成長性は限定的で割安感なし
先に上場したJR3社は上場以降業績を向上させてきましたが、いずれも高い経済力を背景とした駅ビルの開発余地があり、同時に国鉄の負の遺産である債務の削減効果があって達成されました。
また、JR東海は東海道新幹線という圧倒的なドル箱路線を持っていたことが株価を4倍以上に押し上げる原動力となりました。一方、九州の鉄道にそれほどの力はなく、抱えている多くの路線は赤字です。
今期の予想利益から想定されるJR九州のPERは10.9倍と、JR西日本とほぼ同じ水準です。配当性向は30%を目標としていますが、今期は上場からの期間が短いということでその半分に抑えるとしています。成長性や強みを考えても、決して割安と呼べる水準ではありません。
PER | 配当利回り | |
---|---|---|
JR九州 | 10.9倍 | 1.44% |
JR東日本 | 13.6倍 | 1.41% |
JR西日本 | 11.7倍 | 2.17% |
JR東海 | 9.4倍 | 0.75% |
会社の規模が大きいので、初値やその後の株価の動きは多くのIPO銘柄とは異なり大きく動く可能性は低いでしょう。上場するからといって、慌てて購入する銘柄ではありません。
もちろん豪華列車の「ななつ星in九州」など革新的な取り組みをしていて、将来がおもしろい会社でもあります。じっくり観察し、割安になったタイミングを見極めるには一考の価値があるでしょう。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年10月22日)
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。