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それは本当に「追加緩和」か? バイアス相場で高まる政治リスク=斎藤満

期待や先入観はECB(欧州中銀)の政策にも

最近では、ECB(欧州中銀)が現状維持を決めた一方、12月の理事会で「検証」するとしたことに対して、市場やメディアは「12月に追加緩和を示唆」と捉えました。ドラギ総裁の会見では「買い入れ国債の不足にどう対処するかに多くの時間を割いて議論した」と言っています。

つまり、ECBでは、このままでは買い入れ策を続けられなくなるとの認識があり、かといって突然買い入れ策を終了するのもまずい、と悩んでいます。緩和策の限界にどう対処するかの方策として、「突然」ではなく、徐々に買い入れを縮小する道を考えている節があります。それでも市場やメディアは「次は追加緩和」との期待や先入観があり、ユーロが低下しました。

長期間金融緩和が続き、それでも物価目標が見えないために、市場は「さらなる緩和が必要」と考え、当局は「そろそろ限界、見直し」の機運になっています。当局がというより、実際はG30など、国際金融資本が「このままではうまくない」と見始めたことが、当局の動きに反映され始めたと考えられます。しかしこれらは自明ではないだけに、市場と当局との間にズレが生じます。

裏を返せば、実態以上に債券も株も「追加緩和」を期待して買われ過ぎている面があり、風船がパンパンに膨らんでいる節があります。その期待は叶えられない可能性が強く、当局者が「修正」の発言をすると、破裂するリスクがあります。

政治発言で相場が動く場面が増加

実際には、直接金融当局の発言とならなくても、政治発言で相場が動く場面が多くなりました。

例えば、米国ではサンダース上院議員がツイッターで某製薬会社が「異常に価格を吊り上げ、利益をむさぼっている」とつぶやくと、その製薬会社の株価が15%近く急落する場面も見られました。トランプ候補も「FRBはオバマ政権のために、あえて低金利で問題を隠している」と言い、様々な問題暴露をしています。

ウィキリークスに限らず、ネット社会では情報の隠ぺいが難しくなり、政治的に隠していたことが露呈しやすくなっています。地方議員の金銭スキャンダルはほんの一例にすぎません。東京五輪、築地市場の移転、原発再開と、政治的に動きそうな問題が山積し、そこに多くの利権が絡んでいます。情報暴露での、関連企業の株価急落リスクも考えねばなりません。

日銀の政策でも、今後「テーパリング」「外債購入」「ヘリマネ」など、隠蔽された爆弾が露呈し、爆発するリスクも少なくありません。相場にバイアスが大きくなればなるほど、こうした政治発言で相場が動くリスクも大きくなります。


※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2016年10月24日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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マンさんの経済あらかると』(2016年10月24日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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