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株価65%下落「シスメックス」は買いか?業績悪化の要因、今後の成長性を長期投資のプロが解説=元村浩之

日本を代表する医療機器メーカーであるシスメックス<6869>が、今、市場で大きな注目を集めています。シスメックスは、売上高を中長期にわたって着実に伸ばしてきている優良企業であるにもかかわらず、株価がなんと2023年のピーク時から約65%も下落してしまっているのです。時価総額1兆円を超える大企業でこのような事態が発生するのは異例です。

今回は、「なぜ株価が下がったのか」「足元の状況はどうなっているのか」、そして「これからの成長性から見て今が買時なのか」という点について、シスメックスの事業構造、直近の業績動向、市場環境を徹底的に掘り下げて分析します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)

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プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

シスメックスの事業内容と揺るぎない安定成長

<20年間で着実に拡大した売上高と安定収益源>

シスメックスの売上高の推移を長期的に見ると、直近の20年間で着実に右肩上がりで成長していることがわかります。

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出典:シスメックス

特に注目すべきは、安定的な収益源が全体の78.1%着実に伸びている点です。この図は、シスメックスが「なんて安定成長で魅力的な会社なんだ」ということを示しています。売上高の伸びに伴い、営業利益も順調に伸ばしていることが確認できます。

<血液・尿の自動検査機器と「試薬」による魅力的なビジネスモデル>

シスメックスの主な事業内容は、血液や尿を自動で調べる機器(検査装置)の製造・販売です。私たちは健康診断や精密検査で血液検査や尿検査を受けますが、その際に使われる機器を手掛けています。

この検査機器を動かすためには、試薬という消耗品が必要となります。この試薬は、検査時に使用する薬であり、これを投入することで血液や尿の成分を調べることが可能になります。

シスメックスのビジネスは、検査機器が売れれば、その後の検査が安定的に入ることで試薬も安定的に売れるという、非常に魅力的なビジネスモデルを構築しています。シスメックスは、私たちの健康状態のチェックや病気の早期発見を助けてくれる会社です。

株価急落の背景:直近の業績悪化要因

順調に成長を続けてきたシスメックスですが、直近では業績に陰りが見え、それが株価急落につながっています。

<一時的な要因と直近の「対前年比下回り」>

四半期ごとの売上と営業利益の推移を見ると、過去には2023年度や2024年度に営業利益が対前年比を下回った箇所があります。

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これらは、コロナ禍の影響でコストを抑制していたことによる反動増や、中国のロックダウンによる検査数自体の減少といった一過性の要因が原因でした。年間ベースで見れば、これらを乗り越えて順調に成長を続けています。

しかし、直近の2四半期を見ると、営業利益が対前年を大きく下回っている状況が確認できます。

<株価はピークから約65%下落>

この直近の業績悪化を受けて、株価は大きく変動しました。2023年に株価が上昇傾向にあったところ、四半期ベースで利益が対前年を割るタイミングで一度下落しました。

シスメックス<6869> 週足(SBI証券提供)

シスメックス<6869> 週足(SBI証券提供)

その後、業績回復と共に株価も上昇局面にあったものの、直近2四半期で営業利益が対前年を下回ったことで、株価は下降傾向となり、直近の決算発表でさらに大きく落ち込みました。

結果として、2022年の株価のピーク時から株価は約65%も下落してしまったのです。

<医療機器セクター全体の逆風>

シスメックス固有の要因だけでなく、医療機器メーカー全般が逆風を受けている状況もあります。シスメックス、テルモ、朝日インテック、日本光電といった主要な医療機器メーカーは、2022年初頭からの日経平均の上昇(+60%)に対し、アンダーパフォームしています。

特に海外売上比率が高いこれらの企業は、米国を中心に海外の金利が高止まりしている影響を受け、医療機関が設備投資を抑制してしまうのではないかというネガティブなマインドが株価に反映されやすい傾向にあるようです。

Next: 今が買いどき?なぜシスメックスの株価は下がり続けているのか

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