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揺らぐ資本主義。「パナマ文書」で流出した大物政治家の実名リスト=高野孟

一服の解毒剤としてのムヒカ

この資本主義が放つ腐臭で卒倒しないようにするには、解毒剤が必要だろう。この騒動の最中に、たまたま来日したのが「世界で最も貧しい大統領」と言われたホセ・ムヒカ=前ウルグアイ大統領で、彼は2012年にブラジルで開催された「国連持続可能な開発会議」で人類がグローバル資本主義を超えて生きるべき道を説いて有名になった。その演説は日本でも書籍や絵本として出版され、とくに絵本は16万部も売れるロングセラーとなった。その絵本の出版社の招きで初来日したもので、各地で講演したりインタビューを受けたりした後、広島を訪れる予定である。

その有名な演説を今更紹介するのも気が引けるが、要旨はこうだ(英語版からの本誌抄訳)。

質問をさせてください。ドイツ人が1世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てば、この惑星はどうなるのでしょうか。息をするための酸素がどれくらい残るのでしょうか。別の言い方をすると、西洋の豊かな社会と同じ傲慢な消費を世界の70億~80億人の人ができるほどの資源がこの地球にあるのでしょうか。

市場経済の子供、資本主義の子供である私たちが、この無限の消費と発展を求める社会を作って来たのです。私たちがグローバリゼーションをコントロールしているでしょうか。それともグローバリゼーションが私たちをコントロールしているのでしょうか。

このような残酷な競争で成り立つ消費社会で「みんなの世界を良くしていこう」というような共存共栄のための議論はできるのでしょうか。我々の前に立つ巨大な危機の原因は環境危機ではありません、政治的な危機の問題なのです。

私たちは発展するために生まれてきたわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。にもかかわらず多くの人々が高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しています。消費が社会を駆動する世界では、私たちは消費をひたすら早く多くしなくてはなりません。消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば不況のお化けが現れるのです。

このハイパー消費を続けるには商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。10万時間保つ電球を作れるのに、1,000時間しか保たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです。人々がもっと働いて、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けなければならないのです。悪循環の中にいるのにお気づきでしょうか。これはまぎれもなく政治の問題であり、私たち首脳は別の解決の道に世界を導かなければなりません。

昔の賢者たちは言っています。「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」と。これがこの議論の文化的なキーポイントです。根本的な問題は私たち作り出した社会モデルであり生活スタイルなのです。

私の国には300万人ほどの国民しかいません。しかし、世界でもっとも美味しい1,300万頭の牛がいて、羊も1,000万頭ほどいます。私の国は食べ物の輸出国です。私の同志である労働者たちは、8時間労働を獲得するために戦い、そして今では6時間労働を獲得した人もいます。しかしその人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。なぜかと言えば、バイクや車などのローンの支払いに追われているからです。毎月、2倍も働いてローンを払っているうちに、いつしか私のような老人になっている。幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎていくの
です。

これが人類の運命なのでしょうか。私の言っていることはとても単純で、発展は幸福を阻害するものであってはならず、人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達に恵まれること、そして必要最低限のものを持つこと。こうしたものをもたらすような発展でなければなりません。幸福が私たちのもっとも大切なものだからです……。

パナマ文書に名指された首脳たちは、それこそバージン諸島に集まってムヒカの本の読書会でも開いたらどうか。チューターは、そう、バーニー・サンダースでしょう。

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高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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