコンセプトで展開しています。
我々としては、リテールデータとの相性に注目しています。ただし、AI技術そのものはテクノロジーとして模倣されやすいという側面があり、現在、多くのAIスタートアップが生まれている状況です。そのため、単にAIだけでは差別化が難しいという課題があります。
そこで、当社では「モート(Moat、参入障壁)」という考えに基づき、データとAIを組み合わせて学習させることで、AI自体が会社にとっての独自性やモートを形成し、それによって成長できると考えています。この成長の価値を共有することが重要という認識です。
したがって、AIは脅威ではなく、外部の価値やノウハウを取り入れながら、我々と連携して一緒に構築していくものと捉えています。このように、エコシステムの中でAIを活用していくことがメインのイメージとなっています。
質疑応答:AIの進化に伴う成長ビジョンについて
司会者:「AIが急激に進化していく中で、米倉社長が見据えているAIとの共創・共存の姿を教えてください」というご質問です。
米倉:まさしく今お話しした内容になりますが、1つは、「どのようなデータを学習させるのか」ということが非常に重要になっていきます。
もう1つとしては、ユースケースが非常に重要になってきます。具体的には、どのような現場でどのようなユースケースがあり、それによってどのように課題を解決するのかという点です。使い方、すなわち活用方法が非常に重要な鍵を握るということです。
我々はデータ基盤という言葉を使いますが、単にデータを購入しているというような立場ではありません。小売業のお客さまと専用環境を用意し、その中で全データを日々精製・活用し、現場で実際に役立てていくということを行っています。
したがって、私たちはユースケース、「どう現場で活用するか」というところを通じて、AI・データの価値を出せると考えています。
また重要なのは、その結果をその場で効果検証でき、成功事例を作れる点が優位性だと考えています。そのため、当社と連携しながら未来を共に作り上げていく、AIスタートアップ企業やグローバルに活動する先進的なAI企業とのエコシステムの中で共存していくことが、当社の正確なイメージだと考えています。
質疑応答:既存のAIソリューションの本格展開と新ソリューションについて

司会者:「次期中期経営計画期間において、AIソリューションを大きく成長させる予定とのことですが、既に提供開始されたAIソリューションの本格展開開始時期と、新たなAIソリューションの検討状況について教えてください」というご質問です。
米倉:2つのご質問がありましたが、まず、現在の状況としてすでに稼働を開始している大型案件についてお話しします。これに関しては、現場実務にAIソリューションを定着させるためのお客さま側のプロセスに時間がかかっており、これが今回の利益の下押し要因となりました。
しかし、このプロセスは、AIをお客さまの実務インフラとして確立し、今後の拡大を確実なものにするために不可欠なステップです。
ですから、時期については、これまでの遅延があったため、我々も非常に慎重になっています。そのため、中期経営計画では保守から成行ベースで幅を持たせた表現とせざるを得なかった状況です。
いったん現場の実務に根づかせた成功パターン、これを私たちの標準モデル、型として磨き上げることが、次の成長フェーズにおける横展開の鍵となると考えています。
次に、新たなAIソリューションの検討状況についてですが、今後の開発において重要な方針として、自社開発に固執しないスピード重視の戦略を掲げています。もちろん自社開発も進めますが、それにこだわらず進めていきます。
すでにAIスタートアップやグローバルなAI企業との協業による新たなソリューション開発が進行中です。こちらについては、具体的に情報公開が可能な段階に達しましたら、速やかに開示資料などを通じてご報告します。
質疑応答:大手卸売業との協業案件の現状と見通しについて

