fbpx

日本では報道されない南米ベネズエラの惨状、100万%超えのインフレで国民150万人が脱出へ=高島康司

原油支配のために政変をしかけたのか?

一方、トランプ政権のネオコン強行派、ボルトン安全保障担当補佐官は、「もし、アメリカの会社がベネズエラに埋蔵されている石油に投資し、生産できるようになれば、アメリカ経済にとって大きな違いを生み出す」とフォックスニュースのインタビューで発言し、トランプ政権はベネズエラの原油生産の支配に関心があることを匂わせた

しかし、ベネズエラから産出される品質の悪い「超重質原油」の精製には、岩石から原油を抽出しなければならないシェールオイルと同じくらいのコストがかかる。前述の通り、精製施設が未整備のベネズエラが「超重質原油」を輸出するためには、ナフサや軽質原油で希釈しなければならなかった。製品化するために精製するには、莫大なコストがかかり、原油価格が1バーレル、50ドル前後という現在の相場では、利益を出すのが困難だ。

またベネズエラのクーデターが成功し、トランプ政権が支持するグアイド政権が成立したとしても、アメリカの石油資本が「国営石油会社(PDVSA)」を支配し、長い国有化の期間に劣化してしまった施設をフルに稼働するためには、相当な投資が必要になる。原油価格が低迷し、米国内のシェールオイル産業からの撤退が相次いでいるいまの状況で、品質の悪い「超重質原油」の産出に米石油資本が積極的に投資をするとは思えない。

また、ベネズエラの原油支配がアメリカがマドゥロ政権の排除を画策する理由であるなら、なぜいまそれを仕掛けるのか理由がよく分からない。チャベス政権が石油産業の国有化に踏み切った2007年にも仕掛けていてもよかったはずだ。原油相場が高止まりしていた当時でさえ、オバマ政権はこれを行わなかった。

このような状況を見ると、今回のクーデターの背後にトランプ政権による、ベネズエラの原油支配という動機があるとは考えにくい

ホアン・グアイドという人物の背後関係

しかし、いまの政変にアメリカが関与していないかといえばそうではない。「ハフィントンポスト」などへの寄稿でよく知られる著名な調査ジャーナリスト、マックス・ブルーメンソールの調査から、ホアン・グアイド国会議長の背後関係が明らかになっている。

ブルーメンソールの記事によると、グアイドはベネズエラのベロ・カトリック大学で機械工学を専攻後、ワシントンにあるジョージ・ワシントン大学で政治学を専攻した。そして、2005年から2006年にかけて、セルビア、ベオグラードに本部がある「非暴力行動応用戦略センター(CANVAS)」でトレーニングを受けている。

この組織は、「アメリカ開発援助庁(USAID)」や、政府系NGOの「全米民主主義基金(NED)」などからの資金援助を受け、民主化要求運動の活動家を養成するための組織だ。米国務省やCIAの指令で活動し、米政府が意図する体制転換を裏で支えている。中央アジアの「カラー革命」や、中東の「アラブの春」を実現した活動家も「CANVAS」でトレーニングされた。これはすでに多くの著作やドキュメンタリーでも明らかになっている。

そして本国に帰還したグアイドは、元カラカス市長のレオポルド・ロペズとともに、保守系野党の「ポピュラー・ウィル」を結党した。

このような経歴から見てグアイドは、アメリカがかなり以前からトレーニングを行い、準備していた要員である可能性が高い。

こうした人物が全面に出てクーデターのリーダーになるということは、トランプ政権はベネズエラの本格的な体制転換を画策していると見て間違いないのではないかと思う。

Next: やはりトランプ政権の目的は「ロシア軍基地の阻止」

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー