菅政権発足後、初となる国政選挙として注目を集めていた25日の衆参3選挙区での補選や再選挙。結果は自民の「全敗」という衝撃の結果に終わった。
吉川貴盛元農林水産大臣が収賄スキャンダルで議員辞職したことで行われた衆院北海道2区補欠選挙は、自民が候補者を擁立できず。さらに参院長野選挙区補選は、立憲民主党・羽田雄一郎氏のコロナ死に伴う「弔い合戦」ということで、元から自民は劣勢が伝えられていた。
いっぽう、参院広島選挙区の再選挙は河井案里氏の当選無効を受けたもので、当初は自民の「牙城」で勝算が高いと目されていた。しかし、一連の不祥事によるマイナスイメージは予想以上に拭い難かったようで、結果は僅差で自民候補が敗れる結果に。党内基盤の弱い首相の求心力は、今回のトリプル選全敗でさらに低まることは必至だ。
「都議選」も自公vs野党共闘に注目で、存在感希薄の都民ファ
25日には上記の国政選挙以外にも名古屋市長選も行われたが、結果は現職の河村たかし氏が当選。自民党や立憲民主党など4党が推薦した候補は敗れて、自民はこの週末で都合、4戦4敗を喫する形となった。
こうなると、自民や菅政権とって決して負けられない戦いとなるのが、次に控える注目の選挙である7月4日投開票の東京都議選だ。前回2017年に行われた都議選では、小池都知事が率いた地域政党・都民ファーストの会が、公明党の協力も得て大勝利を果たし、都議会第1党に躍進する形に。対する自民は、過去最低となる23議席の獲得に止まる歴史的大敗に終わっている。
その雪辱もあってか、今回は早々と公明党との選挙協力を取り付けるなど、自民側も着々と手を打っている状況。いっぽうで共産党と立憲民主党は、1~2人区の一部選挙区において、競合による共倒れ避けるために候補者を調整する動きが。今回の3つの国政選挙と同様に、「野党共闘」で勢力拡大を狙う構えだ。
このように、都議選でも与野党対決が注目を集めるなか、その存在感が微妙に薄くなっているのが、前回の選挙で大勝した都民ファだ。先の選挙時からは、党運営に反発した数名がすでに党から離れており、そのうえ前回の選挙では協力関係だった公明とは、今回は反目する関係に。さらに党のアイコンである小池百合子都知事は、昨年から続くコロナへの対応に対する批判、特に最近では例の「禁酒令」や「灯火統制」などの施策が、都民から大顰蹙を買っており、前回の追い風とは全く逆の状況となっているのだ。
窮地の小池百合子、起死回生の切り札は「五輪中止」か
このままでは、都民ファとの共倒れも考えられる危機に瀕している小池百合子氏。そんな窮地の彼女が、起死回生の一手としてぶち上げるのではと噂されているのが、まさかまさかの「五輪中止」宣言だ。
古い知り合いが面白い見立てを語ってくれた。
1.いくつかの国や競技団体が五輪への不参加を言い出す
2.小池百合子都知事が突然五輪の中止を宣言
3.ついでにIOCとの契約の詳細(どうせ守銭奴契約)を暴露
4.右も左も小池百合子バンザイ状態
5.責任を取って都知事を辞任とか言い出す
(続く)— 小田嶋隆 (@tako_ashi) April 13, 2021
都議選まで約2か月。百合子の乱が起こる悪寒がしまくる… 都民を守ると、五輪中止を宣言、それを公約に都議選を圧勝。責任を取ると都知事を辞任。総選挙で奪政権。この事態に陥っている責任の多くは彼女にある。それを棚に上げ政権批判。メディアもそれを面白おかしく取り上げる。国民もそれを支持…
— 国光宏尚 gumi (Hiro Kunimitsu) (@hkunimitsu) April 24, 2021
ネット上で取沙汰されている諸説を総合すると、小池氏が都議選を前に「都民の安全を最優先して、苦渋の判断ながら五輪中止をIOCに要請したい」と、政府側に先んじて大々的に宣言するというもの。
それで中止が決まれば、小池氏は「決断力ある政治家」として映ることになり、その勢いで都議選を乗り切れる可能性が出てくる。その反面で、もし政府が中止決定に躊躇するようであれば、都民ファは都議選を「五輪中止か強行か」という対立軸に持ち込め、開催反対派の支持を受けて選挙戦を優位に進めることができる。
しかも、五輪中止による菅おろしの動きが影響して、万が一衆院解散が早まることになれば、公明党が諸々の理由でとても嫌がる「衆院&都議会のダブル選挙」になる可能性も。小池氏や都民ファから袂を分かった公明党に対しての、最大の嫌がらせにもなるのだ。
いっぽうの小池氏自身は、五輪中止の責任など適当な理由で都知事を辞めて、新党結成で衆院選へと向かい、念願の女性宰相への道に……などといった推測も飛び出している今回の話。過去には「百合子の乱」で政界を大いに騒がせただけに、こんな話でもありえるかもと思えてしまうところだが、そんな彼女を後押しするのは、やはり自民の重鎮・二階俊博氏らしい。
先日の緊急事態宣言発出の際にも小池氏は、菅首相や関係大臣を差し置いて、まずは二階幹事長にその意向を伝えに行くなど、二階氏と小池氏のベッタリぶりはよく知られた話。そんな二階氏は先日、五輪開催に関して「誰が見ても無理だと判断する状況になれば、やめるのが当然」とコメントし、大いに物議を醸したが、これも実は小池氏による「五輪中止宣言」への地ならしとも考えられなくもない。
小池氏がこのように起死回生を狙うなか、菅首相のほうは23日の記者会見で、衆院解散・総選挙に関して、9月30日の総裁任期満了前に踏み切る考えを示している。菅首相としては五輪を成功に導いて、その余勢で衆院選になだれ込みたいという思惑のようだが、果たして小池氏と菅総理、どちらの筋書き通りにいくのか、注目が集まるところだ。
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