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S&Pの日本格下げは「消費税2%還付案」への痛烈なダメ出しだ=矢口新

米格付け会社のS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)は9月16日、日本国債の長期ソブリン格付けをAA-からA+に、短期格付けをA-1+からA-1に、それぞれ1段階格下げしました。同社による日本格下げは約4年8ヶ月ぶり。

これに関して元為替ディーラーの矢口新氏は、「安倍政権の経済政策は過去から近未来まで、アベノミクスも消費増税も完全にダメ出しされた格好だ」としたうえで、「日本経済を本気で再生したいなら消費税率は3%以下に引き下げるしかない」と提言しています。

日本経済を本気で再生したいなら消費税率は3%以下しかない

一夜にして韓国の後塵を拝した日本の格付け

S&Pは9月16日に、日本国債の長期ソブリン格付けをAA-からA+に、短期格付けをA-1+からA-1に、それぞれ1段階格下げした。

格下げに伴うコメントでS&Pは、政府の借金弁済能力を支える日本経済が過去3~4年間、引き続き弱体化し続けていると付け加えた。日本政府による景気回復およびデフレを終了させる政策では、向こう2~3年は悪化を食い止めることができそうにないとした。

参照:Standard & Poor’s downgrades Japan from AA- to A+

「日本経済は過去3~4年間、引き続き弱体化し続けていて、向こう2~3年は悪化を食い止めることができそうにない」となれば、安倍政権の経済政策は過去から近未来まで、アベノミクスも消費増税も、完全にダメ出しされた格好だ

S&Pは15日に韓国の格付けをA+からAA-に引き上げていたので、一夜にして、日韓政府の借金弁済能力順位が入れ替わった。

主要国の国債格付け(S&P)
AAA イギリス、ドイツ、カナダ、豪州
AA+ アメリカ
AA フランス
AA- 中国、韓国
A+ 日本、アイルランド
BBB スペイン
BBB- イタリア
BB ポルトガル
CCC+ ギリシャ

日本政府・官僚に対するS&Pの「ダメ出し」が当然である理由

先日、安倍首相は、2017年4月の消費税率10%への引き上げを予定通りに行うと言明した。財務省は即座に引き上げ後の税還付案を発表したが、内容に疑問が続出したため、いったん撤回した。

しかし還付するくらいなら、引き上げ率を縮小するか、引き上げ法案そのものを廃案にする。あるいは、消費マインド上昇、景気のテコ入れ、デフレ対策として消費税率の引き下げを検討してもいいようなものだが、税率は引き上げて、その分、還付するという。

これは要するに、税収額そのものはニュートラルに近付いても、資金配分の裁量権だけを政府が大きくしようとするものだ。過去の様々な政府の政策、公共投資などと同様に、政府あるいはエリート官僚に任せていれば日本経済は大丈夫で、財政再建も成るという発想だ。S&Pはここにダメ出しした。

当然だろう。もし日本の政治家や経済官僚が、自分たちが思っているように優秀ならば、ここまで日本の財政が悪化し政府債務が膨張することはない。優秀でないとは言い過ぎかもしれない。大きな裁量権には必ずといってよいほど癒着の構造が伴い、自分たちはより潤うからだ。

日本経済の最大のエンジンは、GDP消費の約6割を占める個人消費だ。政府はこれを米国並みの約7割に高めたいとしている。

日本経済が元気で税収も大きかったのは、消費税率が3%だった頃までだ。5%への増税で、消費税収こそ安定して少しずつ伸びたが、所得税収、法人税収は激減した。100兆円の消費が税金で天引きされ、97兆円から95兆円の売り上げとなったために、経済が回らなくなったのだ。結果的に税収そのものが減り、財政は悪化し続けている

日本経済を本気で再生したいなら、幕末の武士たちではないが、自分たちの既得権を犠牲にしてでも政府・官庁は裁量権を小さくするべきかと思う。消費税率は3%以下に引き下げるしかないと思うのだが。

相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2015年9月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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