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トヨタも5大銀行も悲惨な状況。安倍政権の鈍さに日本株の底打ちは遠のくか?=江守哲

日銀短観の大幅悪化は自明

4月1日に日銀が発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス8と、前回19年12月調査のプラスマイナスゼロから8ポイント悪化しました。悪化は5四半期連続で、7年ぶりにマイナスに転落しました。新型コロナウイルスの感染拡大により、企業心理が急速に冷え込んでいます。非製造業でも宿泊など観光業や飲食業への打撃が深刻な状況です。

政府はコロナ拡大を受けて、緊急経済対策を今月中に策定する方針です。日銀も3月の金融政策決定会合を前倒しし、金融資産の購入拡大といった追加緩和を実施しました。ただし、政府の外出自粛要請や東京五輪・パラリンピック延期の影響が本格化するのはこれからで、景気の先行き懸念が強まる中、一段の対応を求める声が強まるのは確実な情勢です。

大企業製造業では、「自動車」がマイナス17と、東日本大震災直後の11年6月以来の水準まで落ち込みました。需要の減少のほか、中国での生産活動が一時停止したことで部品を調達できなくなったことが響いたようです。「繊維」はマイナス17で、暖冬による冬物衣料の販売不振のため前回から20ポイント低下しました。中小企業製造業もマイナス15と、13年3月以来の低水準となりました。

一方、大企業非製造業の業況判断DIはプラス8。これまで堅調さを保っていたが、前回調査(プラス20)から12ポイント低下した。コロナ拡大に伴う訪日外国人の急減を受け「宿泊・飲食サービス」がマイナス59と過去最低の水準となり、下落幅も最大の70ポイントに達しました。遊園地や劇場を含む「対個人サービス」もマイナス6と、31ポイント下落しました。

20年度の大企業全産業の設備投資計画は前年度比1.8%増。全規模全産業の20年度想定為替レートは1ドル=107円98銭、1ユーロ=120円29銭でした。3月調査の回答期間は2月25日から3月31日までです。

日銀短観は、とてつもない悪化でしたが、ある程度想定の範囲内でした。驚くほどの悪化ではないでしょう。こうなることはすでに分かっていました。したがって、他の投資家と一緒になって慌てても仕方がないでしょう。いまは冷静に市場動向を見極めるときです。安値で売らないことが肝要です。

安倍政権の鈍さに驚く

それにしても、新型コロナウイルスの感染拡大に対する安倍政権の対応のまずさは目に余ります。時間をかけて出てきた政策が「マスク2枚」です。かたや米国は2兆ドルの財政出動です。器が違うといえばそれまでですが、日本の現状は失政のせいできわめて不幸なことになっています。

感染者が拡大するなか、安倍首相は緊急事態宣言の発令に依然として慎重な姿勢を崩していません(編注:原稿執筆時点4月6日。4月7日夕方には改正特別措置法に基づいて「緊急事態宣言」を行いました)。どのようなしがらみがあるのかわかりませんが、説明もできない状況で「慎重に判断」といわれても、国民が納得するはずがありません。

一方で、宣言は私権制限を伴う重い判断となるため、医療関係者や地方自治体からは発令を求める声が出ている中で、安倍首相は難しい対応を迫られています。安倍首相は「全国的かつ急速なまん延という状況には至っていない」と繰り返します。さらに、「緊急事態宣言発令の要件は満たしていない」との認識を重ねて示しています。そのうえで、「必要な状況になればちゅうちょなく行う」ともしています。このフレーズは、黒田日銀総裁と全く同じです。似たもの同士というところでしょうか。

緊急事態宣言は改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく措置で、安倍首相が地域と期間を定めて発令します。対象地域の都道府県知事は外出自粛の要請やイベント中止の指示などが可能となります。感染者数が増え、医療崩壊への懸念が高まっている東京都の小池子知事は3日の記者会見で「宣言を出すと都にとって大きなパワーになる」としています。

一方、日本医師会は1日に、一部地域での病床の不足を踏まえ、「医療危機的状況宣言」を発表しています。医師資格を持つ国会議員でつくる超党派議員連盟でも3日の会合でも、発令を求める声が相次いでいます。また、財界内にも「さらなる外出抑制には緊急事態宣言しかない」との意見があります。いわゆる「プロ」たちがこのように言っているにもかかわらず、「素人」の安倍首相が何を根拠に宣言の先延ばしの判断を正当化できるのか、全く理解できません。

政府内では慎重論が非常に強いようです。宣言が発令された場合、自粛ムードが一層高まり、日本経済へのさらなる影響は避けられません。そうなると、政権が倒れると思いこんでいるようです。いまは経済よりも医療・健康が優先されるべきでしょう。野党からも「宣言を出さない理由が理解できない」との声が立憲民主党の枝野代表からも上がっています。「補償とセット」での宣言との意見が大勢です。きわめて「まっとうな」意見でしょう。

これに対し、安倍首相は3日の参院本会議で「個別の損失を直接補償することは困難だ」との認識を示しています。しかし、「自粛」が続けば、事業者などの政府への不満がさらに強まります。法律に詳しいわけではないのでわかりませんが、政府の強制力のない自粛を素直に守ったことで倒産した場合、国を相手に訴訟できるのでしょうか。

いろいろなリスクを考えて、安倍首相は緊急事態宣言について、感染状況を注視しながら慎重に判断しているのかもしれません。しかし、それではあまりに遅すぎるでしょう。今後感染拡大が地方都市にも飛び火すれば、「全国的なまん延」となりかねず、止められないことになります。

一方、政府・与党は3日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策の柱となる現金給付について、所得の減少を条件に1世帯当たり30万円を支給することを決めました。対象者が市区町村の窓口などに申請する自己申告制とし、申請時に所得が減少したことを示す資料の提出を求めます。支給金は非課税とします。

また、全国の地方自治体に計1兆円を配る臨時交付金の創設も対策に盛り込みます。政府は、7日にも緊急経済対策を決定する方針のようです。対策全体の事業規模に関しては調整が進められる見通しです。

Next: しかし、この「30万円」の根拠が良くわかりません。自民党の岸田政調会長は――

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