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天才投資家キャシー・ウッドも消えるのか?超一流の頭脳でさえ「レバレッジ」と「予想外」で無残に散る世界=鈴木傾城

値付けのボックス(上限と下限)を分布的に読んだが……

LTCMは、最終的には10兆円もの資金を動かす超巨大ヘッジファンドになったのだが、このファンドがたった5年で全世界の有力企業や富裕層の資金を飲み込んだまま壮絶に散っていき、危うく資本主義を破壊させてしまいそうになるとは、当時は誰も想像すらしていなかった。

ノーベル経済学賞を受賞したような超一流の頭脳を集めたヘッジファンドである。それが5年で経営危機に陥った。

直接的な原因となったのは、1997年のアジア通貨危機と、翌年のロシアの債務不履行だった。

LTCMの投資手法は、マイロン・ショールズとロバート・マートンの生み出した「ブラック=ショールズ方程式」に依存していた。この方程式は、難解なファイナンス理論のひとつだったが、根本的には市場の「効率性」を土台にした数式だった。

市場の動きは「ランダムウォークである」とよく言われる。この「ランダムウォーク」というのは「上にも下にもフラフラして読めないもの」という意味が込められているものだ。

しかし、マイロン・ショールズとロバート・マートンは、このランダムウォークにも一定の「枠」があり、その枠内では合理的な価格付けが為されているという仮説を立てていた。

仮に株価の上限と下限に一定の限度があるとすると、その限度が見極められれば中間で株価が変動していても株価は読めるということになる。その上限と下限を過去の膨大なデータで判断し、一定の傾向を分布的に見い出す。

市場の値付けを読むというよりも、値付けのボックス(上限と下限)を分布的に読む。ボックスさえ読めればボラティリティ(価格変動)は一定であるということになる。

つまり、マイロン・ショールズとロバート・マートンは「株価はランダムウォークで読めないが、ボラティリティ(株価の変動域)さえ読めれば、仮に株価が大きく上か下に外れても、いずれはその中の均衡価格に収斂する」と考えていた。

もっと分かりやすく言うと、「株価はボックスの中でウロウロしていて結局は平均の範囲に収まる」と言うことだ。こうした動きを見せるのだから「市場は効率的だ」というのが2人の著名ノーベル経済学賞受賞者の考えだった。

LTCMは、この金融工学に基づいて組み立てられたヘッジファンドだった。

Next: 株価が均衡価格に収斂する」というのは勘違いだった?

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