司会者:「期待していた伊藤忠商事やアルフレッサ ヘルスケアなどの大手卸売業との協業による業績貢献が見えてきません。現在の課題と今後の見通しについて教えてください」というご質問です。
米倉:大手卸売業との協業案件において、これまで2つのステップを確実に進めてきました。
1つ目は、双方の強みを活かすための共同営業体制の整備です。
2つ目は、大企業の既存システムもしくは既存のデータ資産と、当社のデータ基盤を高度に連携させるためのアーキテクチャ、つまりシステム構造の部分です。
現在、これらの一連の体制構築はすでに完了しています。また、お客さまである国内のメーカーでは、商慣習として予算を確保した上で、4月の年度替わりに合わせて契約を切り替えることが多いという状況が確認されています。
これまで共同で積み上げてきた商談の成果が、来期第1四半期、4月から本格的に動き出す見通しです。
質疑応答:大手卸売業との協業案件の時間軸リスクと売上ポテンシャルについて
司会者:「今期の下期修正を踏まえると、大手の取り組みは想定以上に時間がかかる可能性があると思います。あらたやアルフレッサ ヘルスケアなどとの協業においても、時間がかかるリスクはあるのか、パートナーとどのような座組が握れているのか、今回の中期経営計画期間で、これらの大手パートナー経由でいくらくらいの売上が作れるのかについて教えてください」というご質問です。
米倉:時間がかかるリスクについては、先ほどお話しした内容と一部重なる部分があります。具体的には、伊藤忠商事を含め、共同営業体制の構築やアーキテクチャの連携といった部分について、0から1を作ってきたというのがこちらの内容です。
0から1を作るフェーズはすでに終了しており、今回のあらたとの連携では、1から10へ広げるフェーズからスタートできるため、立ち上がりは早いと見込んでいます。
したがって、初期の提携時点で基盤がかなり整えられたこともあり、今後はスピード感が向上すると見込んでいます。
動き始める時期ですが、最初に準備を進めた部分については、この4月以降に動き出す予定です。また、次のあらたとの提携については、下期から始まる予定と考えています。
あらたとのプロジェクトはすでに動き始めています。昨年末の日本経済新聞に掲載されたあらたの東風谷社長のインタビューでも、当社との提携について言及されており、先方からも高い期待を寄せていただいています。
当社としては、完成した強固なパートナー連携販売網を最大限に活用し、既存コア事業の横展開はもちろんのこと、AIソリューションの提供も含め、従来の倍速で進めていきます。この取り組みにより、継続的な20パーセント成長への土台を構築できたと考えています。
いくらぐらいの売上高になるかという点についてですが、既存のサービスに加えて、AIを導入することで大きな可能性を秘めていると考えています。先ほどご説明した中期経営計画の数値では、AI事業の売上をブレークダウンして記載していますが、この大手卸とのネットワーク上に乗せて販売を進めていくことも想定した内容としています。
質疑応答:イーグルアイの契約社数増加の要因について

司会者:「『イーグルアイ』の契約社数の増加ペースが上がっています。なにか営業手法を含め、取り組みを変えたのでしょうか?」というご質問です。
米倉:「イーグルアイ」の契約社数の加速については、先ほどお話ししたとおり、卸業者との連携の効果が大きいわけではありません。ただし、これは一過性の要因ではなく、今期から着手した「営業の科学」および組織の専門分化が結実した結果です。
単なる営業努力の強化ではなく、3つの施策を実施しましたのでご説明します。1つ目の施策は、営業手法の型の確立です。属人的な営業から脱却し、ターゲット選定からクロージングまでのプロセスを徹底的にパターン化しました。
これは当社の直営業の話になりますが、この再現性の高い営業モデルを社内教育にまで落とし込み、成約率の底上げと営業担当者の早期戦力化を同時に実現しています。
2つ目の施策は、「イーグルアイ」というコアサービスに特化した専任営業チームを作り、消費財メーカー向けの専任組織を立ち上げたことです。この組織では、お客さまの課題に対する専門性を高めた提案を行い、見込み客の獲得から契約締結までのリードタイムを短縮し、効率的な新規顧客の獲得を可能にしています。
3つ目の施策は、能動的なカスタマーサクセスによるLTV(顧客生涯価値)の最大化です。カスタマーサクセスを単なるサポート窓口ではなく、お客さまのデータ活用を先回りして支援するカスタマーサクセスチームとして強化しました。
これにより、解約の兆候を未然に防ぐだけでなく、継続的な活動を促進することで、いわゆるチャーンレート(解約率)を抑制し、積み上げ型の成長基盤を強化しました。
また、これは「イーグルアイ」単体にとどまらず、確立された「勝てる営業モデル」を、他のAIを含めたサービスラインナップにも随時横展開していく方針です。
このように、直販営業の仕組みを活用して成長を加速させながら、中期経営計画の目標達成に向けて、年間20パーセント成長を見込む高い確度の成長軌道を描いていきます。
まとめますと、「イーグルアイ」の契約社数増加は、当社の体制の組み換えによって実現しており、卸売業との連携による効果は今後の取り組みの結果として期待されるものです。
質疑応答:リテールメディア領域における立ち位置と成長見通しについて

司会者:「中計の売上目標30億円には、大型案件のポテンシャルを含まないとのことですが、既存顧客による成行インライン想定において、スライド16ページのSAMの成長率にも及ばないというのは、相当な苦戦が想定されているように思われます。御社が既存の延長で売上を伸ばせない中、どのような他社がSAMのシェアを拡大する想定ですか?」というご質問です。
米倉:現時点では苦戦しているとは考えていません。リテールメディアの領域には多くのプレイヤーが存在し、代表的な例として、電通や博報堂、サイバーエージェント、通信事業者などが挙げられます。
当社は、リテールメディアの中でも広告代理店などに幅広い価値提供を行う立場にあります。広告代理店は、広告の販売やクリエイティブの制作、広告運用など、さまざまな領域に対応していますが、私たちはあくまでも「OS」としての立ち位置を重視しており、ターゲットの分析から精緻なターゲティング、さらに効果検証までを一貫して行う体制を整えています。
現時点では、当社以上にこれらを実行できる企業が存在するとは考えておらず、スピード感をもって取り組んでいます。この領域への挑戦は当社にとっても初めての試みであり、成長率の具体的な数字は開示していませんが、金額規模は小さくても着実に成長しています。
したがって、この領域の成長が今後も続くのであれば、大きな可能性があると考えています。3年間の数字には直接反映していませんが、それが将来のポテンシャルとなると見込んでいます。
質疑応答:新中期経営計画における数値目標の考え方について

