ベネズエラが大混乱に陥っている。マドゥロ政権の失策によるハイパーインフレ・失業者急増で国民の抗議と反発が全国に拡大。トランプ政権がクーデターを裏で手引きしているという見方もあるが、それも含めて日本では報道されない実情について解説したい。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2019年2月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
トランプ政権が政変をしかけた?制裁や圧力では説明がつかない…
政府への抗議運動が拡大、暫定大統領を立てる事態に
いま南米のベネズエラが混乱のさなかにある。
前チャペス政権の社会主義的な理念を引き継ぐマドゥロ政権の政策が失敗し、100万パーセントを越えるハイパーインフレ、35パーセントの失業率、そしてマイナス18パーセントのGDPという状況になり、マドゥロ政権に対する国民の抗議と反発が全国に拡大しつつある。
すでに150万もの国民が、ベネズエラを捨て、隣国コロンビア経由で脱出した。その多くはアメリカに向かっている。
1月23日、こうした状況を受け、35歳の若いグアイド国会議長が暫定大統領就任を宣言した。ホアン・グアイドは、一刻も早い事態の収拾を約束している。
一方マドゥロ大統領は、このようなグアイドの動きに強く反発し、軍を動員し抗議運動の弾圧を開始した。しかし、多くの国民はこれに反発し、抗議運動は一層拡大している。そして、マドゥロ政権の基盤である軍内部からも、グアイドを暫定大統領として支持する幹部の離反があり、混乱が深まっている。
また2月4日、イギリス、フランス、ドイツ、スペインの各国政府は、マドゥロ大統領に代わり、反体制派のグアイド国会議長を暫定的な大統領として承認すると表明した。そして、これまでマドゥロ政権が拒否していた人道支援物資の早急な支援を約束した。
ベネズエラ経済混乱の基本的な原因
これがいまの状況だ。マドゥロ大統領がグアイド暫定大統領に抵抗し、自主的な退任を最後まで拒否する場合、ベネズエラでは内戦が始まる可能性も指摘されている。
グアイドを暫定大統領としていち早く支持した米トランプ政権のボルトン安全保障担当補佐官は、記者会見でコロンビアに5,000名規模の米軍を送るとのメモを見せた。またトランプ大統領も、ベネズエラに関してはあらゆるオプションを排除しないとし、必要とあれば軍事介入する可能性も示唆した。状況はかなり緊張している。
しかし、なぜベネズエラの状況がこれほど混乱しているのか、その詳しい原因は日本ではあまり報道されていない。原油価格の下落、及び社会主義的な前チャベス政権から引き継いだ貧困層へのバラマキが原因で、こうした混乱した状況になっているとだけ、日本の主要メディアでは説明されている。
また、ネットの陰謀論系サイトやチャンネルでは、ベネズエラの混乱の原因を、反米的なマドゥロ政権を打倒し体制転換するためのアメリカの工作にあるとし、これを影で実行しているトランプ政権を非難している。
体制転換の目的は、サウジアラビアを越える世界最大の埋蔵量を持つベネズエラの石油を独占的に支配することであるとしている。