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黒田日銀の「大誤算」~マイナス金利で円高・株安が起きた真の理由=吉田繁治

米国、日本、ユーロの織り込み現象と日銀の「誤算」

(1)米国の3大指標をチェックする

ここからは、この「織り込み」という現象を意識して、米国、日本、ユーロの通貨・金利・株価の動きを並べて解釈してみます。面白い発見があるかもしれません。

米国

15年12月末 16年2月1日 2月10日
米ドル指数 100 99 96
長期金利 2.23% 1.75%
NYダウ $1万7720 $1万6027

ドル指数は、16年3月の利上げを織り込んだ100(15年12月)を頂点に、16年1月は下がりました。

16年の2月1日には、海外(とりわけ中国の民間による元売り/ドル買い:推計$1000億)からのドル買いで、99に戻りました。しかしその後、16年3月の利上げが消えたことを織り込み、96に下がっています。

その下の行の長期金利を見ると、この織り込みが、一層はっきりします。FRBによる利上げ(12月16日)の後、普通なら、ドル国債の流通価格は下がり、長期金利は上げねばならない。

ところが、FRBの利上げのあと、長期金利は逆に0.48ポイントも下がって、2016年2月10日には、1.75%に下げています。

(※注)利上げ幅が0.25%です。このため、少なくとも、0.48%+0.25%=0.73%も下がったことになります。金利が1%や2%台と低いので、0.73%の意味が分かりにくいのですが、現在の金利1.75%に対しては、42%という大きさになります。0.73%は、金利の大きさでは4割でありとても大きい。

米国FRBの利上げに反した、この米国の長期金利の低下は「16年3月の利上げの予想の消滅」を意味しています。

むしろFRBに対し「利下げを期待する」ように変わったのです。
(※注)金利が下がり、価格が上がった国債を買う行動は、その後の、利下げを期待したものです。

米国の長期金利の低下は、米国債の流通価格の上昇です。内外から米国債が買われていることを示します。大きな買い手は、

  1. 中国の民間(華人資本家)
  2. マイナス金利になっている日本の金融機関
  3. 新興国から投資を引き揚げたヘッジ・ファンド

です。

米国人が米国債を買っているから、米国債が上がって、米国の長期金利が下がっているのではないのです。

メディアでは、最近の国債価格の値上がりを、「リスク資産(株)を売って、安全資産国債である国債を買う」リスク・オフと安易に言っています。これは、記事内でいつも頻発される「不透明」と同じの、いい加減なまとめです。

未来が不透明なのは、今にはじまったことではない。未来は、人間にとっては、良くなるにせよ悪くなるにせよ、その程度は常に見えず、いつも不透明なものです。

通貨や金利の奇妙な動きは、「織り込みという予想行動」を入れれば、合理的に解釈できるものになります。

ここから、金融の投機で利益を上げる原則も、導くことができます。金融投機で利益を上げるコツは、「安いときに買い、高いときに売る」ことしかないからです。

  1. 現在の価格(通貨、金利、株価)が、近い将来の何を予想して織り込んだものか、見極める
  2. その予想が、上方に変化するとき、もっとも早く(安いうちに)買う
  3. 予想が下方に変化するときは、もっとも早く(高いうちに)売る

経済を観察していれば、「予想の変化」の時期が、見えるようになってきます。

(※注)2016年の後半から、もっとも大きく肝心なものになるのは、香港で先駆けて下がり始めた、中国の不動産価格でしょう。

中国本土や台湾の華人投資家が買って、NYやロンドンをはるかに超える世界最高の価格に上げていた香港不動産の価格下落が、波及するかどうかの見極めです。

香港では、現在、住宅(平均的な高層マンション)の1sqフィートの単価は$1416です(ウォールストリートジャーナル:2015年12月)。11倍するとほぼ1平方メートルですから、$1万5000(180万円)です。100平米の広さでは1億8000万円という異常な高さになります。東京の約2倍です。

同じ広さではロンドンが1億3000万円、NYが1億円、パリが1億円、東京が8600万円です。イメージできるでしょうか。この世界1高い香港不動産に、2015年から下がり始める兆候が見えるのです。

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