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FRBが利上げを躊躇するワケ。いま新興国で何が起こっているのか?

いつ債務危機が起きてもおかしくないブラジル、ウクライナ、コロンビア

もう1つは、新興国企業(金融機関を除く)の債務が急増したことです。

新興国企業の債務は23.7兆ドルにのぼり、この10年で5倍以上になり、最近5年間では、GDPに対する債務の割合が30%も高まりました。

この債務増を後押ししたのがFRBや日銀による大規模な金融緩和です。これがすでに企業や新興国経済に逆風となり始めています。

新興国の債務増の中では、ドル建てや円建て債務の拡大が大きいと言われます。すでにドル高、新興国通貨安が進んでいるところへFRBが利上げに出れば、彼らの債務負担はかなり重くなります。

中でも、ブラジル、ウクライナ、コロンビアの通貨は、「危機ライン」とされる25%を超えて下落しています。いつ債務危機が起きてもおかしくありません

ブラジルレアル/円 週足(SBI証券提供)

ブラジルレアル/円 週足(SBI証券提供)

しかも中国が8月に人民元の切り下げを実施しましたが、これを機に、新興国からの資金流出が加速したと言います。中国は資本規制を行っていますが、中国からの資金流出は止まらないようです。

日米など主要国による大規模な金融緩和が長年続いた分、新興市場や資産市場に流入したマネーも巨大になっています。そのカネの流れが、少なくとも新興市場については、ついに逆流を始めました。

流入が大きかった分、潜在的な流出額も大きくなります。FRBが利上げをすれば、その流れがより強まると見られます。

先進国でも資産価格に下げ圧力、利上げへのハードル一段と高く

この逆流現象、新興国だけの問題ではありません。先進国の資産市場にも大量のマネーが流入していて、それが収縮しはじめた兆しが米国に見られます

総債務(総資産)/GDP比率の上昇トレンドが終わり、このところ低下を始めたからです。これは資産の期待収益率低下によるもので、恐らく、米国に限らず、世界規模で生じるものと考えられます。

そしてここでもFRBの利上げがトリガーになって世界の資産価格に下げ圧力を強めることになります。

IMFが米国の利上げに神経質になっているのは、こうした事情があるためで、新興国の経済打撃に留まらず、先進市場の資産価格、つまり株や債券価格にも下げ圧力が強まります

FRBにとって、利上げへのハードルはかなり高くなっています。

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マンさんの経済あらかると』(2015年10月5日号)より一部抜粋
※チャートと太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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