民主党内にも債務規模縮小に賛否の声
共和党はバイデン政権の3兆5,000億ドル規模の医療、教育、気候変動対策の縮小を求めていますが、民主党内にも規模縮小の声があります。上院民主党の穏健派、ジョー・マンチン議員も、3.5兆ドルから1.5兆ドル規模への縮小を求めています。
その一方で、下院民主党の左派が規模縮小を拒んでいます。
もともと左派のサンダース議員らは6兆ドル規模の対策を求めていたのに、バイデン政権のために3兆5,000億ドルに縮小することを飲みました。民主党左派としてはこれ以上の減額は飲めないとして、下院では1兆ドルのインフラ投資案より先に3.5兆ドルの医療、教育案を通すべき、と主張しています。
つまり、バイデンの大規模財政プランは共和党と民主党左派の相反する声の板挟みにあって身動きが取れなくなっています。
中間選挙を狙った共和党戦略
共和党としても、自分たちの反対によって米国債がデフォルトし、米国の信任を失墜させたととられると、共和党が犯人にされ、次の中間選挙に不利になります。
そこで共和党は中間選挙を考え、「共和党に頼らず、上院民主党だけで決められる財政調整措置(リコンシリエーション)を使えばよい」、と突き放しました。
しかし、これを使う場合、様々な手続きと、暗黙のルール(財政年度内に1回しか使えないというもの)もあります。バイデン政権はすでにこの財政調整措置を1回使っています。10月から新しい財政年度に入ったとはいえ、これを使うと、次に何かあった時に財政危機に追いやられるリスクがあります。
しかも、トランプ政権の共和党は一枚岩になっていたのに対して、現在の民主党は左派、中道で分断しています。この民主党の分断が共和党政権には「吉」と出たのですが、バイデン政権では「凶」となりました。
一枚岩の共和党から「協力者」を得ることが困難な一方、身内の民主党から「反乱者」が出るリスクがあり、民主党が多数派を維持できないリスクがあります。
その分、トランプ政権時よりも財政危機への対処では困難な状況にあります。