野党・官僚など「反朴槿恵派の勢力」が得をする
次に黒幕として考えられるのは、野党・官僚などの「反対勢力」。彼らが朴槿恵大統領の大スキャンダルを暴いたという説だ。私はさらに、与党の議員も1枚噛んでいるのではないかと考えている。そもそも、崔順実氏は公然と「宮廷」に出入りしていたという。つまり、関係者ならこのことを知っていたことになる。
検察も、例の産経新聞・前ソウル局長の加藤氏が韓国で逮捕されたときに、崔順実氏の親子について執拗に加藤氏へ質問していたようだ。加藤氏はこの時、自分が朴槿恵政権最大のタブーに突っ込んでいたことを察したらしい。そして、韓国メディアがセウォル号惨事の「空白の7時間」を探ろうとすればどうなるのかを示すため、加藤氏は生け贄」に選ばれたのだ。今まで黙っていたのは、身の危険を感じていたからだろう。
ここまでの情報が出てきたわけだが、一体どこまでグルだったのか。検察、官僚、政府役人、財閥企業などは、崔順実氏が君臨していたことを知っていた可能性が非常に高い。そして、今回は廃棄されたはずのパソコンが偶然見つかって、韓国のマスコミがそのデータを入手できたところを見れば、反朴槿恵派の「官僚」が仕掛け人だという気がしてくる。私は官僚説を推したい。
上納金を納めない「韓国財閥」の逆襲であるという説も
崔順実氏は「Kスポーツ財団」というものを運営している。過去、崔順実氏の所有する企業が平昌五輪のスタジアム工事を受注しようとしたところ、当時の平昌五輪組織委員長だった韓進グループの趙会長が拒否。さらに組織委員会がこの財団への10億ウォンの支出も拒否したことで、趙会長が突然に辞任させられたことがわかっている。そしてこの一連のできごとが、例の韓進海運が政府支援3000億ウォンを要請したときに、政府が支援を拒否した理由となっている。そうして、韓進海運は法定管理となり、あの物流混乱が起きたのだ。
一方、大宇造船海洋には手厚い支援をするという。つまり、崔順実氏に逆らう財閥企業への見せしめとなっていたようだ。「逆らうと政府支援は受けられない。上納金を納めよ」という。仮にこれが真実なら、朴槿恵大統領の「(韓進海運は)自助努力が足りない」という言葉は、まさに「上納金が足らないから、韓進海運は潰す」である。そして、韓進海運の主要なルートは、全て売られることになった。
ひどいというレベルではない。もしこういうことがまかり通っていたのなら、相当、恨まれているわけだ。
韓国メディアがこの事件を執拗に報道するのは、サムスン電子「爆弾スマホ」のイメージ風化が目的だと私は睨んでいたのだが、もしかすると「財閥による復讐劇」という可能性も浮上してくる。恨みのある崔順実氏と朴槿恵政権を潰す絶好のネタ。それはあまりにも強力な核爆弾だった。発覚後、25%あった支持率がわずか10日で5%まで落ちたのだ。