トヨタ自動車<7203>の株価は、5月8日の決算発表後に下落し、その後も戻りの鈍い展開が続いています。決算翌営業日の終値は2,897円でしたが、2月につけた高値4,000円から下げ基調が止まらず、6月11日には年初来安値2,718.5円まで下落しました。直近は中東情勢の報道などを受けて2,850円前後まで戻していますが、依然として高値から約3割安い水準です。下落の発端は、同社が示した27年3月期の営業利益見通し3兆円(前期比△20.3%)が、市場予想の4兆5,000億円を1兆5,000億円も下回ったことにあります。米関税1兆3,800億円の影響で3期連続減益となる見通しのなか、株価はどこまで下げるのか、回復の道筋はあるのか。アナリスト視点で本当の稼ぐ力と長期下値目処を解説します。(『勝ち株ガイド | Invest Leaders公式メルマガ』峯岸恭一)
プロフィール:峯岸 恭一(みねぎし きょういち)
日本投資機構株式会社 経済メディア『インベストリーダーズ』執筆、証券アナリスト(CMA)、テクニカルアナリスト(CMTA®)。総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。
トヨタ株価が下落した3つの理由|関税・北米赤字・通期下方が直撃
2026年5月8日の決算発表でトヨタ株は後場下げに転じ、終値は前日比△2.7%の2,897円で取引を終えました。下落の背景には、本日確定した米関税の利益押し下げ、北米事業の営業赤字転落、27年3月期の通期見通しが市場予想を大きく下回ったという3つの直接要因が重なっています。
為替の円高進行も収益への重荷となっており、投資家心理を冷やしました。株式市場では、決算発表前まで一定の悲観シナリオが織り込まれていたものの、ガイダンス自体が想定をさらに下回ったため、追加の売り圧力が生じた格好です。ここから3つの要因を順に見ていきます。

トヨタ自動車<7203> 日足(SBI証券提供)
<米関税1兆3,800億円の確定影響|27年3月期は通年15%税率が前提>
トヨタが発表した26年3月期決算で、米国の関税政策による営業利益の減益影響額は1兆3,800億円と確定しました。これは決算短信の特記事項に明記された数字で、当初は4月と5月分で1,800億円との見立てでしたが、年間ベースに換算した結果、負担額が一気に膨らみました。
日本から米国への自動車関税は、2025年4月にトランプ政権が25%を上乗せして27.5%まで引き上げ、その後7月の日米合意を経て9月16日に15%へ引き下げる流れで推移しています。
27年3月期は通年で15%税率が適用される前提です。基本税率2.5%だった2025年3月までと比べると、税率は依然として2.5%時代の6倍水準で固定されたままです。日経電子版の試算では、日本車7社合計で関税負担は約1兆6,000億円圧縮される見込みですが、トヨタ単独でも1兆円を超える影響が残る計算です。
<円高進行で営業利益が約2,000億円規模で目減り>
トヨタの収益構造は為替変動に強く左右される仕組みになっています。26年3月期の連結営業利益の主な増減要因のうち、為替変動の影響は△1,950億円のマイナス寄与となりました。
トヨタは1ドルの円安が対ドルで500億円、対ユーロで100億円の営業利益を押し上げると公表しており、円高方向への振れは収益に直撃します。直近のドル円相場は2025年10月以降に159円台まで円安が進んだ後、日本政府の為替介入姿勢と日銀の利上げ観測を背景に円高方向へ振れました。
27年3月期の前提為替は1ドル=150円、1ユーロ=180円に設定されており、26年3月期通期実績の151円(IFRS換算)とほぼ同水準です。為替が前提より円高へ振れれば下振れ要因、円安へ振れれば上振れ要因と、為替動向が業績修正の鍵を握る構図です。
<27年3月期営業利益3兆円見通し|市場予想4.5兆円を1.5兆円下回る>
5月8日の決算発表で示された27年3月期の連結営業利益見通しは3兆円(前期比△20.3%)で、これが株価下落の最大の引き金となりました。決算発表前の株探の報道によると、市場では同利益を約4兆5,000億円前後と予想する見方が出ていました。
実際のガイダンスはこの予想を1兆5,000億円も下回る数字となり、サプライズの下方ガイダンスとして受け止められた形です。営業収益見通しは51兆円(前期比+0.6%)、税引前利益は4兆2,300億円(同△17.9%)、親会社所有者帰属当期利益は3兆円(同△22.0%)と、利益面では大幅な減益見通しが続きます。
決算短信の経営成績の概況には「人への投資や未来への投資の拡大に加え、米国関税の影響も重なり、足元では損益分岐台数が大きく上昇しています」と明記されており、固定費上昇と関税負担が二重で利益を押し下げる構造が示されました。


