トランプが北に譲歩するワケ
米国議会やボルトン補佐官、ポンペイオ国務長官などは北から具体的な「進展」を引き出したいところですが、北朝鮮の事情からすればこれにも限度があり、北は米国の経済制裁解除、経済支援との交換条件で、駒を1つずつ出してゆく作戦にならざるを得ません。
そこでトランプ大統領は、国内の強硬派を抑え、一歩でも前進すれば「米国がICBMに脅かされることはない」などの成果を強調したいはずです。
そこまでしてトランプ氏が北に譲歩する背景には、北朝鮮に大量に存在するウランやレアメタルを米国が利用できるよう、北朝鮮を親米政権に仕向けたいことがあります。
その点、南の韓国よりも北の金委員長のほうが信用できる、との思いもあるようです。ブッシュ政権時の「悪の枢軸」の1つとは様変わりになりました。
日韓との電話連絡の意味
この首脳会談を前に、トランプ大統領は韓国の文大統領と日本の安倍総理と電話会談を行いました。
まず、韓国の文大統領からは、南北融和を一層進めるために、北への経済支援を進めたい旨の申し入れがありました。これに対し、トランプ大統領からは、北の核廃棄は段階的にしか進まない状況を説明し、そこでは制裁解除や経済支援は限定的となるとして、韓国の出方を牽制したと見られます。
その一方で、韓国政府は在韓米軍の駐留を望んでいて、昨年もその駐留経費の増額に応じました。この意向を受けて、トランプ大統領からは、今回の米朝会談では在韓米軍の縮小、撤退については取り上げないとして、韓国政府を安心させたようです。韓国内には、北がもはや敵でないならば、徴兵制は廃止すべき、との声が高まっています。在韓米軍縮小となれば、この徴兵制廃止機運を高める面がありました。
次にトランプ大統領は日本の安倍総理と電話会談を行いました。30分の会談は、通訳を交えてのもので、実質15分というものだったようです。そこで日本サイドからは、拉致問題への協力依頼と、北への強硬姿勢堅持を求めたと見られ、これに対し、トランプ大統領からは、拉致問題を話題に取り上げるとともに、非核化が進むまでは制裁解除は行わない趣旨の話があったと見られます。