司会者:「大型案件を中計に取り込むのが難しいということだと思いますが、市場はそもそも中計の開示を要求していません。見通しが立たない部分を除いて計画数値を出すと、結果的に上振れすることでかっこ良く見えますが、市場は達成可能な中計を開示することを要求しているわけでもありません。
なぜIRが慎重になること、中計の数字を開示することを目的化するのですか? 市場が聞きたいのはビジョン、数値的インパクトであり、年度、売上、営業利益がきれいに並んだ中計そのものではありません」というご質問です。
米倉:私たちが描く大きなポテンシャルやビジョンが伝わっていないとすれば、私の伝え方に反省すべき点があると考えています。今回このように幅を持たせた具体的な数字を示した真意をお伝えさせてください。
これまで一部の大型案件で遅延が繰り返されてきた事実を重く受け止め、まずはどこが着実なボトムライン(最低限の責任)なのか、明確に示すことが、信頼回復の第一歩と判断しました。今回の下方修正のタイミングにおいて、根拠の薄い夢のような数字を語ることは、投資家のみなさまの信頼をかえって損なうと考え、数字についてこのようなかたちで示しています。
ですから、この計画は、あくまで幅を持たせつつも、ボトムはしっかりと押さえ、上はどこまでも狙っていくというスタンスです。ここに記載している目標値に、3年後に到達することが目的ではありません。前倒しできるものは前倒しし、最短距離で突き抜けていくという意識を持って進めています。
質疑応答:M&A資金の調達方法について

司会者:「10億円強のM&A投資枠を設けたとのことですが、資金調達はどのような手法を考えていますか?」というご質問です。
米倉:2025年12月末時点でのネットキャッシュ、すなわち現預金から有利子負債を差し引いた額は約9億2,000万円となっています。また、自己資本比率は80パーセントと高い水準を維持しています。この盤石な財務体質を背景に、資金調達にあたっては資本コストを考慮し、まずは手元資金や融資、デットを優先したいと考えています。
これにより、1株当たり利益(EPS)の希薄化を抑制し、レバレッジを活用した成長を目指します。
一方で、ファイナンスの柔軟性という観点から、特定の調達手段を排除するわけではありません。ただし、増資などのエクイティファイナンスについては、投資案件の規模、成長シナリオ、市場環境を総合的に判断し、企業価値の向上が調達コストを明確に上回る場合にのみ慎重に検討する方針です。
いずれの手法においても、キャッシュフローの創出と利益成長を大前提とした規律ある投資を徹底します。
質疑応答:CVC投資の方針と現在の進捗について
司会者:「CVC投資についての具体的なアクション、すでに出ている効果について詳しく教えてください」というご質問です。
米倉:まず、このCVC投資の最大の目的ですが、AIソリューション戦略の圧倒的な加速にあります。変化の激しいAIの領域では、なによりもスピードが競争力の源泉そのものになるからです。
基本的な方針は2つあり、1つ目は、グローバルです。グローバルで圧倒的な競争力を発揮しているものの、日本ではまだ活用が浸透していない、特徴的で尖ったAIの実装です。2つ目は、国内でシード期にある有望なスタートアップと早期に協業体制を敷くことです。
有望なシード期のAIスタートアップと接点を増やしていくために、具体的なアクションとして、専門性を持つファンドへのLP出資を進めています。特にこの領域では、シード期の企業とのつながりが得にくいため、そうした取り組みを先行させています。
昨年6月には、ON&BOARD株式会社が運営するファンドへのLP出資を実施しました。その後、シードやアーリーステージのスタートアップ投資に強みを持つ株式会社ANOBAKAが運営するファンドへのLP出資を決定し、すでに協力体制に入っています。
これらを通じて、有望な企業やスタートアップとの接点を広げるとともに、特に当社データやソリューション、お客さまとの高いシナジーが見込まれる企業には、今後当社CVCから直接投資を実行していきます。
すでに成果としては、大手企業からの案件を受注しており、AIスタートアップ企業とともに取り組むサービス開発がすでに始まっています。
今後は、こうした提携やM&Aの情報発信と実績の積み重ねを通じて、当社が支援する小売業の莫大なリテール購買データとAIスタートアップが持つ技術に基づくインサイトを掛け合わせ、非連続的な成長を実現する強力なエコシステムを育成していきます。
このエコシステムを確立することで、より質の高い案件や技術がさらに集まり、エコシステム全体の事業成長につながる好循環を生み出していきたいと考えています。
質疑応答:販管費の見通しと今後の利益成長戦略について

