アリババ創業者ジャック・マーの知られざる半生と成功のルーツ(1) いじめ、ケンカ、恋の果てに＝牧野武文

世界的な巨大グループ企業に成長した中国EC最大手のアリババ。その創業者ジャック・マーは、「情熱の人」として中国でも人気のある経営者です。彼の生い立ちから現在までの軌跡を丁寧に追うことで、アリババの成長力と強さが見えてきます。

そこで当メルマガでは「アリババ物語」として、日本ではあまり知られていないジャック・マーの人柄と苦労を連載でご紹介します。今回は第1回目として、ジャック・マーの両親はどんな人物だったのかを、幼少期に抱えた大きな劣等感と合わせて語っていきます。『知らなかった！中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文）

※本記事は有料メルマガ『知らなかった！中国ITを深く理解するためのキーワード』2020年2月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

世界的な巨大グループ企業・アリババはどうやって生まれたのか？

ジャック・マーの誕生

1964年、無錫の評弾（ピンタン）団に、崔文彩という美しい20歳の女性が入団してきた。

評弾とは、楽器の弾き語りで音楽・講釈・身振り手振りを使い、物語を語る曲芸のひとつ。無錫は評弾のメッカであり、無錫で名を馳せた評弾団は全国巡業をしても、客が入るようになるという。崔文彩は杭州の工場で働く工員だったが、評弾に夢中になり、仕事を捨てて、評弾団に入団してきた。

しかし、この時、崔文彩は妊娠をしていた。この年の秋には、杭州に戻って出産をすることになる。

この子の父親は、馬来法という人だった。杭州の写真撮影社でカメラマンをしていた。馬来法は背の高い二枚目で、映画俳優のようだった。馬来法も評弾に夢中になり、後にカメラマンをやめて、曲芸の世界に入ることになる。後に、浙江省曲芸家協会の主席も務めた。

生まれた子どもには、馬来法の父親が名前をつけた。馬雲（マー・ユィン）という名前だった。後に、馬雲は、英語名でジャック・マーと名乗るようになる。

容姿に劣等感を抱いていた少年時代

美男・美女の子どもであるのに、ジャック・マーは顔の形が普通とは少し違っていた。このことは、深刻な劣等感を抱かせることになる。

同年代の友だちは、子ども特有の残虐さで、ジャック・マーを「異星人」と呼んだ。

ジャック・マーには兄と妹がいるが、兄は二枚目で、妹は愛らしい容貌をしている。そのため、父の馬来法は子どもたちを友人などに紹介する時、相手がジャック・マーの容貌に気がつくのを感じると、「この子はゴミ箱から拾ってきたんだよ」と冗談を言った。

馬来法にとっては悪意のない冗談にすぎなかったが、幼いジャック・マーの心を深く傷つけることになった。

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった！中国ITを深く理解するためのキーワード』2020年2月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。