米アップルは「タイタン」というプロジェクト名で進めてきた独自の電気自動車(EV)開発を断念したと報じられています。2,000人ほどいると言われる技術者は今後、その多くが劣勢となっている「生成AI」の開発に移動することになるそう。アップルが作るスマホ的なEVに期待する向きも多かったはずですが、いきなり夢と消えることになってしまいました。(『 今市的視点 IMAICHI POV 今市的視点 IMAICHI POV 』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2024年3月8日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
アップルがEV市場に見切り?思ったほど売れず、自動運転もままならない状況…
米アップルが過去10年近く続けてきた数千億円規模の「電気自動車(EV)開発」を正式に中止すると報じられています。
2,000人ほどいると言われる技術者は今後、その多くが劣勢となっている「生成AI」の開発に移動することになるそう。
アップルが作るスマホ的なEVに期待する向きも多かったはずですが、いきなり夢と消えることになってしまいました。
この経営判断の背後にはさまざまな事情があるようですが、直近ではEVが世界的に必要不可欠な自動車のシフトと思われていたものが、必ずしもそうではなくなってきており、その普及は期待するほどではなくなってきているという事実があるようです。
またアップルが開発しようとしたEVは「iPhone」の開発技術で積み上げられたリチウムイオンバッテリーのEVへの転用という側面よりも、自動運転が完璧にできるEVという部分にアップルならではの革新的商品を求めていた様子。
しかし、結果的にはレベル4という自動運転車には驚くほど長時間の実験・研究をおこなったものの、満足のいく成果があげられなかったことも大きな中止材料となっているようです。
自動運転車というのは本来、IoTなどを巧みに利用して社会システムとして機能することで始めてワークするもの。個別のクルマが自動運転のソフトを搭載しても、人が目視で運転するよりもはるかに多い事故を起こすことが改善できなかったのは大きな問題でしょう。
自動運転の完璧な実現こそアップルの次世代商品の大きな特長にしようと考えていた経営陣は、激しく出鼻をくじかれてしまったようです。
テスラを追うのはもっぱら中国メーカー
EV(電気自動車)という市場は、内燃機関を搭載して驚くほどの部品を組み合わせて作る既存の自動車製造ビジネスに比べますと、部品点数も少なく、主要部品を内製化することができれば既存の自動車メーカーの粗利益率をはるかに超える爆発的な利益にありつけるとされています。
実際にテスラは、1台でトヨタの既存自動車の6倍近い利益を獲得していると言われています。
さらに、そもそも1台の単価はスマホなどに比べればはるかに高額ですから、後発の市場参入といえどもしっかりと市場に座を築けるのであれば、十分に魅力的なマーケットのはずでした。
しかし、足元の市場では、既存の自動車製造メーカーよりも新興の中国BEVメーカーがテスラに猛追するようになっています。