司会者:「販管費について、経営、営業体制の強化により増加していますが、第4四半期以降もこの増加トレンドは継続するのでしょうか?」というご質問です。
米倉:第4四半期以降の販管費の推移および中長期的なコスト構造の考え方についてご説明します。
先行して進めてきた経営層や営業体制の採用強化に伴うコスト増は、第3四半期をもって一巡しました。第4四半期の販管費は第3四半期と同水準で着地する見込みであり、増加傾向は継続しない見通しです。
次期以降の戦略については、先ほど示したとおり、単なる人員拡大に頼らないスケールアップを目指します。新中期経営計画の達成に向けて、戦略的な人材投資は継続しますが、同時に売上の成長率が販管費の伸びを上回る収益構造と営業レバレッジの確立を徹底します。
以下の3つの施策により業務効率化を加速します。
まず1つ目は、パートナーエコシステムの活用です。自社リソースに加え、戦略提携先や卸売業などのデリバリーネットワークを最大限に活用し、販促コストを抑えた市場浸透を図ります。
2つ目は、ソリューションの型化による生産性向上です。個別のカスタマイズを抑え、再現性の高いパッケージ化されたAIソリューションを展開することで、導入や運用に関わる人的コストを削減します。
3つ目は、自社業務へのAI活用の徹底です。最新のAI技術を社内オペレーションにどんどん組み込み、バックオフィスから営業プロセスの自動化を推進しています。これにより、組織の筋肉質化を断行しています。
投資家のみなさまへのコミットメントとして、私たちは規模の拡大だけでなく、資本効率と利益率を重視した経営を推進しています。販管費の先行投資による体制構築は完了しつつあります。
ビジネスモデルのブラッシュアップに加えて、着手したAIエコシステム構築の原価側の投資については、今後半年ほどアクセルを踏み、一気に対応を進めるスケジュールで実行しています。
今期に続き、来期以降も売上成長を全社で20パーセントをベンチマークに加速しながら、必要な投資を行いつつ営業利益率を継続的に向上させます。そして、3年以内、もしくは1年でも早く営業利益率を10パーセント以上に引き上げ、高付加価値なサービスを効率的に提供することで、着実な利益成長を推進していきます。
これを足掛かりに、先ほどお話ししたとおり、さらなる積み上げや前倒しを全力で狙っていく所存です。
質疑応答:現在の組織体制における課題と社内カンパニー制移行の狙いについて

司会者:「中堅層への権限・責任の移譲を進めるため、社内カンパニー制へ移行するとのお話がありました。現在の機能別組織での課題と、移行で課題がどう解決するのか教えてください」というご質問です。
米倉:今回の組織変更の目的は、単なる組織図の刷新ではないということです。当社の強みであるデータプラットフォームを武器にしながら、新たに収益源を自ら創出できる経営人材を量産する仕組みを構築することを目指しています。
これまでの機能別組織は、営業、開発、財務といった専門性を高めるには有効でした。
一方で、変化の激しいデータビジネスでは、部門を横断した調整に時間を要することや、個々のビジネスリーダーが収益責任やキャッシュフローを自分ごととして捉えにくいといった課題がありました。
社内カンパニー制においては、3つの変革を意識しています。この移行により、中堅や若手を含むリーダーに権限と責任を大幅に移譲することで、以下の変革を実現したいと考えています。
1つ目は、意思決定の圧倒的なスピードアップです。各カンパニーが独立した経営主体として動くことで、現場主導による迅速な意思決定が可能になります。
2つ目は、経営視点の徹底です。年齢には関係なく、小規模な組織であってもビジネスリーダー自身がリソース配分や財務指標などに責任を持つことで、投資対効果を最大化するマインドを醸成していきます。
3つ目は、独自のアセットのマネタイズ加速です。日本最大級のID-POSデータや卸売パートナーとのデリバリー網などを活用し、それぞれのカンパニーがこれらを自由に組み合わせて、新事業の実証や展開を行える環境を整えるという内部の変革も進めています。
投資家のみなさまへのコミットメントとして、この新体制は、実務を通じて強力なサクセッションプラットフォーム、つまり後継者育成基盤として機能していくと考えています。
AIスタートアップのような機動力と、当社が保有する巨大なリテールデータを掛け合わせることで、次々と新しいビジネスチャンスを実現していきます。このプロセスを通じて、次世代の経営陣の層を厚く育成し、中長期的な企業価値向上に邁進していきます。これがこの組織の考え方の狙いです。
