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不倫ネタ好きワイドショー脳の日本人が知らない「政治の本質とは何か?」=小浜逸郎

政治家の資質は「道徳だけ」ではない

ちなみにこういう国民性を戦後になって助長させた「大物」がいます。立花隆氏です。

彼は、田中金脈問題を執拗に追跡し、盛名を馳せましたが、その膨大な仕事の中で、田中角栄の優れた政治的手腕(特に通産大臣時代の)に触れたことは、ただの1度もありませんでした。

しかしもはや近代百五十年、至誠や清廉潔白などを政治家評価の中心に置くような時代ではありません。複雑多様化したこの先進社会を維持発展させていくために、幅広い知識情報にもとづく的確な処理能力と優れた政治手腕とを結集させることこそが問われているのです。また修羅場である国際社会に向けては、マキャヴェッリ的な巧智がぜひとも必要とされます。

もちろん、道徳は大切ですし、ことに一般人に比べて公人にはそれが厳しく求められることは論を俟ちません。しかしそれは、あくまでも政治家としての資格要件の1つであって、政治家という職能の本質要件ではありません

政治家の職能の本質は、錯綜した社会問題をいかに調整し、国民最大多数の最大幸福をいかに実現するかに求められます。

日本人の多くがこのことに気づかず、いつまでも道徳的判断だけをよりどころにスキャンダル合戦を繰り広げ、政治家降ろしにうつつを抜かしていると、わが国は内憂外患の増大によって確実に亡びの道を歩むでしょう。

言うまでもなく、日本はいま、北朝鮮の核保有問題や中国の不当な圧力の問題など、安全保障にかかわる喫緊の課題を抱えています。しかし、日本独自の積極的な国防策は動き出す気配がありません。

また、この数年間、安倍政権の下で、消費増税、電力自由化、労働者派遣法改悪、農協法改悪、TPP批准、無原則な移民受け入れ、みなし残業手当廃止、種子法廃止など、国民のためにならない悪政が、大した議論もなく次々と押し進められてきました。

デフレ脱却のための有効策はちゃんとあるのに、財務省の「緊縮真理教」がこれをずっと阻み続けています。「パンとサーカス」を求める大衆のどさくさにまぎれて、これらの悪政や政治的不作為が現にまかり通っているのです。

かつて福沢諭吉は繰り返し言いました。愚かな政府は愚民によって支えられると。私たちが世界から愚民国家の住人と嘲笑されないためにも、政治の王道を外したくだらない「政治家降ろしの風潮」から一刻も早く脱却しましょう。

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年9月14日号(政治の本質とは何か──山尾議員疑惑に寄せて)より

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