「売れない、増えない、配当がない」の三重苦
ゴールドの価値は永遠だ。ゴールドは信用できる。途上国の人々は、いつ吹き飛ぶのか分からない自国の通貨よりもゴールド・プラチナ・ダイヤモンドのような「現物資産」を好む。
自国通貨の価値が崩壊しても、ゴールドは外国では通常価値で取引できるのが保証されているので心強い資産である。その点は間違いない。
しかし、現代の資本主義の中でゴールドを持つのは、必ずしも得策ではない。
ゴールドは配当を生み出さない。長く所有していたとしても増えることもない。ゴールド自体は、勝手に1オンス重くなったりしない。
もちろん、インフレヘッジくらいはする。だから、紙幣や小銭をタンス預金するよりは絶対にマシだが、インフレヘッジ以上の存在にはならない。
現物信者が信じる「金本位制」の再臨はない
もし、ゴールドがインフレヘッジ以外に現状維持以上の価値を生み出すとすれば、金本位制が復活する時だ。ゴールドがすべての経済価値を表すのであれば、ゴールドの所有は意味がある。
しかし、結論から言うと金本位制の復活はない。
所有するゴールドの量だけしか通貨が発行できないのであれば、不景気になっても中央銀行は紙幣をばらまいて景気を浮揚させるという手が打てない。それで貿易赤字になったらゴールドがどんどん流出してしまう。
1ヵ国だけが金本位制にしてしまっても同じ現象が発生する。なぜなら、金本位制にした国は通貨発行量が決まっているので、その国の通貨はあっと言う間に高くなるからだ。
すると輸出が絶対的に不利になって不景気が訪れ、貿易赤字が発生する。そしてゴールドが流出していく。
ゴールドの流出を政府が止めたら、金本位制はあっと言う間に破綻する。しかし、貴重なゴールドの流出を守るために、政府はそうするしかない。
金本位制は資本主義を維持できない。だから金本位制の復活はない。ゴールドは、インフレヘッジか宝飾品として楽しむくらいが限度である。