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高額納税者にワクチン優先接種?西尾市副市長を忖度に駆り立てた「高須院長の悪夢」と選挙間近の自民系市長を庇う歪んだ献身

新型コロナワクチンの接種を巡って、愛知県西尾市が同市内に住むスギ薬局創業者の杉浦広一会長とその妻の予約枠を優先的に確保するように便宜を図っていたことが判明。「上級国民への優遇」だと、多くの批判の声があがる事態となっている。

疑惑の発覚を受けて西尾市は、11日に中村健市長と近藤芳英副市長、簗瀬貴央健康福祉部長の3氏が出席しての臨時記者会見を行った。それによると、4月初旬ごろからスギHDの社員から市の健康課へ「夫妻がいち早くワクチンを打てないか」という相談が、複数回にわたってあった模様。対応に窮した健康福祉部長から相談を受けた近藤副市長が「何とかならないのか」と、杉浦夫妻のワクチン予約枠の仮押さえを市職員に指示したという。

これらの便宜により、杉浦夫妻は同市の集団接種開始日である5月10日に接種する予定だったという。ところが、その当日に地元紙である中日新聞の記者から市に対して、杉浦夫妻に便宜を図ったのではとの指摘があったことで、市側が急きょ夫妻の予約を取り消したという。

秘書の「暴走」では辻褄が合わない多くの矛盾点

いっぽう、今回の件に関するスギHD側の対応だが、当初は取材に対して「市に問い合わせは何度かしたが、便宜を図ってもらうよう依頼したことは一切ない」とコメント。しかし、その後すぐさま態度を一転し、優先接種の依頼は「不快な行為であった」として、お詫びを表明している。

そのお詫びによると、手術経験がある夫人のことを思い、秘書が「使命感」で、愛知県西尾市に優先予約の問い合わせをしたと、その経緯を説明。さらに杉浦広一会長に関しては、過去にアナフィラキシーショックを経験したため、ワクチン接種は希望していないと強調している。

ただ市の会見では、スギHD側から「会長が接種を楽しみに待っています。何とかならないでしょうか」といった依頼があったと明かしているのにくわえ、接種当日も夫妻はクルマで会場に向かっていたとされるなど、西尾市とスギHDの説明を突き合わせると、単なる秘書の使命感から来る「暴走」では辻褄の合わない点が多々存在する。それだけに、今後のさらなる真相解明が期待されるところだ。

高額納税者を巡る西尾市の苦い思い出とは

スギ薬局といえば、今や創業の地である東海地方のみならず、日本全国に1,300軒以上の店舗数を誇る一大ドラッグストアチェーン。その創業者夫妻となれば、居住する西尾市へは毎年多額の税金を納めているのは間違いなさそうだ。さらに、市内にあるスギ薬局の1号店跡地には、杉浦夫妻が私財で建設した健康増進施設が存在し、市はそれを土地ごと無償で借りているといい、西尾市にとって杉浦夫妻は頭の上がらない存在のようだ。

それでなくても西尾市は、過去に同じく市内に住民票がある高須クリニックの高須院長のご機嫌を害し、市外に転出されるという苦渋を舐めた経験がある。

旧一色町(現在の西尾市)生まれの高須院長。全国に美容クリニックを有するようになった後も、住民票は生まれ育った西尾市に置いていたそうだが、2018年に地元の教育委員会が、出会い系バー通いで一躍有名になった元文部科学官僚の前川喜平氏を招いての講演会を行うと知って大激怒。住民票を市外に転出したところ、西尾市役所の職員から「理由と事情を聞きたい」と接触してきたそうである。

高額納税者の市外転出という危機に瀕して、異例中の異例である「転出理由の問い合わせ」までしていたという、なんとも必死過ぎる行動。ちなみに副市長は、新卒から市職員ひとすじというキャリアのようで、この高須院長の一件もよく知るはず。となると、そんな苦い経験が、今回の杉浦夫妻に対する優遇や忖度へと向かわせた可能性も、大いに考えられるだろう。

市長の関与をひたすら否定する副市長らの思惑

このように、高額納税者に振り回されるのは今に始まったことではない西尾市だが、今回に関しては新聞記者に疑惑を指摘されるやいなや、その姿勢を一転。今度は、市長をひたすらかばう行動や言動に終始しているのが目に付く。

先述の通り、新聞記者からの指摘は杉浦夫妻の接種予定日にあった模様。すでに夫妻はクルマで接種会場へと向かっていたようだが、副市長はなんとか先方に連絡を付けて、ギリギリで夫妻への接種を回避している。これがもしも接種後だと、「西尾市は高額納税者を優先的に接種させた」ということが既成事実化してしまい、後々の状況がさらに悪化していた可能性もあるだけに、ある意味では超ファインプレイだったとも言えそうだ。

またその後の会見では、スギHD秘書からの執拗な圧力があり仕方なかったと言い訳するいっぽうで、担当部長は「担当課である健康課は依頼を断っている。あくまで責任は近藤副市長と私にある」 とコメント。さらに近藤副市長も「中村市長には相談していない」と発言するなど、2人とも市長の関与をキッパリと否定している。

なぜこの2人は、そこまで頑なに市長へ責任が及ぶことを避けようとするのか。それはどうやら、来月13日告示・20日投票のスケジュールで西尾市の市長選が行われることも、大いに関係しているようだ。

現在42歳の中村健市長は、西尾市職員から同市議会議員を経て、2017年の市長選で初当選を果たした、現在1期目。市長選には無所属で出馬しているが、過去に自民党の政治塾を修了しているなど自民系のようで、先の選挙では同時の民進党国会議員や大村秀章愛知県知事といった、反自民の野党系が推す現職候補との一騎打ちを制している。

中村氏自身は今後の去就をまだ明言していないようだが、年齢的にも2期目へのチャレンジはほぼ間違いなさそうな情勢。副市長や担当部長は、今回の騒動の責任を取って、さすがに何らかの処分が下されそうだが、それでも中村氏が市長続投となれば、丸裸で市役所から放り出されるといった、最悪の事態は避けられる可能性も。それゆえに、市長に対する選挙民の心象を悪くしないよう、自ら率先して泥を被ろうとしているというのだ。

創業者秘書にしろ副市長にしろ、仕えるご主人様に対してのひたむきな献身ぶりは、ある意味で感心するところではあるが、残念ながらその方向性はいずれも斜め上。殊にそれが、今の国民にとっての関心事のひとつであるコロナワクチン接種を巡るものであれば、批判が集中するのも当然といったところだろう。

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