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賞味期限の2020年が迫る…「トランプ依存症」に侵される市場にはコントラリアンたれ=栫井駿介

先週の株価はやや軟調な展開となりました。この1~2年間における株価の上げ下げはいずれも、皆さんもご存知のように発端はトランプ大統領の発言にあります。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

株価はやや軟調へ、大統領を弾劾に追い込む「疑惑」とは?

前副大統領バイデン氏の息子に関する疑惑が問題の引き金に…

先週の株価はやや軟調な展開となりました。

米国ではトランプ大統領への弾劾(辞めさせること)への機運が高まっています。きっかけは、民主党の次期大統領候補となる可能性のある前副大統領のバイデン氏の息子に関する疑惑です。

バイデン氏の息子がかつて在籍したウクライナの天然ガス企業における汚職疑惑について、バイデン氏がウクライナ当局の捜査を妨害しようとした疑いが指摘されています。

これだけを見ると、悪いのはバイデン氏のように見えますが、問題となっているのはこれを知ったトランプ大統領が政治的圧力を使ってバイデン氏に対する捜査をするようウクライナに働きかけたことです。具体的には、ウクライナへの軍事支援の撤回を示唆しています。

自らの政敵を落とし込むために、政府の権力、まして軍事力を使ったことは公私混同、大統領権限の私的濫用です。野党・民主党はここを問題視しているのです。

この問題が発覚すると、市場はネガティブに反応しました。トランプ大統領が罷免されるようなことがあれば、株価が下がる可能性が高いと踏んでいるのです。

トランプに翻弄され、いつの間にか依存するようになった株式市場

もともと、与党・共和党は市場寄り、対する民主党は反市場寄りとされます。しかしそれ以上に、投資家はいつの間にか株価の維持をトランプ大統領に依存するようになってしまったのです。

この1~2年間における株価の上げ下げは米中貿易戦争の緊張と緩和、ならびにFRBによる利下げをめぐる攻防を軸に動いています。いずれも、発端は大統領発言にあります。そして、結果として大統領は株価の上昇に成功しているのです。

NYダウ 週足(SBI証券提供)

NYダウ 週足(SBI証券提供)

これはとても危険な兆候ではないでしょうか。

そもそも世界経済には暗雲が立ち込めています。10年続いてきた株価上昇にもそろそろ調整が入ってもおかしくないのですが、そうさせまいとしているのがトランプ大統領です。

トランプ大統領が株価をそこまで意識するのは、次回の大統領選挙(2020年)に当選するためです。投資に熱心な米国では、株価と政権支持率は密接にリンクしていますから、株価の上昇は再選を目指す大統領にとって至上命題なのです。

市場もそれをわかっていて、それでも株価が上がるのならと乗っかっている向きがあります。政策の良し悪しは別にして、上がりそうだったらその流れに乗ろうとする。もはや市場は「トランプ依存症」に陥っているのです。

もしトランプ大統領が罷免されるようなことがあれば、モルヒネが切れた重症患者のように急激に痛みを感じるようになるでしょう。

また、再選したとしても、自身が立候補する3回目の選挙はありません。すなわち、政権2期目は株価を上げるモチベーションがなくなることを意味しています。(親族を後継者にしようとしない限り。)

つまり、いずれにしても「トランプ依存症」となった市場の賞味期限は2020年までということになるのです。

奇しくも、2020年は日本でもオリンピックが終わり「特需」が剥げるタイミングでもあります。今のような堅調な相場がいつまでも続くとは考えない方が良いでしょう。

Next: 堅調な相場が続かないというのは、悲観的な考えなのか?

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