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トヨタも5大銀行も悲惨な状況。安倍政権の鈍さに日本株の底打ちは遠のくか?=江守哲

新型コロナウイルスがどのような結末を迎えるのか、全くわかりません。その前提で見ていくことが肝要です。ウイルスの影響は完全に織り込むのはまだ先だという意識でいたほうが安全です。(『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』江守哲)

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2020年4月6日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

日本株は安値圏での膠着状態

日経平均株価は一時1万9,000円台を回復するところまで値を戻す場面もありました。下げた時には日銀によるETF買い入れが入ることへの安心感や、公的年金による買いも引き続き日本株を下支えする要因になったもようです。また、欧米に比べて日本では新型コロナウイルスの感染が抑制されていることも、日本株の相対的な強さにつながっているとの指摘があります。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

さらに、中止が懸念されていた東京五輪が延期となったことも安心感を誘ったもようです。一方、米国株買い-日本株売りのポジションを組んでいた米系ヘッジファンドなどが一気に巻き戻しを決めたとの見方もあります。先物を一気に買い戻したもようであり、こうなると機械的に買ってきます。

しかし、基本的には大きな値幅での乱高下の動きはあまり変わっていません。1日も日経平均株価は前日比851円60銭安となるなど、値幅は相変わらずです。この日発表された日銀の企業短期経済観測調査(短観)では、エコノミストが予想したほど景況感は悪化しませんでしたが、新型コロナウイルスの国内経済への悪影響はこれから大きくなるとみられており、株価の支えにはなりませんでした。

また、この日は日銀は通常のETFを1,202億円買い入れましたが、前回30日の買い入れ額は2,004億円でした。買い入れ額が縮小したことも、その後の失望売りにつながっています。

2日も新型コロナウイルス感染者数の増加を受けた政府による緊急事態宣言に対する警戒感から幅広い銘柄が売られました。政府が緊急事態宣言を発表すれば、「人や物の移動が大幅に制限され、日本中で経済活動がさらに停滞する可能性が高い」との懸念が高まり、株式の値下がりにつながっているようです。

3日には、外食産業株の一角の下落が目立ちました。原油価格の上昇に伴う欧米株高が好感され、日経平均は取引開始直後に前日比240円強上昇する場面がありました。しかし、新型コロナウイルスへの警戒感は根強く、上値は抑えられました。午後になると、週末に伴うポジション調整の売りが増え、マイナス圏に沈む場面もありました。

値下がりが目立ったのが、直営店などの長期臨時休業を発表した串カツ田中、鳥貴族やラウンドワンなど。新型コロナウイルスの感染拡大阻止に向けた適切な判断ではあるものの、大幅な収益悪化につながることで、株式市場では売り要因となりました。

自動車大手は悲惨な状況

自動車大手8社が発表した2月の生産販売実績によると、中国に工場を持つ5社の現地生産が過去最低の水準に落ち込みました。新型コロナウイルスの感染拡大により、春節休み明けの稼働を停止していたことが影響しました。三菱自動車が97.0%と大幅減。中国を主力とする日産自動車は87.9%減の7740台で、トヨタ自動車も77.4%減の1万5,311台と低迷しました。

ホンダは92.4%減の5,700台。マツダは90.6%のマイナスでした。日産とホンダは、ウイルスの震源地とされる湖北省で工場の稼働日がゼロでした。再開できたところでも、部品調達に支障を来すなどフル稼働にはほど遠い状況のようです。販売実績も、販売店の休業や市場の落ち込みなどから7-9割落ち込んだもようです。

サプライチェーンの混乱から、国内でも操業を一時停止した日産は29.3%減少しました。国内生産ではSUBARUとダイハツ工業を除く6社がマイナスとなり、合計で10.8%減の73万3,577台、5カ月連続で前年実績を下回りました。世界的な感染拡大を受け、3月には欧米やアジアなど操業を見合わせる地域は広がりました。3月の数字は相当の厳しい結果が予想されます。

また、トヨタ自動車が、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ロシアの完成車工場の稼働を30日から4月3日まで停止する方針です。同社は既に欧州の他の6工場の生産を一時休止しており、再開は4月20日以降になる見通し。ロシア工場の停止により、欧州の7工場全てで一時的に生産が止まることになります。

トヨタは英国やフランス、チェコなどに工場を保有。19年の欧州での生産実績は約78万台で、世界全体の1割弱を占めます。欧州では新型コロナの感染者が急速に増えており、従業員の安全面などを考慮して停止を決めました。トヨタは日本国内でもグループ会社を含む5工場の操業を一時止める予定で、業績への影響は必至とみられています。

Next: 5大銀行が保有する株式の19年度末の含み益は、前年度末から合計で――

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