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アイ・ピー・エス社に聞く!AI時代を支える海底ケーブルで拓く、利益100億円への道=石塚由奈

<フィリピンの成長とともに収益も拡大>

アイ・ピー・エス社は、フィリピンの通信ネットワークに投資を進め、同国のデジタル化需要を取り込んできました。
結果として、26年3月期は上場後8期連続での増収増益を達成するなど、収益拡大も続けています。

特に近年は、フィリピンでの通信・デジタル分野の制度改正が追い風となっています。
たとえば、外資規制を緩和した公共サービス法改正、通信事業への新規参入を簡素化するコネクタドン・ピノイ法の成立などです。
『国全体として通信インフラを強化していく』機運の高まりを強く実感しています」と川渕氏は話します。

コネクタドン・ピノイ法は、新規参入を簡素化する規制緩和であり、競争環境が激化するのではないかとも思います。
しかし、むしろ追い風の方が大きいといいます。
「新規参入する中小の通信会社は、自前のネットワークを持っておらず、既存の通信ネットワークに接続する必要があります。
そこで我々が、回線ネットワークの容量や通信機器を提供しています」

つまり、新規プレイヤーが増えれば増えるほど、その土台となる基幹インフラを握る同社への需要が拡大するのです。

2025年、国際海底ケーブル「Candle」建設への参画決定

フィリピンでコツコツと通信ネットワークや関係性を築いてきた、アイ・ピー・エス社。
その積み重ねは、大型プロジェクトへの参画にまでつながりました。

2025年、同社は日本・フィリピン・シンガポールなどを結ぶ全長約8,000kmの海底ケーブル「Candle」建設への参画を決定
Meta、ソフトバンクなどとコンソーシアムを組み、生成AIの普及で価値が高まる国際通信インフラを構築するプロジェクトです。
2028年3月の商用化に向けて、同社は過去最大となる約190億円の投資を行います。

4年前には、こんな事業をやるとは全く想像していませんでした。この4年で会社は大きく変わりました」と川渕氏は話します。

<フィリピンに築いた通信ネットワークが評価される>

Candle参画の話が具体化したのは3〜4年前。
コンソーシアム参加企業の一社から声がかかったことがきっかけでした。
通信事業者として築いてきた信頼性と実行力が評価されたといいます。

しかし、さらに重要な差別化要因があります。
それは、海外とつながる国際回線から、フィリピン国内に張り巡らせたネットワーク、そして両者をつなぐ拠点までを、すでに同社が押さえている点です。

▼同社が保有する通信インフラを見ていくと、その意味がよく分かります。

たとえば、同社はすでにフィリピンと香港・シンガポールを結ぶ国際海底ケーブル「C2C(City-to-City Cable System)」の使用権の一部を保有しています。

また、フィリピンの通信事業者2社と共同建設したフィリピン国内海底ケーブル「PDSCN」が2023年に完成しています。
このケーブルは、7,000もの島からなるフィリピンで、ルソン島・ビサヤ諸島・ミンダナオ島を結び、地方にも高品質な回線を届けています。

加えて、「陸揚局」も押さえつつあります。
陸揚局とは、海を渡ってきたデータを国内ネットワークに受け渡す拠点です。

▼ルソン島東岸(太平洋側)のBaler(バレル)に、Candleを含む最大4系統の国際海底ケーブルを接続できる陸揚局を、大成建設グループとともに自社で建設中。
2026年内の完成を目指しています。

あわせて、西岸のPoro Pointにも、フィリピンの政府系公社BCDAから賃借するかたちで陸揚局を確保しました。

さらに、法人向けインターネット接続サービスに利用する自社の光ファイバー網をマニラ首都圏に敷設済みです。

これらの資産とCandleを組み合わせれば、海底ケーブルから末端の利用者までを自社回線でつなげ、国際通信需要を取り込めると考え、事業への参画を決めたのです。

<アイ・ピー・エス社はCandleで何を得るのか>

では、「Candle」プロジェクトで同社は具体的にどんな役割を担い、何を手にするのでしょうか。

Candleのコンソーシアム(共同事業体)には、Meta Platforms、ソフトバンク、マレーシアのTM Technology Services、インドネシアのPT XLSmart Telecomといった企業が名を連ねています。
この海底ケーブルを共同で建設し、それぞれが容量を分け合って所有する仕組みです。

海底ケーブルは、太い1本の管のように見えて、その中には光ファイバー(データを光で運ぶ細い線)が何本も束ねられています。
この光ファイバーは、行きと帰りの2本1組で使うのが基本で、この1組を業界では「ファイバーペア」と呼びます。

同社が取得するのは、ケーブルの本線にあたる部分の3組(3ファイバーペア)と、そこから各国へ枝分かれする支線の一部です。

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この取得分について、同社は容量を顧客に貸し出して対価を得ます。
さらに、容量を販売した後も、その回線を安定して使い続けられるよう保守・点検する役割を同社が担い、その対価を受け取り続けます。

<Candleは地政学リスクの高い「九段線」を通らない>

この容量の販売について、「引き合いの手応えは高い水準」とのこと。
AI普及で国際通信の需要が高まっているのはもちろん、地政学的な理由でCandleの「ルート」に関心を示す企業が多いといいます。

これまで、アジアの国々を結ぶ海底ケーブルの多くは、フィリピンの西側を通っていました。
しかし西側は、南シナ海の「九段線」(中国が領有権を主張する海域)に思い切りかかるエリアです。

「仮にそこでケーブルが切られたりすると、修理が非常に大変です。
ルソン島と台湾の間を通る海底ケーブルは、地政学的にリスクが高いと見られています」と川渕氏は話します。

これに対してCandleは、フィリピンの東側(太平洋側)を通るルートを採用。
台湾有事のような事態が起きても、その影響を受けにくいのです。

Next: 営業利益100億円を掲げるアイ・ピー・エス、Candle参画でどうなる?

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