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日本では報道されない南米ベネズエラの惨状、100万%超えのインフレで国民150万人が脱出へ=高島康司

前チャベス政権の政策

しかし、一般的に流通しているこのような説明だけでは、混乱の実態はなかなかつかみにくい。マドゥロ政権転覆に向けたトランプ政権の工作があったとしても、ベネズエラがそもそも混乱した原因が分からないと、どのようにトランプ政権が介入しているのかが見えない。やはり問題の基本と本質を理解することは重要だ。

ベネズエラという国だが、中南米諸国に典型的な軍事独裁政権の支配が長く続いていた国ではない。1958年という早い時点で議会制民主主義が成立し、中道右派と左派の2大政党が交代して政権を担当する安定した国であった。

また、1920年代にオリノコ油田が発見され、石油産業が国家の中心的な産業になり、農業が主要な産業ではなくなった。そのため、少数の大地主が大多数の小作人を搾取し、支配するという他の中南米諸国にありがちな極端な貧富の差は、比較的に早い時期に解消していた。中間層が多く存在する国でもあった。

こうした状況のため、1990年代末までは順調な経済成長を実現し、中南米ではもっとも安定し、生活水準の高い国であった。

そして1999年、貧困層と軍の支持、そして蔓延する汚職と石油利権の拡大への国民の怒りを背景に政権を奪取したアウトサイダーのチャベス政権が成立した。しかし、当初チャベス政権は社会制度の改革、ならびに規制緩和と経済の自由化を積極的に行い、いまのマドゥロ政権のような社会主義的な改革は行っていなかった。

ところが2007年、100ドルを越えて高騰する原油価格が追い風となった好景気のなか、チャベス政権は石油をはじめとした国内の主要産業の国有化に踏み切った。また、貧困層の生活支援として、農産物には固定価格の販売が強制された。さらに、巨額の予算により貧困層の生活の手厚い支援を行う制度を充実させた。

コントロールの効かないハイパーインフレ

このような過激な政策は原油価格が高止まりしている間はなんとか維持できたものの、原油価格が下落するとコントロール不可能な負の循環に突入した。

まず、石油をはじめとした主要産業の国有化で、内外の投資は完全に停止した。残された民間企業に投資をしても、いつ国有化され投資を失うか分からないからだ。そのため、ベネズエラへの投資は引潮のように引き上げられた

また、貧困層支援として導入された農業などの生活物資の強制的な価格統制も、意図したものとは逆の結果になった。企業にとって、政府が設定した価格は低くすぎ、利益を出すことは困難だ。そのため多くの農家や企業が農業などの生活物資の産業分野から撤退した。

これらの結果はすさまじい物不足だった。あらゆる産業分野で投資が停滞し、企業の撤退が相次いだため、生産能力が極端に落ちたのだ。そして、国民のものに対する需要は変わらないので、需給の極端なギャップからすさまじいインフレが発生し、通貨ボリバルの価値は大幅に下落した。

一方マドゥロ政権は、インフレの更新による生活の悪化をくい止めるために、価格統制をさらに強化した。生活物資の販売価格のさらなる引き下げを強制した。これは逆効果で、さらに多くの農家や企業が生産から撤退した。その結果、物不足はさらに進行し、インフレは更新した。これでハイパーインフレのコントロールは完全に失われた。

Next: アメリカの制裁や圧力では説明がつかない? 原油安で国は大混乱へ…

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