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米国の北朝鮮攻撃は期待薄?トランプのシナリオに翻弄される日本=近藤駿介

「世界の警察官」に戻るつもりはない

こうした区別は、端的に言えば「核実験と大きなミサイル発射」は米国に対する直接的脅威になるのに対して、「小さなミサイルの発射」は東アジアの危機に留まるからである。

こうした判断基準は、「America First(アメリカ第一)」を掲げるトランプ大統領にとっては当然のものだといえる。

トランプ大統領の一連の北朝鮮政策について、専門家の間からは「世界の警察官」に戻ろうとしているという指摘も挙がっているが、それは既存の政治的発想に基づいたもので、「ビジネスマン大統領」に対しては的外れな指摘といえる。

見落としてはならないのは、「ビジネスマン大統領」の目には北朝鮮問題に伴う東アジアの危機は利用価値のあるものに映っている可能性があることである。

「韓国へのTHAAD配備」という伏線回収

北朝鮮問題の緊張感が高まったことで、4月末に韓国にTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)が配備された。

この一基10億ドル(約1,100億円)するTHAADを製造しているのは、トランプ大統領就任直後にステルス戦闘機F35の価格を6億ドル(約660億円)引下げることを受け入れたロッキード・マーチンである。

THAADの韓国配備自体は、大統領選挙期間中の2016年7月に米韓で正式合意されていたものである。ただし、早ければ4月にも配備されることになっていたが、中国の強い反発などもあり予定通り配備できるかは定かではない状況にあった。

しかし、4月になって北朝鮮問題の緊張度が一段と増したことに加え、トランプ大統領が中国に「為替操作国」認定を当面見送るというアメをしゃぶらせ、北朝鮮説得という無理難題の責任を負わせることで、予定通りTHAADを配備できる環境が整ったのである。

ステルス戦闘機F35の値下げと1800人の新規雇用を約束し、トランプ大統領の圧力に屈服したと見られていたロッキード・マーチンだが、裏ではTHAADを予定通り韓国に配備するという実利を得たのである。

これを偶然とみるか、一連のディール(取引)とみるかで、トランプ大統領の戦略に対する評価は180度変わってくることになる。

最高の「お客さん」は日本

さらに、北朝鮮問題の緊迫化によって、日本でもTHAAD配備の機運が高まってきている。

トランプ大統領が正式就任する直前の1月には、稲田防衛相がグアムの米軍基地を訪問してTHAADの視察を行い、「THAAD導入の具体的な計画はないが、1つの選択肢として何が可能か検討したい」とTHAAD導入に前向きの発言している。

そして翌2月には自民党内に、THAAD導入を含む「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」が立ち上げられている。

日本がTHAAD配備を前向きに検討するようになったのは、北朝鮮がミサイル実験を続けているからである。つまり、北朝鮮が「小さなミサイルの発射」を繰り返す状況が続けば、日本国内でTHAAD導入機運が高まる構図になっているのである。

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