米大統領選も大荒れに
大前:何と言っても、株価が下がった影響は甚大です。トランプ氏がこれまで強調してきた成果(株高、アメリカの好景気)が、一度に吹き飛んでしまいました。
民主党は、そこにいろいろな枝葉を付けて、ここぞとばかりに攻撃してくるでしょう。トランプ氏にとっては、苦しい選挙戦になると思います。
今回の新型肺炎の件がなければ、トランプ氏が余裕で再選、というシナリオだったはずですが、大きな番狂わせとなりました。
俣野:民主党候補は、バイデン元副大統領に決まりそうでしょうか。
大前:そのようですね。3月17日に行われたフロリダ州、アリゾナ州、イリノイ州での予備選も、ジョー・バイデン氏が圧勝しました。指名を争っているバーニー・サンダース氏が、一部に出ていた撤退報道を否定しなければならない場面も見られたほどです(編注:原稿執筆時点4月1日。なお4月8日にはバーニー・サンダース氏が民主党候補指名争いからの撤退を表明。これで事実上、同党の候補はジョー・バイデン前副大統領に決まりました)。
以後は、トランプ氏とバイデン氏の一騎打ちに照準が絞られてくると思われます。
けれど、前回Vol.162「アメリカ特集」でもお伝えしたように、バイデン氏はアルツハイマー病ではないかとの、もっぱらの噂です。
参考:感情的に怒鳴り、人前で妻の指をくわえ… 圧勝のバイデンが抱える「不安の種」- クーリエ・ジャポン(2020年3月15日配信)
大前:そうはいっても、バイデン氏以外で、トランプ氏と対等に渡り合える人物が、民主党の中にいないというのが実情です。
バイデン氏は3月15日、副大統領候補に女性を指名すると発表。噂では、ヒラリー・クリントン氏を指名するのではないかと言われています。
俣野:バイデン氏が指名を獲得すれば、オバマ前大統領が全面的にバックアップするのでは、という予測もありますね(東洋経済オンライン、2020年3月5日)。人々にオバマ時代への郷愁を呼び起こさせよう、ということでしょうか。
戦争が始まる可能性も?
大前:民主党としては、それ以外に戦える有効な戦略がないのでしょう。仮に、バイデン氏が大統領に就任後、職務を遂行できないとなれば、病気を理由に引きずり下ろして、「アメリカ史上初の女性大統領の誕生」という民主党のシナリオも透けて見えます。
しかし、このような事態を、アメリカ国民が黙って見過ごすはずはないと思います。ですからアメリカでは、今後、新型コロナ問題以外に、政治的な混乱がしばらく続くと思います。
国内が分断され、かなり荒れるのではないでしょうか。もしかすると、戦争が起きる事態になるかもしれません。
俣野:アメリカで、ですか?
大前:もちろん、アメリカ国外です。世界では、これまでにも国内の不満をそらすためとか、国内をまとめるための手段として、戦争がしばしば行われてきました。1929年の世界恐慌の後にも、戦争が起きましたから、今回のコロナ恐慌の後にも、起きる可能性はあると思います。いずれにせよ、アメリカ国内がかなり混乱するのは、避けられないでしょう。
俣野:大変な事態になりそうですね。
新型コロナウイルスをキッカケに、アメリカが分断の危機に陥る可能性大