徹底した取り締まりと国内テロリスト指定
こうした状況をさらに加速させているのは、3月1日に情報組織のトップである国家情報長官が提出した報告書である。「国内の暴力的な過激主義は2021年に脅威を高めた」と題された報告書だ。
これは、検事総長と国土安全保障省長官が協議して作成され、「国家テロ対策センター(NCTC)」が起草したものだ。さらに、「連邦捜査局(FBI)」、「国土安全保障省(DHS)」、「中央情報局(CIA)」、および「国防情報局(DIA)」が寄稿している。まさに、アメリカの主要な情報機関の協力で提出された包括的な報告書だ。
この報告書では、「アメリカにおける最近の政治的および社会的出来事に刺激された国内の暴力的過激主義者(DVE)が、2021年にはアメリカに高い脅威をもたらす」とし、これらの脅威の最大のものは、「人種的または民族的に動機付けられた暴力的過激主義者(RMVE)および暴力的過激主義の民兵(MVE)」だとしている。
そしてこのグループには、「アンティファ」 「動物の権擁護団体」「環境活動家」「無政府主義者」などの左派や極左の集団から、「資本主義とあらゆる形態のグローバリゼーションに反対する愛国主義運動」「中絶反対運動」「人種的または民族的憎悪に動機付けられているとみなされる運動」など右派から極右の運動などを包括して「国内テロリスト」と呼び、2021年はその活動が大きな脅威となると指摘している。
これを見ると明らかだが、「国内テロリスト」の範囲はあまりに広い。
これを提出した情報機関にとって「国内テロリスト」とは、現在の支配階級と権力機構に反対するすべての活動を指しているようだ。報告書では、こうした団体は、監視やその他の形態の法的制限の対象となると記されている。
ISと同様に取り締まる
もちろんこの報告書が定義する「国内テロリスト」には、「Qアノン主義者」などの陰謀論者の集団や、トランプに結集した「白人至上主義者」などの極右、さらにトランプラリーに結集して気勢を上げていた熱烈なトランプ支持者なども、すべて入るだろう。
もしこの報告書のように、これらの集団も「国内テロリスト」とされるなら、おちおちトランプラリーに参加もできないかも知れない。すぐに情報機関や警察当局の監視対象になる。
事実、いまバイデン政権では、この報告書にあった内容の法制化の動きがすでに始まっている。
それは「2021年の国内テロ防止法」という法案だ。これは、警察や「FBI」などの法執行機関に、「国内テロリスト」に分類された集団に対応するため、監視や捜査、そしてテロを押さえ込むあらゆる手段を講じる強い権限を与える法案だ。いま下院で審議されている。
この法案には、「国内テロリスト」をどのように扱うのか具体的に記されているわけではない。しかしながら、下院の審議では民主党を中心に「海外で発生したテロに対して存在するのと同じ罰則」を適用すべきだという主張が出ている。
つまり、「IS」や「アルカイダ」などの国外のテロリストと同様に取り締まるべきだというのだ。