私はロヒンギャ問題が大きく注目されたミャンマーを6月末に訪れた。この問題の解決には100年以上かかるのではないかという複雑さを、今回さらに確信した。(『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』房広治)
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アメリカ、イギリス、香港など主要金融センターで著名な日本人投資家。留学中に外資系銀行に就職し、わずか10年で日本のインベストメントバンキングのトップに。投資家転向初年度に年率リターン90%以上の運用成績を出し、ファンドマネジャー・オブ・ザ・イヤーとなる。
ミャンマー訪問で確信。ノーベル平和賞授賞者でも解決は不可能
本人たちは世界からどう見られているか認識できない
不法移民の親と子を分けるトランプ大統領の政策が完全に裏目にでて、共和党のこれまで黙っていた下院議長を含めた議員や州知事がトランプ批判を始め、この政策をひっこめた。
トランプ大統領が人種差別主義なのは、誰の目にも明らかと思うのだが、Fox News は大統領寄りの報道をし続けている。不思議なことに、かなりのアメリカ人は、我々が外から観察できるアメリカを認識できないのだ。
私がミャンマー訪問で確信したこと
そんななか私は、ミャンマーを6月25日から3日間訪問した。
昨年、ミャンマー側の国境でのロヒンギャ問題が世界の注目を集めた。アウンサンスーチー政権になっても、結局、何も進展がないという批判続出で、政権を取るまでサポートをしていたオックスフォードが、アウンサンスーチーに対するサポートを取り下げてしまったりもした。
この問題の解決には100年以上かかるのではないかという、複雑さを、今回さらに確信した。
アウンサンスーチー氏も、軍と警察をコントロールできない
まずは、ミャンマーの軍と政府との関係。
軍は、政府の下にあるはずだと思われているが、これが、はっきりしない。はっきりしないというのは、軍は、軍の好きなようにふるまっている部分が残っている。そして、警察は、軍の指揮下にある。
要は、アウンサンスーチーは軍をコントロールしておらず、ロヒンギャ問題を複雑化している。
暴行事件が「宗教戦争」に仕立て上げられた
ことの発端は、2012年にイスラム系の住人の若者が、現地の少女を暴行したうえ殺してしまったことに起因する。
ばかげたことに、当時の国連の調査部隊は、これを宗教的なコンフリクトと発表してしまった。
仏教徒が宗教的な理由で人を殺すことはないという、基本的な知識がなかった国連の調査団長は、自分の出世のため、実際の何が起こったというよりも、これを大ごとにしてしまったのだろう。
これは、まさにイギリスがビクトリア時代に世界を征服するのに使った方法であり、現地人たちも「これは宗教戦争だ」という風になってしまった。
結果、元々のイスラム系住民でない、イスラムの過激派が介入し、その地区の警察署を襲撃した。
その襲撃の反撃のため、見せしめとして、軍が多くのロヒンギャをバングラデッシュに難民として返した。これが、YouTubeなどでご覧いただける悲惨な状況につながったのである。
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