Netflix発の韓国ドラマ「イカゲーム」が世界の注目を浴びている。それはそれで結構なことだが、今回は少し様子が異なる。韓国の恥部を曝け出して一攫千金へと走る「悲哀」が感じられる。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)
※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2021年10月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
世界で大人気「イカゲーム」はどんなドラマ?
Netflix発の韓国ドラマ「イカゲーム」は、456億ウォン(約42億3,700万円)の賞金がかかった謎のサバイバルゲームに参加した人々が、最後の勝者になるために命をかけて戦う物語である。
登場人物の設定はこうだ。
1. ろくな仕事もなく、たまに手にするお金は競馬ですってしまう人物
2. ソウル大学経営学科を卒業した秀才で汝矣島(ヨイド)の投資会社に勤め、成功したと思ったのに投資に失敗して莫大な借金を抱えた人物
3. 脱北ブローカーにお金を渡して詐欺にあった人物
4. 織のボスのお金をギャンブルで使ってしまった人物
こういった「脛に傷を持つ人間」が、金を目当てにサバイバルをかけて戦うもの。劇中では「こんなことをしていたら俺たち駄目になる」と漏らす人間らしい一面を覗かせている。
海外メディアでは、次のような評価だ。
米『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「不平等とチャンスの喪失という韓国の根深い感情を扱って世界の観客を集めた『最新の韓国文化輸出品』にすぎない」。
仏『ル・モンド』紙は、「貧困層と富裕層を対照的に描いた内容で2019年アカデミー作品賞を受けた映画『パラサイト 半地下の家族』などと軌を一にする」。
前記の二紙による「イカゲーム」に対する見方は共通している。韓国社会の貧困層と富裕層の対照的な存在の指摘である。
だが、こういう評価だけで十分だろうか。格差問題といえば、経済的には客観的データとして「ジニ係数」(所得再分配後:2018年)を持ち出さなければならない。日本の0.33に比べて、韓国は0.35と若干高い(不平等)状態だ。だが、米国の0.39に比べれば低いのだ。
この「ジニ係数」だけを持ち出せば、米国こそ「イカゲーム」が起こって当然である。逆に、「アメリカンドリーム」を生んでいる。
「イカゲーム」の裏には、韓国特有の国民性が存在している。
背景に「就職したくてもできない」厳しい現実
「イカゲーム」の社会的な背景には、就職したくてもできない厳しい現実がある。日本では、一人で何社もの「内定」を取ったという豪の者がいるほど。売り手市場である。韓国では、逆である。就職したいが競争が激しくて「困難」であるから、就職活動すら止めるという人たちが増えている。
韓国経済研究院は、4年制大学の3~4年生や卒業生など2,713人を対象にアンケート調査を行った。その結果が10月12日に発表された。その内容は次のようなものだ。『中央日報』(10月13日付)から引用した。
「積極的に求職活動をしている」 9.6%
「儀礼的にしている」 23.2%
「休んでいる」 8.4%
「ほとんどしていない」 33.7%
上記のデータでは、求職活動を積極的に行っているのは、9.6%に過ぎない。他は、ほぼ諦めている。大学を卒業して、「いよいよこれから人生がスタートする」というはずの年齢で、早くも諦めた状況に追込まれている。