Fedの見立ては「個人消費は減速気味、製造業は底打ちの兆し」です。一方、物価見通しは「上げ気味」で、政策金利は据え置きとなり市場はガッカリしています。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2020年1月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
米利下げは当面なし。現在の水準は「適切」との判断に市場静観
Fedの見方は…
米国経済、消費は鈍化、製造業は底打ち。Fedはそんな風に捉えているようです。
FOMC(連邦公開市場委員会)にて、Fedは政策金利FFレートの誘導目標を1.50%-1.75%に据え置きました。現在の水準は「適切」とのことで、当面は様子見です。
経済環境については、全体の経済活動や労働市場は強いとしたものの、個人消費は「ぼちぼち」と、これまでの強さからやや鈍化したとの見方を示しました。
一方、物価見通しについては「上げ気味」です。前回12月のFOMCでは、インフレ率は目標とする2%に「近い(near)」としていました。これが今回は2%に「回帰しつつある(returning)」という表現に変更されています。
利下げに「NO」
物価の門番Fedとして、インフレ率が目標に回帰したとなれば、利下げをする必要はありません。トランプ大統領の批判も何のそのです。
また、レポ市場(米国債等を担保にして資金の貸し借りをする市場)にて金利が一時高騰したため、実施している短期国債(T-Bill)買い入れについては、徐々に減額する見通しをパウエルFRB議長は会見にて示しています。
インフレ見通しが再び低めと見なされない限り、Fedが利下げへと傾くこともありません。
市場はガッカリ
市場にとって、Fedの見方はちょっとガッカリです。
悪いと言われ続けてきた製造業は「底入れの兆し」とパウエル議長は述べたものの、反転とまでは至らず。すでに半導体関連株が上昇した中で、Fedからの言葉は慰め程度です。
しかも、好調だった個人消費に「陰り」の印象を与えた点もガッカリです。お陰で米国債は買われ、市場金利は低下しています。
このバランスが、「インフレ率は目標に回帰しつつある」です。依然として強い経済環境との認識です。
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