紳士服のAOKIが昨年より販売している「金のスーツ」が、当初の計画比に対して135%の売上と好調に推移していると報じられている。
金のスーツは、2023年にAOKIが創業65周年を迎えたことを記念して、10月より発売を開始。素材にはオーストラリア産の「SUPER150’sウール素材」を使用し、さらに同社がこれまで培ってきた立体縫製技術やアイロンワークといった技術力を結集し、体に吸い付くような着心地を追い求めた結果、1着8万円台と同店としては高価格帯の商品でありながら、売れに売れているという。
この状況に対しAOKI側は、「地方を中心に、10万円を超えるような高価格帯スーツの売り場が減少傾向にある。一方で、高級感のあるスーツを着用したいというニーズも一定数存在している。需要と供給にギャップが生まれているタイミングで登場した『金のスーツ』が支持されたのではないか」と、スーツの販売環境が変化していることも大きいのではと指摘しているようだ。
コロナ禍には「パジャマスーツ」のヒットもあったAOKI
働き方の多様化やクールビズの普及によって進行していた“スーツ離れ”にくわえ、2020年からはコロナ禍突入による在宅勤務の広まりもあって、市場全体が縮小傾向に陥ったスーツ業界。
なんでも、国内スーツ販売はピーク時の1992年が1350万着だったのに対して、2020年は約400万着まで落ち込んだというデータもあるほどなのだ。
さらにAOKI独自の事情ということでいえば、東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー選定を巡る汚職事件で、AOKIホールディングスの青木拡憲前会長をはじめ、同社元代表取締役副会長、専務執行役員らが贈賄の容疑で逮捕に至ったというスキャンダルもあり、そのブランドネームに大いに傷が付く格好となっていた。
そんな苦境のAOKIを救った存在が、ネットカフェ「快活CLUB」やカラオケ店「コート・ダジュール」などの娯楽部門。なかでも「快活CLUB」はネットカフェ業界のなかで今や“独り勝ち”といった成功ぶりで、同社のなかでも近年では紳士服量販店の数が減るいっぽうで、これらの娯楽部門の店舗数が上回る状況に。
さらに本業である紳士服のほうでも、パジャマの快適さとスーツのフォーマルさを兼ね備えたセットアップ「パジャマスーツ」を2020年11月に発売。これがコロナ禍のなかで支持を集め、「年間1万着売れたら成功」とされるスーツ業界にあって、約3年で累計販売着数40万着突破を果たす大ヒットとなった。
8万円台スーツが「高価格帯」とは貧しい日本の象徴か?
そしてAOKIにとって、そんなパジャマスーツに続くヒットとなったのが、今回取沙汰されている金のスーツというわけだが、このところは洋服の青山の「Quality Order SHITATE」やコナカの「DIFFERENCE」など、人気が高まっているオーダースーツに力を入れるところが多いなかで、この金のスーツはいわゆる既製品。
そのため価格帯としては、高品位な素材を使用している分、吊るしのスーツとしては高価格帯といった位置づけになるものの、フルオーダーはもちろんセミオーダーのスーツと比べても同等あるいはより手ごろな価格が実現したということのようだ。
8万円のスーツが高価格帯の時代か…日本は本当に貧しくなったんだね…
AOKIの1着8万円「金のスーツ」が好調 「計画比135%」も売れたワケ(ITmedia ビジネスオンライン) https://t.co/RxPC0muZI3
— 夏沙葡蘭花 (@ama_natsumikan) April 24, 2024
スーツが8万で高価格帯に括られている時点で不景気過ぎるだろ。記事の中で購入層が4〜50代の要職者って悲しくなる。
AOKIの1着8万円「金のスーツ」が好調 「計画比135%」も売れたワケ(ITmedia ビジネスオンライン)#Yahooニュースhttps://t.co/0RxvxdbXxq
— Mittle (@Mittle_2049) April 23, 2024
SNS上では“1着8万円台と高価格帯の商品”という、記事内の文言を切り取る形で「スーツが8万で高価格帯に括られている時点で不景気過ぎるだろ」「8万円のスーツが高価格帯の時代か…」と、昨今の“貧しくなったニッポン”の典型例であるといった捉え方も、一部ではされているよう。
ただ逆に、そういった高いのか安いのかが人によって評価が分かれる8万円台という、ある意味で絶妙な値付けも、成功を収める要因となったとも言えそうである。
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