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コロナ下の新入社員に5つの特徴。ハラスメントリスクを避けて一流に育てる方法は?=午堂登紀雄

<特徴その3:努力しても報われない?>

「がんばっても仕方ない」と斜に構えたり、能力はあるのになぜか意欲が感じられない社員もいるでしょう。

昔と違い、学校は競争を回避する傾向がありますし、部活動をする人も減っていますから、昨今の若者は、努力して乗り越えた、がんばって報われたという成功体験が圧倒的に不足しています。
物心ついたときから不景気しか見ておらず、さらに周囲の大人たちが苦労しても報われない姿を見てきていますから、それが常識として刷り込まれているのです。

一方で、ネットでは結果だけが大きく喧伝されますが、プロセスが見えないから、その背景には泥臭い取り組みや地道な努力があるということがわからない。つまり、努力が報われた事例をほとんど知らない。

それに、彼らの言う「報われる」というのは、成功か失敗かという、100かゼロのような両極端に捉えているフシがあります。

努力したことが受験ぐらいしかないので、マルかバツか、合格か不合格か、という二元論でしか考えられないことが、そのような価値観を醸成していると考えられます。

しかし現実社会では、努力をして100%は報われないとしても、たとえば50%や70%は報われることはあります。

彼らの共通の話題で言えば、最初から二流大学を目指せば、三流大学にしか受からないこともあるが、たとえば東大を目指して勉強すれば、東大には受からなくても一橋大学や東工大には受かるかもしれない、といったところでしょうか。

1歩でも近づくということが報われるということであり、成長である。

しかし努力しても報われないからと最初からあきらめて何もしなければ、その1歩すら近づくことはない。それは人間としての性能がまったく変化しないということである。

しかし、前よりも少しうまくできる、前よりも少し速くできるということは、日々の努力の結果として成長したわけで、それは自分がレベルアップしたということ。

それが仕事の充実感であり、その繰り返しが満足度の高い職業人生になるのだと、説教くさくならないよう諭してあげる必要があります。

<特徴その4:すぐにブラックだ、パワハラだと騒ぐ?>

最近の若手社員の傾向として、ちょっと残業が続いただけで「ブラック企業だ」と騒いぐことがあります。軽い叱責でも「パワハラだ」と人事部へ駆け込むことがあります。

ブラック企業に対する報道、そしてバッシングが後を絶ちませんし、自分に不愉快なことは何でも「〇〇ハラスメント」と他人のせいにする社会風潮から、ちょっとしんどい扱いを受ければ、「ブラック企業だ、〇〇ハラだと言ってもいいいんだ」と思って自分を守ろうとします。

しかしこれもやむを得ないのです。

学校の先生はみな優しく、手取り足取り教えてくれたからです。でもそれは当然で、学校や教師にとって、学生は客だからです。

学生時代はお客様扱いで、守られた世界しか知らずに社会に出てきて、いきなり8時間とか10時間とか仕事を強いられるわけですから、心身ともに耐える力がないのです。

さらに、学校で自己責任を迫られる場面は少ないですから、義務を果たさず権利を主張することに抵抗もない。

アルバイトの経験すらなければ、仕事をするという責任、対価として給料をもらうという責任を理解することもありません。

叱られたときに「自分だってがんばっていますよ!」などと逆ギレするのもこういう人で、仕事の評価は自分でするものではなく周囲にされるものだということがわからない。

部活などもやっていなければ、努力して能力を高めるという経験が少ない。「上達には努力が必要」ということを実感していない(運動部出身の社員のほうがガッツがあるのは、そういう経験も役立っているのかもしれません)。

自分に負荷をかけなければ、精神的にもスキル的にも、仕事の実力はつかないということが理解できないので、努力を面倒くさがる傾向があります。

<特徴その5:自分はこんなことをするために入社したんじゃない?>

また、昨今の若者は子どもの頃から個性や自分らしさを求められ、大学に入ってもキャリアデザインとか好きなことを仕事に、などと聞かされて就職活動をしてきたため、自分のキャリアに貢献しそうな仕事や、やりたい仕事以外やりたがらない傾向があります。

彼らが言う「面白い仕事」というのは、どこか遊びやクラブ活動などで感じる面白さを期待しているようなところがあります。

しかし現実はそうではないから「こんなはずじゃなかった」「こんなことをするためにこの会社に入ったのではない」と落胆し辞めていく人は少なくありません

社会に出ると、上司は先生ではないし、会社は学校ではない。

そういったことを理解せず、会社に入れば上司や先輩がいろいろ教えてくれて、会社が自己実現させてくれるものだ、などという過剰な夢を持って就職してきているため、現実にぶつかって戸惑います。

中には、泥臭い地道な仕事をバカにするあまり、社外の勉強会や資格取得に逃げる人もいます。やる気はあるけれども、それが目の前の仕事に向かわないで青い鳥を探してしまう。

半面、上司世代は、そこをぐっと耐えて働いているうちに、いろいろなことができるようになり、いろいろ任せてもらえるようになり、仕事が面白くなってきたことを経験として体感している。
また、さまざまな人間関係にもまれ、自分が仕事の指示をするようになれば、会社の矛盾や理不尽を理解し受け止められるようになり、ごちゃごちゃいわずにがんばることの大切さも実感している。

しかし今の世代に「いずれわかる。いまは黙って仕事しろ」などと言っても、言われた方はむくれるだけ。そこで、それをうまく言語化して説明しなければなりません。

たとえば仕事でいう面白さとは、しんどいことを乗り越えて成し遂げる達成感、成長していく充足感であり、数日や数ヶ月程度でわかるようなものではない。だから性急に面白さを求めていては、ジョブホッパーまっしぐらの危険性をはらんでいる。

自分がやりたいことだけという偏った仕事だけをしていては、視野が狭くなって仕事の総合的な実力がつかず、将来、スキルニーズや環境変化によっては使い物にならなくなるリスクがある。
会社の内外で発生する多くの仕事(雑務を含む)を経験することが、自社のバリューチェーンやワークフローを含めた業務全体を把握・理解することにも役立つ。

それに今の自分が想像できる範囲以外の能力は、やってみないと開花しない……。

会社の方が意外に自分の適性を見抜いていて、やってみたらハマって才能が開くということもある。そんなことを、押しつけがましくなく、説教くさくもないよう、仕事の実力をつけるとはどういうことなのかを教えてあげる必要があります。

Next: 「育つ」とは何か? 上司や先輩が新人にできることは限られている

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