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富裕層がこぞって使う「税逃れ」の実態。これでは日本の貧富の差は埋まらない=大村大次郎

ちょっと気の毒なEXILE事務所の課税漏れ

最近、EXILEの所属事務所の課税漏れがニュースで報じられました。

このニュースについて、解説したいと思います。まずは以下の産経新聞の記事を読んでください。

人気ダンス&ボーカルグループ「EXILE」が所属する芸能事務所「LDH JAPAN」(東京都目黒区)が、昨年3月期までの4年間で総額約3億円の申告漏れを東京国税局から指摘されていたことが5日、関係者への取材で分かった。同社はすでに修正申告を行い、追徴課税された過少申告加算税を含む法人税約6千万円をすでに納付しているという。

出典:「EXILE」所属事務所が3億申告漏れ 「意図的行為一切ない」 – 産経新聞(2018年7月5日配信)

著者による解説

このEXILE事務所である「LDH JAPAN」は、週刊誌などでパワハラ疑惑などが報じられたこともあり、今回の課税漏れを見て、「やっぱり、LDHはブラックなのか」と思われた方も多いと思われます。

が、この課税漏れの件を見る限りでは、「ごく普通の課税漏れ」という感じです。というより、若干、気の毒な部分さえあります。

今回のニュースでは、「仮装隠蔽」などがあったとは報じられていません。課税漏れニュースの場合、仮装隠蔽があったかどうかが重要なカギになります。仮装隠蔽というのは、「架空の経費を計上したり、「売上の一部を隠す」ようなことをすることです。

つまりは、税逃れのための工作をするということです。この仮装隠蔽があれば、重加算税が課せられます。そして、その額が大きければ、脱税として起訴されることになります。

今回は、重加算税も課せられていませんので、仮装隠蔽はなかったと思われます。つまりは、不正ではなく、経理処理の誤りだったということです。

また今回のニュースでは、「飲食費や業務委託費が経費には当たらなかった」という言い方をされています。この「経費には当たらない」という言い方は、一般の人には、少しわかりにくいと思われます。

会社の税金の計算の上では、経費として支出したものでも、税法上経費にできないものがあります。

たとえば、接待交際費です。

現在、接待交際費は、原則として50%しか経費に計上できません。もし、1億円の接待交際費を使っていたとしても、5千万円しか経費に計上できないのです。では、経費に計上できなかった残りの5千万円は、どうするのでしょうか? 会社の利益に上乗せするのです。接待交際費を1億円出しているのに、経費にできるのは5千万円だけであり、残りの5千万円は、会社の利益に加算しなければならないのです。実際は接待交際費として会社の外に出ているわけであり、会社の利益にはなっていないのに、です。

おそらく、LDHは、取引先などとの飲食費を「会議費」などの名目で経費にしていたものと思われます。また業務委託費も同様のものと思われます。海外関連会社の人に対して、飲食などの接待をし、それが業務委託費の一部として計上していたのでしょう。それを国税側が「それは、接待交際費なので経費にできません」と指摘したものと思われます。

EXILEのような、ライブ・パフォーマンスを主としている芸能人は、ライブが多数あるわけで、当然、打ち上げのようなことも頻繁に行われているはずです。打ち上げの費用は、会社が持つことが多いはずですが、この費用は半分しか経費にできないわけです。

これは少々気の毒と言えなくもありません。打ち上げの費用は、会社から出て行っているわけですからね。それを利益に加算するのは、ちょっと酷かなと。

そもそも、以前の法人税法では、接待交際費は経費にできていたのです。ですが、バブル期に、景気のいい会社があまりに派手に接待交際をしまくったので、世間の批判を浴びました。それを見た税務当局は、接待交際費は会社の経費にできず、利益に加算することにしたのです。

この「接待交際費を経費にできなくしたこと」が、バブル崩壊後の日本経済低迷の原因の一つとも言われています。企業の財布のひもが固くなりましたからね。いずれにしろ、会社の業務として支出しているにもかかわらず、それを全額、経費にできないというのは、いびつな税制ではないか、と筆者は思います。

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大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』(2018年7月15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授。「正しい税務調査の受け方」や「最新の税金情報」なども掲載。主の著書「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)

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