限界を迎えている日銀の国債買い
日銀の国債買いといえば、日銀自身のバランスシートも、お腹一杯って感じです。資産に計上される国債保有残高は500兆円を超え、反対側の負債にある当座預金残高も500兆円超となっています。
ついでに、日銀のバランスシートを使った「金儲け」も限界がみえます。
低い金利でおカネを借りて、その金利よりも高い利回りで資産運用をすれば「金儲け」は可能です。日銀のバランスシートで言えば、当座預金の利回り(とゼロ金利の現金)よりも高い利回りで国債等を運用すれば利益が発生します。
ここで気になるのが当座預金という負債の利回りです。「マイナス金利」政策を日銀は採っていますが、当座預金残高に適用されるマイナス金利はごく一部です。
ざっと500兆円ある日銀当座預金残高のうち、約200兆円は+0.1%の利息が付いています。これは市中銀行に対する補助金みたいなものです。
また、今年7月時点で270兆円にゼロ金利が適用されています。てことで、マイナス金利(-0.1%)が適用されているのは残りの30兆円弱です。
これらを平均すると、+0.035%という値が出て来ます。日銀当座預金の「調達コスト」とも言えます。
一方、国債利回りをみると、10年債利回りは+0.04%。日銀の「調達コスト」とほぼ一緒です。
仮に「サナエノミクス」が発動されたとして、日銀は10年債よりも利回りが高い、20年債や30年債など超長期債を買わなければ、「金儲け」ならぬ「損確定」となってしまいます。
ついでに言えば、日銀が再び国債買入れを強化すれば国債利回りは低下します。日銀が日銀の「損確定」度を強化するという、おかしな話がまかり通ってしまいます。
下馬評では高市さんが新総裁・新首相になる公算は低そうです。しかし「サナエノミクス」登場なんてなれば、日銀がせっかく買入れを減少させてきたのに、いたずらに「損確定」リスクが露呈しかねません。
物凄く無責任ですが、どの国・政府共に「なぁなぁ」な雰囲気の中で財政政策を語ってくれた方が、市場にとっては好都合にみえます。
増税話や財政の限界は、そのまま景気停滞や株安を連想させます。市場金利や為替レートにも波乱要素が増えて来ます。
ここもとの米株安は、久しぶりに登場した金融・財政面での負の側面を意識し始めたことも示しています。気掛かりな週の始まりです。
今回のまとめ
・米英では与党から増税提案
・ワクチン接種の進展と共に財源確保へと視点が移りつつあります
・日本で財政拡大を続けようにも、日銀の国債買いは日銀自身の「損確定」を連想させます
『徒然なる古今東西』(2021年9月13日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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